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Presidential candidate Lee Jae-myung of the ruling Democratic Party of Korea speaks in front of supporters for his election campaign in Jeonju-si, North Jeolla Province, Korea on on February 19, 2022

文在寅元大統領が書面調査を拒否。「非常に無礼」はどちらか

韓国の文在寅元大統領が、西海公務員射殺事件についての監査院の書面調査を要求されたことで、韓国の政局は現在急激な冷え込みを見せています。その衝突の原因について韓国在住歴30年を超える日本人著者が発行するメルマガ『 キムチパワー 』が紹介しています。 

文在寅氏、西海公務員射殺事件の調査を拒否

尹錫悦政府の初の国政監査を翌日に控えた3日、与野党が西海(ソヘ・黄海)公務員射殺事件に関連し、監査院の文在寅前大統領の書面調査通知事実をめぐって対立し、政局が急激に冷え込んだ。

ユン政府発足前後に数回の新旧権力衝突があったが、今回はムン元大統領を直接狙っただけに全面戦争が繰り広げられるものと予想される。与党は「家ウサギ結集(=党内がバラバラの状態になっている現状を一気に団結可能)」の機会と判断し、ムン元大統領に十字砲火を浴びせた反面、野党は局面転換用政治報復と規定し、決死抗戦意志を明らかにした。政局の硬直はもとより、国政監査でもブラックホールのようにすべてのイシューを吸い込むものと見られる。

文在寅政府大統領府国政状況室長を務めた尹建永(ユン・ゴンヨン)民主党議員は同日、大統領府出身の国会議員記者会見で、「9月30日、監査院の書面調査関連報告をした。文在寅氏は『非常に無礼な行為だ』とおっしゃった」と明らかにした。尹議員によると、先月28日、監査院からピョンサンマウル(文在寅が現在生活している村)の秘書室に電話して書面調査を要請したが、(文在寅の)秘書室では受領拒否の意思を明らかにした。再び監査院は電子メールを発送したが、秘書室はこれをそのまま返送したということだ。

 

文在寅が書面調査を要求されたことに対して「無礼だ」と言ったことに関して、公務員射殺事件の当事者イ・デジュン氏(故人)の妻が3日、TV朝鮮との通話で「監査院で最大限の礼を尽くして書面調査を要求したことに無礼だという表現を使うこと自体が法の上に君臨するということにしかならない。元大統領という人間がそんなに偉いのか」と語った。そして、「大統領の立場にあった時に最善を尽くしたと思うんだったらそう答えればいいのに、それを避けるということがわたしたち家族の立場では『何か言えないことがあるのではないのか』と疑問を抱く結果になる」とし、「書面調査に対して無礼だということは、私たちに対して無礼だと言っているのとおなじ」と述べた。

続いて「なぜ本人が最高尊厳だと考えるのか分からないが、大統領も国民のために働いている方」とし「監査院の調査過程で政治報復というのは惨めだ」と述べた。イ・デジュン氏の実兄、李レジン氏(57)は同日、フェイスブックに「あきれた。前職大統領に対する礼遇も必要なさそうだ」とし、「政治報復を云々する資格が(あんた=文在寅に)あるのか」と明らかにした。

尹政府発足前から大統領室移転、西海公務員襲撃、脱北漁民の送還事件、太陽光事業不正などで新旧権力はことあるごとに衝突した。しかし、今回は大統領直属機関である監査院がムン元大統領を直接狙ったという点で次元が違う。文在寅政府の「積弊清算」が検察の刀を借りたとすれば、今回は監査院が主導し今後の政治的中立論難もふくらむ恐れがある。

検察ではなく監査院が前職大統領を調査すること自体が異例であるだけに、適切性に対する疑問も提起されている。龍仁大学のチェ・チャンリョル教授は「ムン元大統領が気分を悪くする理由はない」としながらも「検察がこのような事案を調査中だが、監査院が検察より一歩先に進むことが適切なのか疑問」と指摘する。一方、ある与党議員は「文在寅政権と違って無理に検察・警察を動員しないという意味」と反論した。つまり検察がでしゃばるとまた民主党が、やれ検察政権だとか検察権力の乱用だとかぬかすから、検察ではなく監査院が前面に出てやっているということなのだろうか。

大統領室の高官は電話インタビューで、「監査院は独立した憲法機関で、大統領の指揮を受ける機関ではない」とし、関連の立場を表明する計画はないと明らかにした。監査院自らの判断という点を強調したもので、「政治報復」として強く反発する野党を刺激しない意図とも解釈される。

「卑俗語論難(尹大統領が訪米過程でなにか品位のないことばを言ったとか言ってないという議論)」で国政支持率最低値を記録した「国民の力」は局面を打開できる好材料と見ている。

クォン・ソンドン、キム・ギヒョン議員など「尹心」(ユン大統領の意中)を代弁している人々は、先を争ってムン元大統領の調査拒否を攻撃した。イ・ジェミョン代表の司法リスク対応に総力を傾けている民主党を、イ・ジェミョンとムン・ジェインとに分断する効果も狙えるという分析だ。

民主党は、与党が卑俗語論議を覆い隠すために、ムン元大統領の書面調査を進めると同時にイ・ジェミョン代表を狙って城南FC捜査を進めていると解釈している。民主党の関係者は「野党を泥沼にするという意図」と非難している。

しかし客観的にみて、こうした民主党の主張はピントが完全にずれている。検察および監査院は、文在寅氏が大統領時代にやった多くの不正を法に基づいて糺そうとしているだけである。それを「政治報復」だのなんだのとナンクセをつける民主党こそ、代表に上り詰めたイ・ジェミョンが現在司法リスクが最大値となっているのをなんとか白紙の状態に戻そうとして(イ・ジェミョンにはなんの罪もないと)、ありとあらゆる難癖を作り出して尹大統領および与党「国民の力」に非難を浴びせている格好なのだ。大統領および与党は、静かに落ち着いてやるべきことだけをきちんと、淡々と(粛々と)やっていくだけでいい。

(無料メルマガ『キムチパワー』2022年10月3日号)

image by:Yeongsik Im / Shutterstock.com

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韓国暮らし4分1世紀オーバー。そんな筆者のエッセイ+韓国語講座。折々のエッセイに加えて、韓国語の勉強もやってます。韓国語の勉強のほうは、面白い漢字語とか独特な韓国語などをモチーフにやさしく解説しております。発酵食品「キムチ」にあやかりキムチパワーと名づけました。熟成した文章をお届けしたいと考えております。

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【著者】 キムチパワー 【発行周期】 ほぼ 月刊

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