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離婚後に配偶者から「年金の50%がもらえる」は誤解だと知っていましたか?

離婚後の年金分割について、配偶者から50%もらえるという認識を持っていませんか?実はそれ、誤解なんです。今回のメルマガ『事例と仕組みから学ぶ公的年金講座 』では、著者で年金アドバイザーのhirokiさんが、  正しい離婚分割の分割方法について解説しています。

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離婚後に元配偶者から貰える厚生年金記録の誤解と現実

こんばんは!年金アドバイザーのhirokiです。

1.離婚分割は年金記録のどこを分割するのか

平成19年4月から始まった制度に年金の離婚時分割があります。

離婚した後に配偶者から50%の年金が貰えるという認識をもってる方が大半なのですが、実際に離婚分割をしようとする時に、実は厚生年金記録のみを分割するものであるという事を理解されます。基礎年金自体は個人に与えられた最低限の年金であり、個人単位の年金なので分けてもらう事は出来ません。

離婚時分割の計算自体は、過去の厚生年金記録を分割して計算するため、年金額計算をする時は非常に細かで面倒な計算をします。

とはいえですね、過去の膨大な気が遠くなるような年金記録を変更するので、職員が手計算をするのではなく年金機構のコンピューターが計算してくれます。

正式な計算はやや複雑なので、出来るだけ簡単に説明すると以下のような形です。

例えば厚生年金加入中の夫が今月51万円(標準報酬月額50万円)と、賞与60万6,500円(標準賞与額60万6,000円)貰いました。妻はパート収入月額5万円ありました(厚生年金には加入していない)。

この夫婦が離婚分割するとしたらどこを分割するのかというと、標準報酬月額とか標準賞与額の部分のみです。

妻はこの月は厚生年金加入してないので、本来は国民年金の基礎年金のみにしかなりません。

しかし、夫の標準報酬月額50万円の半分である25万と、標準賞与額60万6,000円の半分30万3,000円を分割してもらう事で妻も厚生年金を貰う事が出来るようになります。

よって、妻も今月は標準報酬月額25万円と標準賞与額30万3,000円をゲットする事になったという事ですね。

年金額としては、(25万円+30万3,000円)÷1ヶ月×5.481÷1,000=3,030円(1ヶ月分の老齢厚生年金)を妻自身の基礎年金と一緒に貰う事が出来ます。

ただし、離婚分割は離婚した後の2年以内に行うので、離婚前にあらかじめ事前に分割するという事は出来ません。

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2.夫婦共働きの人の離婚分割

上記の人は夫は厚生年金、妻は国民年金のみの場合でしたが、夫婦ともに厚生年金だった月はどうなるのでしょうか。

例えば夫は今月50万円の標準報酬月額で、妻は30万円の標準報酬月額だった場合ですね。

離婚分割は標準報酬が多いほうから少ないほうに分割して与えるので、離婚分割が最大50%配偶者から貰えるなら、夫から50万円の半分である25万円分割してもらって、妻は30万円から55万円の標準報酬月額となるのでしょうか。

そうなると不公平な状況になりますよね。夫にも自身の生活があるので、そんな横暴な事は出来ません。

「配偶者から半分の年金を分割してもらう」というのは語弊があって、実際は「夫婦の標準報酬を合わせた総額が半分ずつになるように分割」するというのが正解です。

そうすると、夫50万円+妻30万円=80万円が合計額なので、それを夫婦で半分ずつにするとそれぞれ40万円の標準報酬月額になります。

夫の50万円から10万円を妻に分割して、それぞれ40万円ずつを貰うという事にしたという事ですね。こうすれば元夫婦は平等の年金になります。

最初のケースの場合の夫婦は、妻に何も標準報酬月額が無かったので単純に夫から半分の標準報酬を分けてもらえばよかっただけでしたが、夫婦ともに標準報酬がある月もあくまでお互いに半分ずつの標準報酬になるように分けるというのが大原則なのであります。

なお、分割するのはあくまでも婚姻期間中の厚生年金記録だけというのも忘れてはいけないポイントです。

婚姻期間外の記録は何も手を付けません。

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3.婚姻期間と婚姻期間外の期間がある

先ほどは分割するのは婚姻期間のみと言いましたが、婚姻期間外の期間がある場合もちょっと考えてみましょう。

簡潔にするために年金額で考えてみましょう。

・夫の婚姻期間中で計算した月額の老齢厚生年金(報酬比例部分)は9万円、婚姻期間外の期間で計算した老齢厚生年金(報酬比例部分)は1万円。基礎年金は6万円。年金総額は16万円。

・妻の婚姻期間中で計算した老齢厚生年金(報酬比例部分)は5万円、婚姻期間外の期間で計算した老齢厚生年金(報酬比例部分)は3万円。基礎年金は5万円。年金総額は13万円。

このケースで分割してみましょう。

まず、婚姻期間中しか見ないので婚姻期間外は考えません。そして、標準報酬額で計算する報酬比例部分しか分割しませんので、基礎年金の事は考えません。

この夫9万円+妻5万円=14万円(夫婦の婚姻期間中の記録で計算した報酬比例部分)を、それぞれ半分ずつになるように分割するので、お互い7万円ずつになります。

そうすると両者の老齢厚生年金総額は、夫が婚姻期間中の離婚分割後の老厚7万円+婚姻期間外の1万円=8万円。妻は婚姻期間中の離婚分割後の7万円+婚姻期間外の3万円=10万円

ん?分割してもらったほうである妻の年金額が夫より多くなってしまいました。

これは婚姻期間外の部分が妻のほうが多かったので、総額が逆転してしまったんですね。それに関しては何も問題はありません。

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4.年金を半分ずつに分けない

年金の離婚分割は元配偶者の婚姻期間中の年金記録を分割してもらって、お互いが半分ずつの厚生年金記録になるようにします。

とはいえ、お互いが半分ずつになるようにするかどうかは夫婦で決める事なので(夫婦で決着が付かないなら家庭裁判所を利用する事もある)、半分ずつ(50%ずつ)が嫌なら例えば30%とか40%みたいな事も出来ます。

例えば夫は100万円の老齢厚生年金で、妻は60万円の老齢厚生年金だったとします。

分割の最大である半分(分割割合50%)にするなら、夫100万円+妻60万円=160万円を半分ずつにして、それぞれ80万円ずつを分割後の年金とします。

夫は20万円減って80万円になり、妻は20万円増えて80万円になりましたね^^

夫:妻=50:50になったとも表現できます。

では、分割してもらうのは40%でいいよと決めたらどうなるのか。つまり分割するほう(夫)の年金を60%として、分割されるほう(妻)は40%という事です。

夫婦の年金総額は160万円なので、夫は160万円×60%=96万円で、妻は160万円×40%=64万円に分割するという事ですね。

40%分割でやると、妻は分割前の60万円よりも4万円増加した64万円になりましたね。夫は100万円から4万円減の96万円。

では、分割割合を30%としたらどうなのか。

夫婦の年金合計は160万円なので、分割するほうの夫は160万円×70%=112万円になり、分割される方の妻は160万円×30%=48万円となる事になります。

なんか…ちょっと変ですよね^^;

年金低い側の妻の年金を増やそうと離婚分割したのに、妻の年金はさらに減って夫は更に増えるような事になりました。

分割の割合は何パーセントでも決められるというわけではなく、「下限」があります。

上限はもちろん50%ですが、分割される方の妻の年金額を最低でも超えるようにしなければいけません。

そうすると、上限50%≧分割割合>(妻の年金60万円/夫婦の年金160万円=0.375)となり、50%≧分割割合>37.5%(下限)となります。

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※ 参考

分割割合は、正式には按分割合と言います。按分割合は、ここでは下限を(妻の年金÷夫婦の年金総額)で求める事で、妻の年金を下回らないようにしています。

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つまり、分割割合を決めるんだったら下限である妻の年金を超えるように、せめて37.5%を超える割合で離婚分割を申し込んでくださいねという事ですね。

まあ、その辺の情報は年金事務所に言えば、この範囲で分割する事になりますと教えてもらえます。見込み額も貰う事は出来ます(50歳以上で年金受給資格がある人)。

(メルマガ『事例と仕組みから学ぶ公的年金講座』2022年10月19日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください)

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image by: Shutterstock.com

年金アドバイザーhirokiこの著者の記事一覧

佐賀県出身。1979年生まれ。佐賀大学経済学部卒業。民間企業に勤務しながら、2009年社会保険労務士試験合格。
その翌年に民間企業を退職してから年金相談の現場にて年金相談員を経て統括者を務め、相談員の指導教育に携わってきました。
年金は国民全員に直結するテーマにもかかわらず、とても難解でわかりにくい制度のためその内容や仕組みを一般の方々が学ぶ機会や知る機会がなかなかありません。
私のメルマガの場合、よく事例や数字を多用します。
なぜなら年金の用語は非常に難しく、用語や条文を並べ立ててもイメージが掴みづらいからです。
このメルマガを読んでいれば年金制度の全体の流れが掴めると同時に、事例による年金計算や考え方、年金の歴史や背景なども盛り込みますので気軽に楽しみながら読んでいただけたらと思います。

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【著者】 年金アドバイザーhiroki 【月額】 ¥770/月(税込) 初月有料 【発行周期】 毎週 水曜日 発行予定

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