東大を頂点に偏差値で順位付けがなされた大学の、少しでも上位ランク大への入学を目標とする日本の受験生。しかし海外ではその事情はかなり異なるようです。今回のメルマガ『東南アジアここだけのお話【まぐまぐ版】』では、マレーシアに11年以上滞在する文筆家で編集者ののもときょうこさんが、同国で超有名大学を第一希望とする生徒が少ない理由を解説。さらに彼らが大学選びで重要視するポイントを紹介しています。
なぜ、海外ではみんながみんな、「超有名大学」を目指さないのか?
日本にいると、猫も杓子も東大へ、みたいな流れを感じるかもしれません。
ところが、マレーシアで見ていると、高校の成績が満点でも、超有名大学に行く子は、そんなにいません。特に、アイビーリーグを第一希望とする生徒は少ないです。
なぜか。
いくつか理由があります。
1.ファイナンスの問題
ファンデーションやAレベル、IBなどの資格を取ると、大学に申し込みをします。間口はけっこう広いです。日本でしたら「オファーされたうち良い偏差値の大学にそのまま行く」パターンが多いと思いますが、欧米に進学する場合、まずお金の問題が出てきます。
マレーシア人に人気がある英国・カナダやオーストラリアの大学でも、1年の学費が300-500万円だったりします。生活費も高騰しています。
奨学金が半分出たとしても、生活費が高騰しているため、全部で2,000万円くらい必要になります。ここでまず絞られてきます。
2.入学後に非常に重要なGPA(成績)の問題
日本の大学は入ったら終わり、みたいな感じがありましたが(今は少し変わったのかな)、海外の場合、入学はただのスタートで、そこからが勝負です。
重要なのは、入学後の「成績」です。成績(GPA)がインターンシップ、進学、就職とあらゆるところに響いてくるのです。私のいる無名大学ですら、「在籍し続ける」ための成績を取るのは大変です。多くの学生はトップ大学でトップのGPAを取り続けることがいかに難しいかをわかっていると思います。
特に理系学生は大学院までをセットで考えているケースが多く、将来大学院に進学する場合、転学を考える場合、就職する場合、ものをいうのは大学時代の「成績」です。
ランキングトップの大学で成績が悪い生徒よりも、ランキングが低めの大学で成績が良い方が、将来の選択肢が増える。
ですから、中堅大学でGPAを上げておいて、最後に提携している比較的世界ランキングの高い大学に転学し、そこで最終的な卒業証書を良い成績でとって卒業――みたいな道を選んだ学生をけっこう見かけます。中堅大学の方が学費が安く、また4年間、「頑張り続ける」のがいかに大変か、特に国際バカロレアの生徒たちはよくわかっているようです。
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3.就職の問題
マレーシアの人を見ていると、職種や専攻を加味し、卒業後の出口戦略がとりやすい国を選ぶ傾向にあります。
特にアメリカを選ぶ学生が減ったのは、就職の大変さがよく知られているからです。米国の大学を優秀な成績で卒業した人でも、ビザ応募に苦労し、スポンサーが見つかっても、「抽選」だったりするようです。
もし、将来日本に戻るつもりなら、大学院まで行くのなら、アメリカもアリかも、と思います。
ではどうやって大学を選ぶのか
学生たちを見ていると、まずは自分が行きたい専攻を決めます。さらにその専攻のために、自分が今学んでいる学科で出願できるかが重要です。
そこから、やりたい仕事(ないしは行きたい大学院)、ビザの取りやすさ、学費、学部の世界ランキング、インターンシップのしやすさなどを総合的に判断しているようです。
すると、その後の就職でも、年数がたって大学院に進学する場合にもよいGPAで出願できるのです。
とまあ今までの常識で書いてみましたが、正直なところ、人工知能の発達により大学そのものにどこまで意味があるのかが、不透明な時代です。自分の頭で判断して決める時代がいよいよやってきたなと思います。
※ 本記事は有料メルマガ『東南アジアここだけのお話【まぐまぐ版】』2023年5月4日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。
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