今の日本の政策では20年後には高齢者が「バカで貧乏になってしまう」と強い口調で語るのは、精神科医で作家の和田秀樹さん。今回のメルマガ『和田秀樹の「テレビでもラジオでも言えないわたしの本音」』で、 高齢の大御所たちとの対談から見えてきた、これからの高齢者の社会との関わり方と日本の高齢者の高いポテンシャルについて持論を展開しています。
高齢者が世界でいちばん賢く洗練されている日本
高齢者のアイドルのようになってから、次々と賢い高齢者の方々との対談が続く。
養老孟司さん、田原総一朗さん、五木寛之さんに続いて、若宮正子さん、樋口恵子さんと高齢者の大御所との対談を今年の前半に行った。
若宮さんも樋口さんも、高齢者を現役扱いして、もっと社会で活用すべきという点では一致していた。
私もまさにそう思っている。
前にも書いたかもしれないが、異次元の少子化対策とか言っても、うまくいっても彼らが現役の働き手や消費者になるのは、20年もあとの話だ。AIやロボットが実用化したら、彼らに仕事があるかどうかもわからない。
そして、このバカバカしい円安政策のせいで、最低賃金などが韓国や台湾に抜かれそう、あるいは抜かれた状態にあるようだ。
ベトナムやタイの労働者にしても、日本に集められる保証はない。
少なくとも賃金の面では負けつつある。
解決手段としては、高齢者に元気になってもらって、もっと労働力になってもらうのが現実的だ。
免許を取り上げるようなバカなことをやめて、もっと運転してもらうくらいがちょうどいいのだ。
ただ、私はそれ以上に大切なのは、高齢者に現役の消費者になってもらうことだと考えている。
実際、個人金融資産2,000兆円のうち、7割は60歳以上がもっている。
高齢者がお金を使うことで、日本がほかの国がないような高齢者向けの製品やサービスを生み出すことができれば、よその国もどんどん高齢化しているので、国際競争力を持ち得るし、日本製品が憧れの的になるだろう。
この記事の著者・和田秀樹さんのメルマガ
実は、日本の高齢者は要求水準の点で高いポテンシャルをもっている。
一つは知的レベルの高さだ。
たとえば団塊の世代は、1学年260万人もいて、空前の受験競争を経験している。
確かに、若い人たち(40歳くらいまで)の学力は、すでに韓国や台湾に抜かれているし、シンガポールなどの足元にも及ばない。
ところが、70代、80代の人となると、韓国や台湾、中国には当たり前のように字が読めない人や計算ができない人がいるのに、日本人は難しい読解であれ、数学の問題であれ、やってきた経験がある。
そういう人が要求する製品やサービスのレベルは、当然、ほかの国より高いだろう。
また、今の日本の70代、80代は、高度成長もバブルも経験し、贅沢を知っているし、ハイレベルなものを求めてきた世代だ。
そういう点でも要求水準が高いはずだ。
つまり、高齢者が世界でいちばん賢く、洗練されているのが日本なのだ。
これを活かさないと、たとえば20年後になると高齢者もバカになってくるし、貧乏くさくなってくる。
今がチャンスなのに、政府は高齢者を活かそうとしないし、アホ経営者たちは高齢者を消費者とみなしていない。
前にも書いたが、これだけ高齢者向けの本が売れていても、私に商品開発、サービス開発のアドバイザーになってくれと言ってくる経営者はいない。
実は、AIの時代は、要求水準が高い人間が勝つ時代だ。
スティーブ・ジョブズ型の経営者が求められているし、ドラえもんにお願いするのび太が面白いお願いをしないと話がつまらなくなる。
AIがなんでも考えてくれる時代が間際に迫っているのだから、厚かましい者勝ちだ。
世の中の経営者がバカの巣窟なのだから、私は相続税を100%にするしか、高齢者が金を使ってくれない気がする。
これによって、日本が世界一の要求水準の高齢消費者が金を使うことになるし、金持ちのバカ息子も勉強するようになるだろう。
でも、ウヨクは逆の立場だ。
やはり彼らは、日本を韓国に勝たないように、統一教会に洗脳されているのだろうか?
※本記事は有料メルマガ『和田秀樹の「テレビでもラジオでも言えないわたしの本音」』2023年6月24日号の一部抜粋です。
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