3.団塊世代や団塊ジュニア世代のように高齢人口が特に多くなる世代に対応する
ところで、年金積立金は株とか債券などで運用してますが、なんとなくモニターをずっと見てるトレーディングみたいなイメージがありますかね。
株とかデリバティブ商品みたいなのやってる人なんかはずっと血眼になって画面に釘付けみたいな事も有るかもしれませんが、年金積立金でそんな事はやっていません。
インデックス運用と言ったら投資を勉強してる人ならすぐわかると思いますが(日経平均株価とかTOPIXみたいなのと連動するようなやつ)、運用先に任せて時々チェックすればいいだけのもの。
一生懸命利益を出そうと、損を出さないようにとモニターに人が張り付いてるわけではないので、結構少ない従業員で(150人くらい)で今まで100兆円もの運用益を出してこれたわけです。
さて、年金の3~4年分ほどの積立金があるわけですが、それは今後2100年ほどの間に1年分ほどまで減らしていく事になっています。
そもそも日本の年金積立金は多すぎるので、こんな200兆円もの貯金があるのはあまり良い事ではありません。よく池の中のクジラにたとえられますが、それほど巨額なわけです。
それだけのお金が積み立てられてると食い物にされかねない危険性もありますしね。世界情勢もいつどうなるかわからないですしね。
じゃあどうやってその積立金を1年分くらいまで減らしていくのかというと、今後の高齢化が進む中で高齢者が特に多くなる部分があります。
それは出生率が非常に高かった団塊の世代や、団塊ジュニア世代の人達ですね。
特にその世代の高齢者の人達は多いので、今の固定された保険料や国庫負担の収入だけでは収まりにくくなる時期があります(高齢化率は今は30%あたりですが、今後は2050年あたりに40%上限になる見通し。高齢者が増加すると死亡率も上がるので、その後が安定してくる)。
もう保険料率は上限固定してるから、高齢者が増えるからって保険料率を引き上げるわけにはいかないですからね。
じゃあ保険料を上げないようにするにはどうしたらいいかというと、高齢者人口が特に高くなる2つのコブの部分で積立金を取り崩しながら、支払い保険料や年金給付に支障が無いようにするわけです。
その特に高齢者が増加する2つの世代のコブに対して、積立金を取り崩しながら1年分程度まで減らしていこうとするわけです。
じゃあその世代を乗り切るとどうなるかというと、若い世代と高齢者世代の人口が安定するので、そうなると本来の年金積立金の役割である単なる調節弁に徹すればいいだけの話になります。
日本は人口が特に多かった世代のコブが2つありますが、他国にはそこまで極端な世代は無いので少ない積立金でも別に何とかなってるわけです。
よって、年金の主な財源は保険料であり、一定の国庫負担である事が基本であります。
とにかく年金積立金の本来の役割は調節弁(バッファー)であると認識していれば、くだらない年金破綻論だとか赤字が何兆円!みたいなしょうもない情報に振り回される事は無いでしょう―― (メルマガ『事例と仕組みから学ぶ公的年金講座』2023年3月8日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)
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