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「行動記録」に最適なのはテキストエディタか、アウトライナーか、Logseqか?

「その日何をしたか」。記録するのは大切だと思っていても、多くの仕事を抱えていると振り返る時間すら持てないもの。そんな忙しい人には、1日の終わりではなく、1つの作業が終わる度に簡単に記録をつける方法が合っているのかもしれません。「ロギング仕事術」と名付けたこの方法を実践するのは、Evernote活用術等の著書を多く持つ文筆家の倉下忠憲さん。今回のメルマガ『Weekly R-style Magazine ~読む・書く・考えるの探求~』では、細かくその都度記録することの効果を伝え、「記録」と「読み返し」の必要条件をあげ、最適なツール探しの試行錯誤を振り返っています。

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作業記録を「読み返す」ということについて

今回は、作業記録の読み返しについて書きます。作業記録を書くことではなく、それを読み返すことです。なぜ、読み返しをテーマにするのか。もちろん、そこに大きな問題が横たわっているからです。

■作業記録を書きながら作業する

私は普段、作業記録をつけながら作業を進めています。一日の終わりに日誌を書くのではなく、作業が一区切りつくたびに、その記録を残すのです。その仕事を進め方を「ロギング仕事術」なんて呼んだりもしています。

これは電子的なツールで作業を進めているからこそ可能なアプローチでしょう。すべて手書きであれば、面倒すぎてここまで細かい単位で記録を残すのは不可能だったと思います。たとえば、今このメルマガの原稿を書いている真っ最中ですが、これが終われば、その旨を作業記録に書き、「n文字の原稿を書いた」なんて添えると思います。

そうやってごく短い時間で作業を振り返り、一区切りつけてから次の作業に向かえる、という心理的な切り替えがロギング仕事術の一番のメリットです。

デジタルツールであれば、こうした書き留めが簡単なのは良いのですが、問題は読み返しです。書き留めるのが簡単だからこそ、読み返しの難しさが増大してしまう、という問題が起きるのです。

■読み返しの面倒さ

話は至極簡単です。たくさん書けば、それを読み返す量もたくさんになる。当たり前の帰結です。そうなると、だんだん読み返すのがしんどくなってきます。

一応、作業記録はnoteのサークルやPixivFanboxで共有しており、他の人が読める文章で書いています。その意味での読みづらさはありません。しかし、大量の文章はそれだけで負荷になるものです。特に、1週間単位でざっと振り返りたいときなどは、非常にうっとうしい(≒圧が大きい)のです。

こうしたときに役立つのが、アウトライナーでしょう。かたまりごとにグループを作り、それに見出しを与えることで、視点を一つ上にあげてくれます。振り返りのときは、まずその見出しだけをざっと振り返ればOKです。

とは言え、私が使っているのはテキストエディタ(VS Code)です。アウトライナーのような階層構造の構築はできません。見出しの中身の開閉は可能ですが、アウトライナーと同じような視野の広さまでは確保できません。

だからといって、作業記録を書くためだけにアウトライナーを使いたいとは思いません。なぜなら、単につらつら書くだけならばテキストエディタの方が快適だからです。

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作業記録は、時系列で書き留めていくものであって、後からその順番を動かすことはありません。すべての出来事は、「その日」という単一のレベルにフラットに並ぶことになります。つまり、書いているそのときには、階層構造は不要なのです。一方で、それを後から見返すときには、階層構造が役立ちます。ここにジレンマがあるのです。

別の言い方をすれば、書くときのグッドなフィーリングと、読み返すときのグッドなフィーリングは必ずしも一致しない、となるでしょう。

■ファイルへのアクセス

もう一つ、1日1ファイルの形で作業記録を書いていると、「アクセス」に関する問題が発生します。たとえば、今日が10月18日でその日の作業記録を書き、次の日になったからもういらないと、その日の作業記録ファイルを閉じたら、もうその日の記録は「目に入らなく」なります。

もちろん、ファイル自体は存在しているので開けばいつでも閲覧できますが、逆に言えばそのような意図的な操作をしない限りは、目の前からは消えうせるのです。

これが手帳や日記であれば話は変わります。ページは連続して綴られているので、次の日になっても、その次の日になっても、記録は「目の前」に残り続けます。意図的な操作をしなくても、ふらっと目に入ることが起こりえるのです。

この点、Logseqであればバッチリです。ファイル自体は分かれていても、日誌用のファイルはスクロールすれば過去分が表示されるようになっています。操作は必要ですが、それでも「ある日付のページを開く」のような意図はなくても構いません。ざっとページを振り返ることができます。

しかも、Logseqはアウトライナーの機能もあります。先ほど述べたような視点を上にあげる使い方もできるのです。だったら、Logseqが最強なのかと言えば、なかなかそうは言えないところが、この問題の難しさです。

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■実際の体験から

実際私も、1ヶ月ほどLogseqで日記・日誌的なものを書いてみたことがあります。そして、たしかにそこには便利な体験がありました。上記で検討したような流れがスマートに実現できていたからです。特に、ハッシュタグを使うことで、特定のプロジェクトの記録を串刺して検索できるのがグッドです。

しかし、そのような意図的な検索ではない、ふわっとした振り返りにはあまり役立ちませんでした。アウトライナー的に階層構造を作って、見出しだけを読み返しても、振り返ったことにはならないからです。

たとえば、「project-TH」「project-BCB」などのプロジェクト名が見出しになりがちですが、そんなものが列挙されていても、結局何をやったのかはわかりません。

かといって、何をやったのかの詳細を知るために項目をすべて展開するならば、結局それはテキストエディタで全文を閲覧しているのと変わりません。つまり、ものすごく中途半端な塩梅なのです。

このやり方をうまく機能させるには、作業記録の見出しをつけるときに、「project-TH」のような単純なプロジェクト名だけではなく、その時間に何をしたのかの要約(サマリー)をつける必要があるのでしょう。

しかしながら、毎回そんなことをやっていたら、根本的に作業記録をつけるのが面倒になることは目に見えています。少なくとも、ロギング仕事術の頻度でそうした細かい要約作りは現実的ではないでしょう──(メルマガ『Weekly R-style Magazine ~読む・書く・考えるの探求~』2022年10月24日号より一部抜粋)

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image by: Shutterstock.com

倉下忠憲この著者の記事一覧

1980年生まれ。関西在住。ブロガー&文筆業。コンビニアドバイザー。2010年8月『Evernote「超」仕事術』執筆。2011年2月『Evernote「超」知的生産術』執筆。2011年5月『Facebook×Twitterで実践するセルフブランディング』執筆。2011年9月『クラウド時代のハイブリッド手帳術』執筆。2012年3月『シゴタノ!手帳術』執筆。2012年6月『Evernoteとアナログノートによる ハイブリッド発想術』執筆。2013年3月『ソーシャル時代のハイブリッド読書術』執筆。2013年12月『KDPではじめる セルフパブリッシング』執筆。2014年4月『BizArts』執筆。2014年5月『アリスの物語』執筆。2016年2月『ズボラな僕がEvernoteで情報の片付け達人になった理由』執筆。

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【著者】 倉下忠憲 【月額】 ¥733/月(税込) 初月無料! 【発行周期】 毎週 月曜日 発行予定

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