北朝鮮が5月31日に偵察衛星を打ち上げたことに関して、国連が緊急会合を開催しました。それに対して北朝鮮は怒り心頭。その理由とは?今回のメルマガ『宮塚利雄の朝鮮半島ゼミ「中朝国境から朝鮮半島を管見する!」』では宮塚コリア研究所副代表の宮塚寿美子さんが、その北朝鮮の怒りの内容と今後の打ち上げへの予想を語っています。
偵察衛星打ち上げ失敗 10日に2度目の予告なし発射か?
北朝鮮の朝鮮中央通信は、2023年6月4日に金与正(キム・ヨジョン)党副部長の談話を発表した。金副部長は、北朝鮮が5月31日に北西部の平安北道東倉里の発射場から偵察衛星である「衛星運搬ロケット千里馬1」の打ち上げを巡り国連安全保障理事会が緊急会合を開催したことについて「非常に不快だ」と批判した。
北朝鮮は、去る5月30日に英国のロンドンにある国際海事機関(IMO)本部に、「衛星の打ち上げに関して、日本時間の5月31日午前0時から6月11日午前0時までの間とし、残骸などの落下予想地点として3か所の座標を示した」と、日本の海上保安庁に伝えたとしていた。
IMOの加盟国が衛星の打ち上げを本部に知らせる義務はない。しかし、IMO総会決議に基づく世界航行警報業務(WWNWS)では、所属区域の調整国に知らせることになっている。韓国と北朝鮮を含む区域の調整国は日本が担っており、加盟国は海外射撃訓練、海上訓練、船舶沈没、暗礁発見などの緊急事項を日本に知らせなければならない。北朝鮮がこのように事前にIMOに衛星の打ち上げを通知したのは2016年以降で初めてのことである。
今回の金副部長は、北朝鮮としては手順を踏んだはずなのに、国連が批判することは筋違いだということを強調したいのであろう。
さらに、朝鮮中央通信は、「国際問題評論家キム・ミョンチョル」の名前で「今後、国際海事機関は我々が進めることになる衛星打ち上げの期間と運搬体の落下地点について自力で調べて対策を講じなければならないだろう」という寄稿も報道している。
つまり、今後は、通告なしの打ち上げを示唆したのである。
結局、今回の発射は失敗したとされるが、北朝鮮はこの事を国内向けには公表していない。その理由として、今回の予告にもあった6月10日も再び偵察衛星を発射し、成功したら大々的に公開するのかもしれない。
(宮塚コリア研究所副代表・國學院大學栃木短期大學兼任講師 宮塚寿美子)
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