ウクライナ、安倍氏銃撃。2022年の重大ニュースが示した「日本のかたち」

 

問題は、これをどう落とし所に落とすかであり、ジョージア(旧グルジア)の問題もこれに重なってきます。具体的には南オセシアとアブハジアの問題です。そして、現時点ではプーチンへの同伴を強いられているベラルーシ、そしてプーチンの圧力をより感じ始めているバルト三国の問題があります。

ウクライナ和平というのは、ロシアとウクライナの二国間の問題ではなく、このような「ロシアの国のかたち」という問題に帰結する大きな問題になるわけです。例えばですが、中国などがベドジェーベフなどを利用して、功利的な停戦を仕掛けて結果的に「上手く」行ったとします。

思い切り仮の話として、そこである種の「ディール(取引)」が成立して、プーチンの命は取らない、名誉も取らない、但し隠居させて後継はメドジェーベフ、これを習近平が後援する、クリミアとドンバス以外は撤退という事になったとします。その場合に、プーチンは完全に政治的に抹殺されて退場となったとしても、後継の政権は、対西側の完全な和平というのは難しいと思います。

チェチェンは民族ごとドゲスタン幽閉が継続、南オセシア、アブハジアは変わらず、ベラルーシも位置づけはそのまま、バルト三国への圧力も同じということでは、仮にロシアの政権が弱体化して、何らかの「戦争という劇場による求心力」が必要となった場合には、「何か」が起きる可能性は残ります。

ロシアというのは、どのような定義の国家であり、国境線はどのように安定できるか、この点がハッキリ決定できて、関係国で合意できるということに持っていかないといけません。米欧中の誰かが主導して、大局観を持ってロシアと向き合うことが必要ですが、仮にそれが中国だとして、今のように「つまみ食い」外交では非常な不満が残ります。

中国はロシアの冒険主義には同伴せず、しかし完全に欧米側に与することもなく、是々非々のポジションを維持して行くようです。それは仕方がないにしても、とにかく今回のウクライナ問題に関しては、まず物理的な停戦という「実効」を見せて欲しいですが、その上で、是非とも大局観をもってロシアと向き合って欲しいと思います。そうした責任を追わず、けれども一定の影響力は保ちつつ、是々非々の交渉カードとして中国はロシアを使い続けるというのが「中国の作戦」なのであれば、日本やアメリカはそのように受け止めて対処を考えなくてはいけません。

最悪の場合は、どのプレーヤも大局観は持たずに、対処療法的にロシア問題に向き合うことになり、やはり物理的な抑止力、化石燃料依存の克服といった具体策を進める必要が強く求められます。

ロシア問題が「国のかたち」の問題であるとしたら、英国も同様の問題が突つけられています。立憲君主制というのは「良くできたシステム」ですが、かなりの部分を「君主の中の人」の資質に依存しています。当代以降、それをどうするのか、英国も、更に日本も同じ問題を抱えていますが、特に英国の場合は「連合王国」という「かたち」をどう維持していくのかが問われます。

この「国のかたち」ということでは、年末に発覚した独におけるクーデタ計画というのが興味深いと思います。旧東独エリアを中心に、ドイツ国内には地域格差の問題があり、一種の理想主義的なメルケル=ショルツ路線と、泥臭い民族主義の相克などもあり、そこにEU中核国としての「コスト」への納得感の問題もあります。更にロシア問題がLPG確保、更には脱原発の見直しなど政治的には大きな火種になっている中で、確かに「クーデタ」などという物騒な話が出て来るのは分かります。

この記事の著者・冷泉彰彦さんのメルマガ

初月無料で読む

 

print
いま読まれてます

  • ウクライナ、安倍氏銃撃。2022年の重大ニュースが示した「日本のかたち」
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け