共和党圧勝を意味する「赤い波」が起きるどころか、上院では民主党が多数派を維持するに至ったアメリカ中間選挙。何がメディアの「共和圧勝」という予想を覆す要因となったのでしょうか。今回のメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』では著者で米国在住作家の冷泉彰彦さんが、「現時点で納得がいく10の仮説」を紹介。各々について詳細かつ解りやすい解説を記しています。
※本記事は有料メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』2022年11月15日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。
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米中間選挙結果に関する10の仮説
現地時間の11月8日(火)に行われたアメリカの中間選挙については、ほとんどのメディアの事前の予想が「ハズレ」となりました。共和党による「ビッグ・レッド・ウェーブ」は不発に終わり、現時点では、ほぼ「痛み分け」かあるいは「民主党の辛勝」という結果になりつつあります。
上院では、現時点では民主党50、共和党49で、残りのジョージア州の1議席については、12月6日の「再選挙」の結果を待つことになりました。どういうことかというと、民主党の現職、共和党の挑戦者双方が両者が50%を確保できないことが確定しており、州法により改めて選挙を行う必要があるからです。
この再選挙については、民主党の組織的な動員力が発揮されると言われていますし、共和党のウォーカー候補にはスキャンダルばかりで魅力がないので、「そのためだけの選挙」となると、民主現職が勝利すると言われています。仮にジョージア再選挙で現職のワーノック候補が勝つと、最終結果としては上院は民主51議席対共和49議席となります。ハリス副大統領の最終投票を行わないでも、民主党が過半数になるし、仮に中道派の造反が1名出ても勝てるわけで、選挙前とはかなり風景が異なることになります。民主党としては勝利と言えます。
下院は、どうやら僅差で共和党が多数になる見通しですが、現在でもカリフォルニアを中心に議席の確定が遅れています。本稿の最終時点でも、共和党が212議席に対して、民主党は205議席となっており、どちらも過半数ラインの218には届いていません。多くのメディアは共和党が219か220ぐらいに着地するという予測をしており、仮に共和党が勝つにしても1から2議席という僅差になる模様です。
下院435議席のうち、219というのは過半数ではありますが、極めて不安定な過半数になります。まず、重要法案の場合は徹底的に禁足をかけないといけません。また、健康問題等で1人とか2人や辞めて欠員が出ることは下院では良くあるのですが、そうなると簡単に多数派から陥落します。勿論、民主党も同じことですが、とにかく不安定です。
一番の問題は、造反です。と言いますか、アメリカの議会には造反という概念はあるようでないような感じであり、とにかく「党議拘束がない」ので、民主党でもバイデンの補正予算に反対する議員はいますし、共和党の側からも賛成票が入ったりするのです。つまり、1とか2という差での多数というのは、本当に二大政党ががっぷり四つに組んで対決するような法案ならともかく、通常の法案や補正予算などではほとんど意味がありません。つまり、このまま共和党が過半数ライン218の下院で、219あるいは220の議席を取ったとしても、日本の国会とは違ってその意味合いは薄いのです。
では、上院はどうかというと、例えば最高裁判事の承認であるとか、閣僚人事の承認といった非常に大きな人事権限を上院は持っているので、こちらでは1議席でも、あるいは両派同数であってもとにかく過半数を持つことには大きな意味はあります。一方で下院はそうでもないというわけです。
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