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現役精神科医が伝授、ホームページで判る「行ってはいけない病院」

なんとか探し当てて行ってはみたものの診察室で待っていたのは理想とは程遠い医者で、診られる方が気を遣ってしまうなどというケース、少なからず耳にするものです。そんな「地雷医者」を回避する方法はないものでしょうか。11月初旬に創刊されたばかりのメルマガ『バク@精神科医の医者バカ話』では今回、現役の精神科医で内科医としての実績も持つバク先生が、行かない方がいい病院のホームページの見分け方を伝授。「医者ガチャ」の成功率を上げる方法をレクチャーしてくださっています。(この記事は音声でもお聞きいただけます。

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「初診でかかる時の病院選び」について知ってるとちょっと得するかもしれないお話

皆さんこんにちは!メルマガ初心者のバクです。不定期発行としている理由を最初に書きたいと思います。基本的には現在の私の業務予定(勤務医ですので病院から言われた雑用?業務でどうしても忙しい曜日が発生します……というか忙しくない日があること自体「ええ!?」という感じだと思いますが、病院によっては一日座れない日々もありました。今はマシです……)的に現状水曜日か木曜日に発行されることが多いのではないかと思われますが、あくまでも病棟が平和であることが前提なので多少の前後はしそうです(現に今回ずれております)。2回以上は更新しますのでゆるゆるお付き合いください。

さて前回は「精神科カルテに基づく自己紹介」をしましたが、読者の皆様におかれましてはどう思われたでしょうか。普通に生活していると学歴や職歴を聞かれることは就活の時以外はあまりないと思います(時々謎の距離なしマウンターから聞かれることがあるかもしれませんが)が、精神科では大きな診断材料の一つになっています。精神科は前回もお話しした通り外科や内科のように検査結果が明確にドーン!と出ることが少ない分野です。むしろ匠の技のような「熟練した精神科医が感じることができる奇妙さ」というのが診断基準になっている病気もあります(これは統合失調症の患者さんとお話ししているときに我々が「ん?」と感じるプレコックス感というものなどです)。こう聞くと「ええ!?フィーリングなの!?」と感じますよね。

その通りです。

だからこそ精神科医はある程度体系だった病気への治療経験が非常に重要だと個人的には思っています(内科医でもやはり最初は給料が安くても大学病院などの大きな医局で働きながら経験を積んでいる先生の方が信頼度が高いと思います。……習得度はまぁ人それぞれ、人格に至っては修正が効きませんけれど……)。もしも読者の皆さんが体や心に不調をきたした時に変な医者に当たってしまうと物凄く多くの損害を被ってしまいますよね。今回は「初診でかかる時の病院選び」についてちょっとだけ私見を述べたいと思います。残念なことに「これさえ読めば地雷医者を回避できる!」訳ではないのですが、「こんな話もあるんやね……」程度にお話を聞いてくださると嬉しいです。

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厚労省における昨今の病院の広告規制のお話

実は医師免許は全ての科ができるオールマイティにも程があるやろ!?な免許です。なので私が明日突然外科のクリニックを開業したいと思っても何の罪にも問われません。怖いですね。私なら自分の専門じゃない分野である日突然開業するのは怖すぎる(患者さんの治療に自信持てないですし……)ので出来ませんが、実際新規開業の精神科/心療内科の院長経歴など見ると一回も精神科で働いたことがない先生もガツガツ開業しておられたりするので割とドキドキします。人柄がよくて勉強しっかりされていたら良いのですが……。

なお私は精神科医専門医指導医という資格を持っていますが、内科についてはHPに表記できる資格を持っていません。しかし実際内科医としても働いています(できるから働かさせられている、とも言う)。資格標榜については厚労省がここ最近で医療広告ガイドラインというものを改めて作成し、厳密に指導するようになりました。

これは元々昭和23年に公布された「医療法」というのがあり、看板、チラシ、TVやCMで「広告可能事項(とても細かい26項目)」であれば広告に載せても良いぞ!という話にプラスして「ウェブでの広告」についての話が厳しくなったという内容です。元々「こうしないように期待してるね」程度が「罰則付き」になったので厚労省も本腰入れたな、と思います。ウェブで主に禁止されたのは美容系が多いですが(術前後の比較写真の掲載が禁止になったり、こんなにやったら綺麗になる!という直接的かつ個人差が出ることへの断定を禁止するなど)、その他の科でもよくよく見るとシラーっと違反している広告を出していることがあるので要注意です。少なくとも厚労省から「アカンで」と言われている内容を出している所は信用しない方が良いので(これは健康食品やマッサージ系にも言えますが)知識を蓄積して騙されないように自衛を是非してください。

絶対!安全!うちがナンバーワン!などの誤認を招く表現(虚偽広告の禁止)

この世に絶対も100%の安全もありませんし、ナンバーワンって何と比較して言い切れるねん嘘つくなや、という疑問の出る表現は禁止されています。また「厚労省認可!」も書かれているから認可してるんやな!とそのまま信用しないでください。普通に認可していなくても書いている場合が多いです。これは権威付けによる誤認を招く手法です(昔なら「消防署の方から来ました」って訪問販売詐欺があったそうですが……)。

今こういった権威付けによる販売促進で最も多いのは「芸能人/インフルエンサーのおすすめ」ではないでしょうか。あんなにフォロワーがいる、テレビに出てる芸能人が勧めているから間違いないんじゃないかと思っちゃいますよね。

全然信用できないです、それ。

私にすら「サプリの紹介案件」とか来ます。謎のサプリを無料で1週間分もらってTwitterでぶっちぎって褒めてリンクを貼ってくれ!そのリンク経由で商品が売れたら売上の◯割を差し上げます!……こんなの信用できないって思えなきゃダメです。人間はお金が絡んだら平気で嘘をつきますからね。私がTwitterでPR案件やり出したら中身が変わったかお金に困ったかを疑ってください(本当にいいなと思ったものは勝手にツイートしてます)。

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他の病院/クリニックと比べてうちはここが凄い!という比較優良広告の禁止

似たような話で「芸能人も通院してます」も禁止事項です。最近芸能人が診断?されたと放送し、炎上したクリニックがありましたが実はクリニックが芸能人に一切謝礼を払っていない場合、何も問題にはなりません。患者が勝手に「この病院超良かった~」というのは広告には当たらないからです(なので口コミサイトはサクラを入れていない限り指導対象にはなりません)。ただ他の問題があったので炎上が加速したように思っています。

まず診断基準を満たしていないのに確定診断が可能であるように見えるHPだったこと。次に在籍医師の所有している資格の欄に厚労省が広告(病院HPは厚労省的に広告に当たります)記載を認めていない資格(単に医学学会に所属しているだけの場合は広告記載は禁止されています。これは意外に他の病院やクリニックでもよく見かけます)を列挙していたこと。他では診断できなかった病気も当院では診断可能!というように比較優良広告状態になっていたことなどなど……書いていて心配になってきたので改めて某クリニックの医師資格を見直してきましたがまだまだ違反だらけでした(普通に広告部門でのアドバイザーを雇ったらいいのではないかと心配になりますね……)。私としてはこういう病院/クリニックはまず避けた方が良いと思います。

勤務歴が本当かはわからない

立派な大学病院や大きな病院の勤務歴がズラッと並んでいた後に「令和2年当院開業」!と書いてあるとめっちゃ勉強してきた先生なんだなぁ、安心できそう!と思いますよね。私もそう思っていました……。私は過去の出版書籍の自己紹介の文に書いている通りいつかは開業したいと思っている身です(開業した方が自分の求める医療を患者さんに提供できます。でも勉強は外にしに行かないと独自性に満ち溢れたトンデモ医療になってしまう可能性もあるので開業したとて日々外部の情報は入れ続けなくてはなりません)。なので暇な時は色々なクリニックのHPを見て見やすいなとかこれは患者さん的に分かりにくいなとか妄想しているのですが……。

最近過去一緒に働いていたドクターが開業していて、経歴がめちゃくちゃだったりすることに気付いてしまうケースが何個かありました。普通に「R2~3年:●●病院勤務」って書いてあったら普通に常勤で頑張ってたんだと思いますよね。でも実はこの先生バイトで週1回午前中外来だけやってた(フィクション入ってます)だけでした。

内部事情を知ってないと絶対騙されます。むしろHPって面の皮が厚ければ厚いほど盛れる気がします。ですから良い病院の選び方の目安としてどの病院で勤務していたか、などの情報もあまり……いや、信用出来なさそうです。一人だけじゃなく複数人が書いているのを見つけてしまったので割と良くある「盛り技術」なのかもしれません。

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結局どうしたらいいんだろう

今時「あ~調子悪いな」と新患として受診したいなと思ったらまずネット検索をするのではないでしょうか。そしてGoogleマップのクチコミやHPを参考に受診を決めるのが一般的現代人の受診先の決定の仕方かと思います。外科や内科は一時的な受診(怪我をしたとか、急に腹痛が……などの突発的なもの)も多いでしょうし、最悪な対応をされてもゴールが見えていれば我慢できるかもしれません(しないに越したことはないんですけど……)。ただ全ての科において一生受診した方が良い病気も少なくない中で、医者の癇癪に怯えながらダラダラ待たされ一瞬で外来終了となるなら受診を前向きに継続したくなくなってしまうのは普通かと思います。特に精神科の場合メンタルが弱っているのにおかしな医者に当たった場合ショックは大きいです。理想論になりますがやはり「もう限界、明日から休職しないと無理」というところまで我慢してから受診先を探すよりは「ちょっとしんどい」くらいから主治医を探せるなら探したほうが良いです。内科もそうですが精神科もいつでも相談できる信頼のできる主治医を自分で決めておけたら何かあった時安心です。精神科の場合は正直相性もあるので、他の人にとっての最高の先生があなたにとっては最悪の医者になることも良くあります。そして住んでいる地域によっては「ここは嫌だから次に行こう」が叶わないこともままありますからとても悩ましい問題です……。

Googleマップもクチコミもすごく悪く書かれている先生がいるなと思っても、書き込み者の他のクチコミを見るとあらゆる病院の医者をdisっていることもあるのでクチコミ一つだけ見て判断するのも危険だったりするので大変難しい「主治医選び」ではあるのですが、上記にまとめた地雷(広告違反や嘘を書いている)病院は避けたほうが無難なのは間違いないと思います。

可能ならネットのクチコミではなく実際通院している人から話を聞けたら一番なのですが、中々知り合いに「病気で通院している」と双方言いにくいのでこのルートも難しいのが現状です。

とりあえずはHPでの虚偽記載は回避しつつ、「医者ガチャ」の成功率が上がることを祈りつつ今回はこれにて失礼いたします……。

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image by: Shutterstock.com

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文系から理転して医学部へ、医者になってからも内科医から精神科医へ転身を繰り返している落ち着きのないADHD当事者、依存症家族、AC当事者、毒親育ちのノンバイナリー(無性)。持ち前の衝動性で書籍を書いたりしながら常勤医として奮闘中のバクが、世間の目がまだまだ偏見に満ちている精神科領域について医療者目線と当事者目線で語ったり雑談したりします。その他産業医目線での復職についてや、DPAT(災害派遣精神医療チーム)の話、表ではいいにくいジェンダー問題や発達障害についての赤裸々なお話を不定期にお届け予定です。

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