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もはやイーロン・マスク頼み。ウクライナ戦争の鍵を握る「スターリンク」の力

イーロン・マスク氏率いるスペースXが展開するスターリンクシステム。同サービスによりマスク氏は、世界のさまざまな国の命運を握る存在になったと言っても過言ではないようです。今回のメルマガ『在米14年&起業家兼大学教授・大澤裕の『なぜか日本で報道されない海外の怖い報道』ポイント解説』では著者の大澤さんが、マスク氏が「宇宙で最も支配的なプレーヤーとなった」とするアメリカ有力紙の記事を紹介。その上でスターリンクを所有する同氏の影響力ついて、個人が原子力爆弾を持っているに等しいとしています。

イーロン・マスクとウクライナ戦争

スペースX、テスラ、ツイッターを経営するイーロン・マスク氏、国家を超えるような影響力を持ち始めています。

彼がウクライナ戦争に及ぼしている影響について7月28日のNYタイムズが面白い記事を出していたので紹介しましょう。

スペースXを率いるイーロン・マスク氏は、戦略的に重要な衛星インターネットの分野で着実に力を蓄え、宇宙で最も支配的なプレーヤーとなった。

 

マスク氏はほぼ毎週スペースX社のロケットを宇宙に送り、ソファぐらいの大きさの衛星を何十基も軌道に送り出している。

 

衛星は地球上の端末と通信するため、地球上のほぼ隅々にまで高速インターネットを送ることができる。現在、4,500機以上のスターリンク衛星が上空にあり、全活動衛星の50%以上を占めている。

 

ウクライナ戦争ほど、スターリンクの力、そしてマスク氏の影響力を示した出来事はない。

 

ウクライナでは現在、4万2,000台以上のスターリンク端末が軍や病院、企業、援助団体によって利用されている。

 

ウクライナのデジタル担当大臣はインタビューで、「スターリンクはまさに今、私たちの通信インフラ全体の血液なのです」と語った。

解説

戦争になれば地上の基地局は破壊されて機能しなくなります。頼れるのは衛星通信だけです。つまりイーロン・マスクに頼らざるを得ないのです。

さらに記事は続きます。

マスク氏は一人で顧客や国のスターリンクインターネットアクセスの停止を決定することができる。そしてサービスが収集する機密情報を活用する能力を持っている。

 

彼に匹敵する企業や政府は存在しない。そのため懸念が高まっている。彼の不規則で個性的なスタイルは、世界中の軍や政治指導者をますます不安にさせているのである。

 

ウクライナでは、いくつかの懸念が現実のものとなった。マスク氏は戦争中、何度もスターリンクへのアクセスを制限した、と事情に詳しい関係者は語る。

 

ある時は、ロシアが支配するクリミア付近でスターリンクをオンにしたいというウクライナ軍の要求を拒否し、戦場の戦略に影響を与えた。

 

「スターリンクがなければ、我々は飛ぶことも通信することもできない」と、ウクライナのある副司令官は語った。

 

戦線の変化に伴い、マスク氏はジオフェンシングと呼ばれるプロセスを使って、前線でスターリンクが利用できる場所を制限した。

 

スペースX社は、自社のサービスによって収集された位置情報を利用して、ジオフェンシングの制限を実施している。

 

スターリンクはウクライナのロシア支配地域ではサービスを提供していない。ウクライナ軍は秋にロシアが支配する地域を奪還したため、サービスを受けられないことがあった。

 

ウクライナの地図を見ると、スターリンクが機能していた地域はウクライナの支配地域に限られており、ウクライナ軍がロシアから奪還していた地域ではスターリンクは停止していた。

 

マスク氏は昨年、黒海に停泊するロシア船に爆発物を満載した海上ドローンを送り込むことができるというウクライナの要求を拒否した。

マスク氏は後に、スターリンクは長距離無人機攻撃には使えないと述べた。

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解説

まさにイーロン・マスク氏の胸先三寸でウクライナのロシアへの反撃能力が限定されます。

どの地域でスターリンクが使えて、どの地域で使えないかをコントロールすることによって、ウクライナ軍の行動を制限できます。

つまりウクライナ軍とロシア軍との境界線を決める力を有しているのです。

もちろん、彼の力はウクライナ戦争に限りません。

たとえば昨年、イランで反政府デモが発生した際、マスク氏は活動家たちが通信を維持できるよう、現地でスターリンクが利用できるようにしました。

イラン政府はスペースXが主権を侵害していると非難しています。

また中国政府はイーロン・マスク氏に対して中国内でスターリンクを稼働させないように強く要望しています。中国政府の情報統制が完全に崩れるからです。

情報通信の統制をしている国にとっては、イーロン・マスク氏のスターリンクは自らの権威基盤を揺るがす脅威でもあるのです。

現代においては、個人が原子爆弾をもっているような影響力でしょう――(この記事はメルマガ『在米14年&起業家兼大学教授・大澤裕の『なぜか日本で報道されない海外の怖い報道』ポイント解説』7月30日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をご登録ください)

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image by: Frederic Legrand – COMEO / Shutterstock.com

大澤 裕この著者の記事一覧

・株式会社ピンポイント・マーケティング・ジャパン 代表取締役社長  ・情報経営イノーベーション専門職大学 客員教授 ・法政大学大学院イノーベーションマネジメント研究科 兼任講師 慶應義塾大学を卒業後、米国バンカーストラスト銀行にて日本企業の海外進出支援業務に従事。カーネギー・メロン大学でMBAを取得後、家業の建築資材会社の販売網を構築するべくアメリカに子会社を設立。2000年、ピンポイント・マーケティング・ジャパンを設立。海外のエージェントとディストリビューターを使った販路網構築・動機づけの専門家として活動を行っている。2015年「中小企業が『海外で製品を売りたい』と思ったら最初に読む本」を、2017年「海外出張/カタログ・ウェブサイト/展示会で 売れる英語」をダイヤモンド社から上梓。

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