一般的には、共食いが恒常的に行われるのは、エサが少ない環境で、沢山の子が生まれて同時に育つような場合である。この場合は、共食いの頻度は密度とエサの量に依存する。例えば、オタマジャクシは卵塊から一斉に孵化するが、密度が高かったり、エサが少なかったりすると共食いを始めることが多い。
上記のような状況で、共食いが個体群の資源利用の戦略として、より有効になるためには、共食いの摂食量から成長量への転換効率が、共食い以外の摂食量から成長量への転換効率より、高ければ高いほど良いということになる。
別言すれば、エサとして共食いが最も優れていれば、共食いは有効な戦略になる。さらに、全体の死亡に対する共食いの率が高ければ高いほど、効率がいい。先のカマキリの例を引けば、ケージの中の死亡はほとんど共食いによるものと考えられるので、資源は極めて有効に利用されたわけだ。
人間的にはあまり議論したくないような話だけれども、最近共食いが重要な戦略として見直されているという話を聞いて、上述のような議論をした44年前の自分の論文を思い出したのである。
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