都市部では国内や海外から取り寄せて、毎日10種類以上のクラフトビールを樽から提供するタップバーが当たり前の存在となっています。また、地元の小さな醸造所がつくったビールを料理とともに提供する直営店も増えています。こうしたクラフトビールビジネスを地方で成功させるには何が必要なのでしょうか。『永江一石の「何でも質問&何でも回答」メルマガ』著者で人気コンサルの永江さんは、ただラベルを変えただけのお土産物的な「地ビール」に芽はないとズバリ。地元の特徴を生かした「本当に美味しいもの」を提供できて初めて可能性が生まれると伝えています。
地方のクラフトビールビジネスについて
Question
現在都内在住で、地元でのクラフトビールビジネスを検討しています。永江さんからのご意見をお願いします。
<ロケーションについて>
- 場所は地方温泉地
- 近くには温泉宿泊施設は勿論、足湯等の施設があり、観光客が多い。
- 有名なInstagram等の撮影スポットが近くにあり、それ目的に訪れる人も多い。
- 近隣にはUターンや移住で、カフェやマフィン専門店などが増えてきており、過疎化が進む地域の中では活性化の兆しがある。
- ミニマムな地域であり、近隣の他の温泉からも、地域を跨いで旅行者は訪問している。
- インバウンド客はまだ少なく、近隣の政令指定都市等からの観光客が多い。
<販売商品(クラフトビール)について>
- 温泉地なので、温泉水は勿論、湧水等が有名なので、それらを使用した商品をラインナップ。地元食材を使用した季節商品も検討。
- 路面ブルワリーについては、販売は勿論だが、基本的にはお客様とのタッチポイントとしての役割。
(路面販売商品を海辺に持っていって頂き、夕日と併せたSNS投稿を期待できるのでは?) - 現状、空港や道の駅での土産販売で地元焼酎等の取り扱いはあるが、ビールは無い。
- クラフトビールの単価等を考えて、地元民が日常に飲むビールでは無いと思われる。(手土産等は可能性あり)
<その他補足>
- 都内在住ですが、私自身がここ数年、その地元で町おこしイベント等を手掛けていることもあり、協力者も多く、人材は確保できる見込み。
- S級の有名観光地ではないが、県内にブルワリーも無く、道の駅や空港等での卸販売がメインで成立するのではないか?
永江さんからの回答
今は、地ビールは全国に何百種類もあるので、よほど美味しいものを作れない限りはあまり儲かるものではないのでおすすめしませんね。もしやるなら、その地方特有の果物や食材を使ったお酒を造るとか、名産品とセットで楽しめるビールを提供する方が良いと思います。
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少し昔なら地ビールは珍しかったですが、今は全国津々浦々に地ビールが溢れています。わたしの近所にも「深大寺ビール」がありますが、正直何度も買ってリピートしたいとは思えないレベル。きっとコンサルティング会社や代理店などがパッケージだけ変えて作るような商品提案をしているか、地元の酒造がにわか仕込みで作っているのだと思いますが、珍しくもたいして美味しくもない地元のビールがあっても、せいぜい気まぐれで1本買って帰る人がたまにいるくらいでしょう。正直、いろんな地ビール飲みましたけど総じてスカスカ。
それよりは、地元の食材を使ったユニークなお酒の方が買ってもらえる可能性があります。例えば、宮崎ではパイナップルのワインがあったり、奄美では現地の黒糖を使ったラム酒が作って売られています。こうしたユニークなお酒なら、そこら中にある地ビールとは違ってお土産に選んでもらえたり、気に入った人には通信販売で定期的に売れるかもしれません。また、どうしてもクラフトビールを作りたいなら、地元の美味しい食材を使ったBBQや料理とセットにして、その食事に合う地ビールとして出すならまだあるかと思います。
ぶっちゃけ、キリンやエビスなど日本の大手メーカーが作るビールより美味しいビールってなかなか作れないでしょう。それよりは、その地方の個性があってニーズが期待されるお酒を作った方が、勝ち筋はあるだろうと思いますね。要は、美味しくて他にない物を作らないと買ってもらえないということです。
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