不祥事だらけNHKの“イヌ化”が止まらない。受信料のために公共性を捨てた放送局が煎じて飲むべきBBCの爪の垢

 

21世紀に入り急増するNHKの不祥事 2000年、森元首相「神の国発言」指南書事件

NHKの不祥事は、21世紀に入り急増した。2001年、NHKが教育テレビ(現Eテレ)で放送を予定していたETV特集『戦争をどう裁くか』の放送内容を事前に知った自民党の安倍晋三、中川昭一(当時)両議員がNHKの幹部に対して番組の内容に注文を付け、放送直前になってNHKの幹部が現場に番組内容の改変を命じたために現場は大混乱。

番組を企画しNHKから制作を受注していた制作会社は、当初の企画意図とまったく異なる番組になってしまうとし、改変を拒否、NHKの現場デスクらも当初、改変に抵抗したために、放送当日になってもまだ番組の編集作業が終わらない異常事態に陥ってしまう。

そして、結果的に幹部自らが編集を指揮するという異常な体制の下で番組が番組枠よりも4分も短い状態のまま番組は放送されるというできごとが起こった。

他にも、菅義偉首相(当時)が『ニュースウオッチ9』に生出演した際に、有馬嘉男キャスターから学術会議問題を鋭く追及されると、翌日に官邸の幹部からNHKに苦情の連絡が入り、ほどなくして有馬氏がキャスターを降板させられたり、安倍政権時に国谷裕子氏が『クローズアップ現代』のキャスターを降板させられている。

それどころか、NHKは自ら政治家にすり寄る行為まで行った。2000年5月、就任間もない森喜朗総理(当時)が、神道政治連盟国会議員懇談会結成30周年記念祝賀会に出席した際、

「日本の国は、まさに天皇を中心としている神の国」

と発言した(いわゆる「神の国発言」事件)。

本当の問題はここからだ。時をおいて福岡のブロック紙「西日本新聞」に以下のようなコラムが載る。

森喜朗首相が「神の国」発言の釈明記者会見を開く前日の朝、首相官邸記者室の共同利用コピー機のそばに「明日の記者会見についての私見」と題した文書が落ちているのを見つけた。ワープロ打ちされた感熱紙。一読して、首相周辺にあてた翌日の記者会見対策用の指南書と分かった。

この「指南書」を書いたのが、当時のNHKの官邸キャップだったという。

なぜNHKで不祥事が相次ぐのか?日本にだけBS放送がある理由とNHKの肥大化

NHKは受信料という安定的かつ継続的な収入を得る代わりに、毎年の予算と一般の会社の取締役にあたる経営委員会の委員の人事について、国会の承認を必要とする。その過程でNHKは時の権力の介入を受けやすい。

その一方、NHKも自ら時の権力(自民党)にすり寄り、年間7,000億円のも収入をもたらしてくれる現在の受信料制度を維持してくれる自民党に対し、“忖度”。

広告収入に頼り、テレビ離れの危機がダイレクトに直撃し、一部では民放地方局の経営統合まで噂される事態を尻目に、NHKはやりたい放題ができる。そのことがNHKの放漫財政の原因になったり、規律のゆるみを生み、不祥事の原因となる。

NHKの肥大化も不祥事の要因だ。肥大化はBS放送を始めたことから始まった。あまり日本人は知らないが、そもそもBS放送は日本にしかない(*1)。もともと、アメリカはBSを打ち上げようとしたが、デジタル技術の登場によりそれよりもコストの安いCSで衛星放送を始めた。しかもCSでは100チャンネル程度の「多チャンネル放送」が可能だ。

同じころ、不幸にも、日米貿易摩擦が勃発。アメリアからのコンテンツ輸入を増やさなければならない時期に、アメリカが打ち上げを“やめた”BSを日本が買わざるを得なかった。

そこで目を付けられたのがNHKである。当初の名目は、難視聴対策。離島には電波が届かないのでBS放送をやると説明された(*2)。

しかしそれは明らかな嘘。NHKが始めたBS放送は地上波放送と内容が異なっていた。結果、難視聴対策なら地上波と同じ放送をすべきなのに、映画やメジャーリーグ中継など地上波とは別の放送が始まり、料金も地上波とは別で取ることに。NHKの“肥大化”は、そこから始まる。

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