北朝鮮からのミサイル軍事発射はここ数日だけでも数十回に及び、周辺各国の不安と批判は大きくなっています。今回のメルマガ『宮塚利雄の朝鮮半島ゼミ「中朝国境から朝鮮半島を管見する!」』では宮塚コリア研究所副代表の宮塚寿美子さんが、このミサイルの発射についての国際社会の見方となぜ挑発行為ができるのかを詳しく解説しています。
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習近平3期目を後ろ盾にますます強気に出る北朝鮮
北朝鮮のミサイル軍事発射が続いている。
前号でも北朝鮮のミサイル発射について述べたが、今回も本日想定していたように北朝鮮はミサイルを発射した。
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韓国軍の合同参謀部によると、本日11月5日午前11時32分ごろから59分頃にかけて、北西部の平安北道東林付近から黄海に向けて短距離弾道ミサイル(SRBM)4発を発射したと発表した。
北朝鮮は、先日11月3日の朝に3発のミサイルも発射している。前日にも発射しており、米韓で行われていた大規模合同軍事訓練の「ビジラント・ストーム」に反発した対抗措置とみられた。これにより、4日に終了だった訓練を1日延長することで合意していた。
筆者の見解では、この延長に対しても北朝鮮は反発をしてくることは想定しており、各方面からの問い合わせにもそう答えていた。数日開けず、間髪入れず反発したわけである。
では、国際社会はこの北朝鮮による相次ぐミサイル発射をどうみているのか。11月4日に、国連の安全保障理事会で対応を協議する緊急会議が開かれた。各国からは地域を脅かす危険な行為であると非難の意見が相次ぐ一方で、中国とロシアは米国が緊張を高めていると主張し、これも想定内の有意義で一致した対応をとることができずに終わった。
なぜ、北朝鮮はミサイル挑発行為ができるのか。
それは、やはり北朝鮮には中国とロシアの後ろ盾があるからである。
今回より明らかになったと分析できるものとして、中国共産党が先月10月16日から22日まで開催していた第20回党大会で習近平国家主席の党の「核心」としての地位と、政治思想の指導的地位を固める「2つの確立」を盛り込んだ党規約の改正案が承認された。
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また、習近平国家主席が通例を破り、3期目続投が確定したとみられる。これにより、中国の建国の父とされる毛沢東以来、最も強力な指導者としての地位固めにもなる。
このことは、北朝鮮の金正恩総書記にとっても、見習う指導者像でもあり、この2つの確立は、習近平国家主席を指導者として党の核心と定義し、同主席の思想を中国の今後の発展を導く指針として確固たるものにしている。
これにより党内における同主席の核心としての地位と党の中央集権的権限を保証するものとなる。
この北朝鮮便りでは、北朝鮮のミサイル挑発については、以前から中国とロシアの後ろ盾が見え隠れしていることを述べてきた。ロシアのウクライナ侵攻も泥沼化し、終わりが見えない。北朝鮮は首尾一貫として独自路線を貫き、米韓軍の訓練のけん制ぐらいでは屈することはないだろう。
北朝鮮は今回北西地域から朝鮮半島東の日本海(東海)ではなく、黄海に弾道ミサイルを発射した。これは極めて異例である。北朝鮮は、データ収集のためにもミサイル発射はこれからも彼らの都合良い時に続けてくる。休むことはあっても、終わることは決してないだろう。
次号ではミサイル発射について話題にならないことを祈るばかりだ。(宮塚コリア研究所副代表・國學院大學栃木短期大學兼任講師 宮塚寿美子)
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