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恥ずかしい内閣。大臣4人が辞任した2022年“機能不全”岸田政権

安全保障関連3文書の改定や原発政策の見直しなど国の未来を決める重要事項を、十分な議論もなさず意のままに転換した岸田首相。このような政権運営は、果たして許されるものだったのでしょうか。今回のメルマガ『uttiiジャーナル』ではジャーナリストの内田誠さんが、「岸田政権の2022年」を振り返りつつその荒唐無稽な仕事ぶりや内閣の在り方を批判。さらに相次ぐ閣僚の辞任が政治的危機に繋がらない現状を危険視しています。

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戦後防衛政策の大転換、原発政策、国葬…2022年振り返り:「デモくらジオ」(12月23日)から

冒頭でお話申し上げようと思っていましたのは、この1年がどういう1年だったか、というふうなことですね。色んな見方がありましょうし、こういうことがあったと出来事を並べていっても、それで必ずしも全体像が明らかになるわけではないということがありますから、そこはかなり私流といいますか、自分勝手にぶった切ってしまうことになりますので、そこはそのようにご理解いただきたいと思いますが。

1年を振り返ろうかなと思ったら、今日はとんでもないニュースが。114兆円なんだそうです。新しい年度の予算案ですね。どこにそんなカネがあるんだろうと。一つは税収がかなり大きく伸びていることもあるので、そういう余裕も一部あって、赤字国債の分量がちょっと減るんですかね。そういうことがあるかもしれませんが、しかし途轍もない金額。今年が107兆円だったので7兆円増えている。これ、なんで増えたかというと、有り体に言ってしまえば防衛費。これがものすごい増え方をしている。確か5兆4,000億円で、亡くなった安倍さんが、岸田内閣は防衛費を2%に向けて増やしていくと、自民党の会合でそのようなことをうれしそうに語っていましたよね。

で、今年は5兆4,000億円だけれども、来年度は6兆円の後半だと言っていた。その通りになりました。6兆7,000億とか8,000億という、そういう金額だと思います。で、防衛関係の予算は防衛費以外にも実はあって、次年度以降の防衛費の調達のための基金のようなものがあり、それを入れると防衛関係の予算が114兆円のうち、実に10兆円ということだそうです。この金額にはちょっと本当に驚かされます。反撃能力ですが、敵基地攻撃能力、そのための予算というのがこれ1年度でということではないかもしれませんが、5兆円も計上するわけですよね。とんでもない軍拡が起ころうとしている。予算が通れば起こるということになりますね。

自民党と公明党…。公明党という党の存在意義をもう一度確認させていただきたいと思うのですがね。本当に、そういう時代に与党の一角を占めていていいのだろうかということは是非、立党の精神に立ち返り、一度ご検討いただけないだろうかと思いますけれども。公明党が反旗を翻せば、岸田政権は吹き飛ぶのではないでしょうか。いや、分からない、日本維新の会がいるし、あるいは国民民主党だっているから…そういうことになりかけているということですね、この1年間、失礼。

予算の話ではもう一つあって、建設国債。まあ、赤字国債の中で一応別の概念になるのですが、国債には違いが無い。ただ、それによって出来るものが消費してしまうものではなく、後で残るものということで建設国債という名前になるのですが、その一部を防衛費に充てるのだそうです。これは大転換ですね。一言で言えば、国家財政の軍事化の極みではないかと思います。

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で、今年は比較的リベラルだと思われていた、まあリベラルという言葉も色々難しいですが、そう思われていた岸田さんの政権で、もう安倍政権が幻のように頭の上に浮かんでいてですね、その支持の元に岸田さんが動いてこのような結果を出しているように見える。そして起こったことは何だったかと言えば、戦後の防衛政策の大転換。これは財政の上でもそうですし、さらに言えば反撃能力という形で先制攻撃と受け取られかねない攻撃手段を日本が保つということについて、ゴーサインを出したということですね。これが戦後の防衛政策の大転換でなくて何であろうかという気がします。枕詞のように「日本を取り巻く国際環境、安全保障環境の悪化」ということがよく言われますが、その点については本会議で、そうではないという話が出てきておりましたので、ご覧になれる方は是非…あ、無料で出していますよね、前半は。無料で見られますので、会員でない方もご覧いただけます。

ということで、まずは防衛政策の大転換ということがありました。その方向性に関して、ロシアのウクライナ侵攻が「背中を押す」効果を生んだことは確かだと思いますが、しかしウクライナの状況と日本の状況を比較して、日本も危ないからこうなんだというふうに言うことに果たして合理性はあるのかということは大きな問題だと思います。

それから、今日は5点ほどあげたいと思います。一つ目が「戦後防衛政策の大転換」。二つ目が「原発政策」です。原発に関して岸田内閣は再稼働を進めること。原子力規制委員会がゴーサインを出した原発に関しては、という限定がもちろんつきますけれども、原子力規制委員会がダメだというもの、例えば東電の柏崎とか、そういうものをすぐに再稼働せよなどということは無いわけですが、しかし、原子力規制委員会が安全性に関して、新規制基準という高められた基準ではありますが、それに合致、クリアできるという判断を委員会として判断したということと、その原発を本当に動かしていいかどうかというのは、必ずしもイコールではない。

そこは政治的にエネルギー政策をどうもっていくかということとすりあわせることが本来は必要なはずで、でも、それを岸田内閣では、率先して原発どんどんやりましょうという話になってしまいました。これは、その言い訳と言いますか、GXっていうんですか、脱炭素という気候変動に対する世界的な取り組みの方向性と上手く合致させて、原発はそれだけ見ると、脱炭素の優等生のように見えますから、そのように位置づけるということを含め、原発を非常に重要視する政策を組もうとしている。

あの、(福島原発事故の影響で)まだ自分の家に帰れない人が大勢おられるわけですよね。裁判もいくつも進行している。そのような状況で、なおかつ最大の問題は核のゴミの処分になんら方向性がついていない、あ、方向性だけはついたと言えるのかもしれませんが、なんら進捗がない。六ヶ所村の核サイクル、これが全くうまくいっていないこと。これだけを見ても、原発を、それがあるから安心だといえるような発電施設になるとは到底思えない。で、それを進めようとしているということ、これが二つ目です。

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三つ目は、これは少し毛色が違いますが、安倍さんが殺害される衝撃的な事件があり、その余波は実に色々な方向に飛び火していて、最も大きなのは自民党内部に、統一教会と関連団体がその影響を広く、強く及ぼしてきたのではないかと。懸念ということで言えば、過去の自民党が推進した政策の中で、統一教会が自民党に食い込んでいたがために成立したようなものがあったのではないかということ。そこまでまだ今は行っていませんが、そういうことがあります。

これが我々日本の有権者が全体として決めた、我々の意志によって作り上げた政府なのかということに疑問を感じるような事態が生じている。これは「政治の危機」だと思います。それがはしなくも分かってしまったわけですね。しかしその安倍さんの葬式を行った国葬、正確には国葬儀、それを巡って非常に厳しい議論が色々ありました。どういう人にしたって亡くなったので、ご冥福はお祈りしたいと私でも思うのですが、だけど、その人を国葬で送るのが正しいのかどうかについてキチンとした議論もせずに、例の閣議決定で決めてしまった。

閣議決定って、首相の意志ですよ。それ以上でも以下でもない。だって、反対する閣僚がいて、どうしても通したいのであれば、その閣僚を罷免すればいい。つまり閣議決定は民主主義的な手続きのように思えるかもしれないが、総理大臣の、首相あるいは首相とその周辺が自らの意見を通すやり方。こういうの、政治学者は比較検討をしているのではないかと思いますが、ある種の大統領、大統領令的な意味があると思うのですが。

逆に言うと、その責任は岸田さんが全部一人で負わなければならない。閣議と言ったところで。実際、閣議決定する前に、周りの意見も聞かずに国葬にすると決めていたと言われています。そういう総理大臣の暴走的な局面もあった国葬。これには過半数の国民が反対をした。各種調査を見れば明らか。半数を超える人が批判し、反対した国葬を強行したということ、これがあります。

かつて吉田茂さんが亡くなったとき、国葬にするにあたり、やはり反対があった。あれもかなり早く決まったわけですが、そのときと今回と、つまり普通の総理大臣ではない、日本の方向性を大きく変える、決める、整える、そういう歴史的な役割を果たした総理大臣だから国葬にするのだということなのでしょうか。吉田茂さんでも安倍さんほどではないですが、毀誉褒貶ある人ですからね。毀誉褒貶ある存在をどうやって扱っていくかということに関するルール。これが国会で議論されたことはないし、一般でもほとんど議論されなかったと思います。結局、こういう象徴的な行為が行われた。掛かったお金が12億というのはもちろん問題ですが、そのこと以上に大きな問題だと思います。それか行われたのが今年であったと言うこと。

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それからもう一つ。四つ目にあげたいと思うのは…あ、これ順番逆だ、四つ目に上げたいのは内閣に関わることなのですが、正直な話、岸田さんのパフォーマンスのあり方というか、記者会見でのしゃべりぶりだとか、様々な会合の時に原稿を読む読み方であるとか、そういう場合になんだろう、これ、全く私の私見ですので、どなたかに同意を求めたこともないですし、その必要も無い、私自身が感じたことですから、あくまでそういうふうに受け取っていただきたいのですが、政治的な信念とか、有機的に統合された観念とか、私は日本をこういうふうにして行きたいのだというような政治的な信念のようなものが、言葉に載ってこない。

これ、どう考えたらいいのかというのがあるですが…。ご本人からすればそうではないのかもしれない。岸田さんは帰国子女的な存在でもあるので、その意味で、ちょっと英語っぽいしゃべり方なのかなとも思いましたが、それも違う。区切って区切って、それぞれ話すスピードを変えるのですよ。もちろん、誰がやったって多少はそのようなことも起こりますが、岸田氏の場合、それが甚だしくて、聞いていて大変辛い。そのことがまずあるのですが、これがその内閣全体を岸田さんが完全に掌握しているのだろうかという問題にもぶち当たる。内閣だけでなく、党役員もそう。特に国対委員長は全く機能していないという政治評論家の方が多いですね。なんか、とんでもなく仕事をしていないのではないかというふうに口を極めて言う方がいらっしゃいます。

で、閣僚に戻ると、これまでに3人。統一教会との問題が2人、あ、失礼、統一教会との問題が1人、政治資金の問題がとりあえず1人、それから法務大臣の失言ですよね。あと、これからまた予備役みたいな人がいてですね、復興大臣?これまたお金の問題かと思いますが、これもありますね。3人既に辞めていて、4人目に今取りかかろうとしているところなわけですよ。これ、恥ずかしい内閣でしょう。そういう人を適材適所と言って職に就けようとしたわけでしょ。大臣にしたわけですよ。これ、恥ずかしい内閣だと思うんだよね。で、内閣に関することを二つ言いましたが、そのようなものがありながら、これが政治的な危機、内閣の危機、岸田内閣の危機に直接結びつかない理由は何かと言えば、当面選挙がないということなわけでしょ。これはヤバいですよね。こういう時にはすぐにでも選挙をやりたいと思うところですが。

(『uttiiジャーナル』2022年12月25日号より一部抜粋。全てお読みになりたい方はご登録ください)

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image by: 首相官邸

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ニュースステーションを皮切りにテレビの世界に入って34年。サンデープロジェクト(テレビ朝日)で数々の取材とリポートに携わり、スーパーニュース・アンカー(関西テレビ)や吉田照美ソコダイジナトコ(文化放送)でコメンテーター、J-WAVEのジャム・ザ・ワールドではナビゲーターを務めた。ネット上のメディア、『デモクラTV』の創立メンバーで、自身が司会を務める「デモくらジオ」(金曜夜8時から10時。「ヴィンテージ・ジャズをアナログ・プレーヤーで聴きながら、リラックスして一週間を振り返る名物プログラム」)は番組開始以来、放送300回を超えた。

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【著者】 内田誠 【月額】 月額330円(税込) 【発行周期】 週1回程度

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