決して安くはない金額で販売されている、いわゆる国産ブランド米。しかしそれら全てが「正規品」と信じ込むのはあまりに危険と言わざるを得ないようです。今回のメルマガ『神樹兵輔の衰退ニッポンの暗黒地図──政治・経済・社会・マネー・投資の闇をえぐる!』では投資コンサルタント&マネーアナリストの神樹さんが、コメの産地偽装が事実上野放し状態である現実を暴露。その手口を詳しく解説するとともに、正真正銘のブランド米を確実に入手する方法を紹介しています。
魚沼産コシヒカリは生産量の30倍異常が流通。やりたい放題のブランド米の産地偽装
「大手スーパーで売っているモノだから安心!」と思っていたら、大間違いの現実が本当によくあります。
つい先年まで、「熊本県産」と称して、スーパーなどで販売されていた「アサリ」は、97%が中国産でした。
それが発覚して撤去されると、なんとスーパーの鮮魚売り場から、アサリそのものが消えてしまいました。そもそもホンモノの国産アサリは、ほとんど流通していなかったからです。
また、国産ウナギと称して、マラカイトグリーンの合成抗菌剤(日本の養殖では禁止)の養殖池にどっぷり浸かった中国産ウナギも「産地偽装」の国産表記で並んでいる──といった疑惑も尽きないことでしょう。
他にも夕張メロンや神戸牛、信州みそ、コーヒー豆や紅茶、大間のマグロ、関サバ、淡路の玉ねぎ……などなど、魚介類の生鮮品から野菜などの農産品にいたるまで、挙げればきりがないほどに、産地偽装はよく耳にします。
なお、正確には法の網にかかる「産地偽装」ではないものの、菌床栽培の「国産シイタケ」は、7割近くが中国産──というのは業界常識として有名な話です。
シイタケを原木や菌床ごと日本に輸入して、若干成育させた実績があれば、みんな国産で「〇〇県産」になるからです(ほとんどが菌床輸入)。
恐ろしいことに、これらシイタケ類からも時々、基準値を超える残留農薬(殺虫剤)が検出されています。
このように、「産地偽装」でなくとも、私たちが知らないところで、さまざまな「産地偽装に近いこと」が大っぴらに行われているのが日本の食品流通の実際のところなのです。
そして、主食のコメの銘柄にいたっては、そもそも産地偽装はやりたい放題でした。
これまた激安の中国産米までが登場して、それらがどっぷり混入していたりします。
中国産のコメの7割は、イタイイタイ病の原因物質といわれた重金属のカドミウムに汚染されている──と指摘されています。
国産のコメの銘柄にも、輸入された中国産の激安のコメが平気で混ぜられ流通していたりするのですから、ひどいものなのです。
何でこんなことがまかり通っているのか──今回はコメ流通のこうした闇をえぐっていきます。
さまざまな食品偽装がありますが、摘発されてニュースになるのは、ほんの一部です。
今回は、日本人のこだわりの強い主食である「コメ」について、見ておきましょう。
摘発の事例を見ると、実際には、偽装の手口が年々組織化され、バレないように巧妙化しています。
ネットで売られているコメでも、産地偽装の疑いのあるコメの流通は野放しで行われています。
ヤフオクで売られる「産直」と称するコメは非常にヤバい──と指摘する農業関係者も多いのです。
この記事の著者・神樹兵輔さんのメルマガ
あまりに多く販売されている「魚沼産コシヒカリ」の怪
なにしろ、ネット通販で売られている「コメ袋」という商品について眺めて見ただけでも、「魚沼産コシヒカリ」「新潟県産こしひかり」「〇〇県産コシヒカリ」「農家のおいしいコシヒカリ」……などといった銘柄別の特定キャッチコピーの標題が、あらかじめ印刷された「コメ袋」が大量に売られているのです。
袋の規格は、1キロ、2キロ、3キロ、5キロ、10キロなどと梱包量別に分かれており、これらが100袋、500袋といった単位でまとめて売り出されているのです。
こうした銘柄別の「コメ袋」に、テキトーに混ぜ合わせたコメを入れるだけで、特定の「銘柄米」が出来上がってしまいます。
あたかも「どんどんコメの産地偽装をおやりなさい」奨励されているかのような錯覚さえ覚えます。
これだけ大々的に特定銘柄別の「コメ袋」が売られている現状を見ると、日本全国のあちこちで「コメの産地偽装」が行われているのだなぁ……と想像するに難くないのです。
何しろ、一番人気の「魚沼産コシヒカリ」は、コメの産地偽装年に新潟県がDNA検査をしたところ、売られていた「魚沼産コシヒカリ」表記のコメの産地偽装%の商品に別品種のコメが混入していたことが判明しています。
人気の「魚沼産コシヒカリ」の表記でなくても、「新潟県産コシヒカリ」という表記の商品においても、100%の「新潟県産コシヒカリ」は販売商品の68%にすぎなかった──というのです。
「新潟県産コシヒカリ」の表記があっても、32%は別品種の混入が認められる商品だったわけです。
農水省傘下の食糧庁も、小売店や米穀卸商へのDNA検査などを実施していますが、毎回1割強の「産地偽装米」を摘発しています。「見た目」でわからないだけに、コメの産地偽装はやりたい放題であることがわかります。
そもそも魚沼産コシヒカリは、新潟県内の南魚沼市・十日町市・魚沼市・小千谷市・津南町・長岡市(川口)・湯沢町の5市2町(作付面積順)で獲れたコメのことを指しています。
この地区で収穫されたコメが、ホンモノの「魚沼産」と呼ばれるものなのです。
そして、この地区で収穫されたコメは、1989年以降、日本穀物検定協会の米食味ランキングで、28年連続で「特A」に認定され、国内最高評価を得たコメとなっているのです。
ただし──です。
この「魚沼産」と呼ばれる地域でのコメの収穫量は、全国の水稲栽培のコメ生産量のたったの1%にすぎません。
それなのに、スーパーの店頭においても、「魚沼産コシヒカリ」と表記されたコメがあまりにも多く販売されているのです。
流通量を調べた識者によれば、「魚沼産コシヒカリ」と表記されたコメの流通量は、実際の生産量の30倍以上に及ぶ──という指摘もなされているのです。
実に不思議なことが、起こっているわけです。
もちろん、こうした産地偽装は取り締まりの対象です。
産地偽装の疑義が生じた際にルートを辿れる「米トレーサビリティ法」をはじめ、「食品表示法」「景品表示法」「不正競争防止法」などで、刑事上の罰則までが明記されており、過去においても、数多の業者が摘発されています。
それでも産地偽装がなくならないのは、「バレないはず」という確信によって、「偽装」に次々手を染める悪徳な業者が後を絶たないからです。
実際、業者の従業員による内部告発での通報や、行政のDNA検査などの抜き打ちの調査でも徹底しなければ、産地偽装は巧妙にやればやるほど容易にわからないことでしょう。
何より、生産者や流通業者の良心にかかっている部分が大きいからです。
この記事の著者・神樹兵輔さんのメルマガ
史上最大の産地偽装米が発覚した事件!
2013年には、史上最大のコメの産地偽装事件が発覚しています。
なんと三重県四日市市の米穀卸売り業者の「三瀧(みたき)商事」が、この年の9か月間だけでも、4割もの中国産米を混ぜたコメ825トンを「国産米」と偽り、大手の食品加工業者やスーパーに販売して1億2,000万円もの差益を手にしていた――という事件があったのです。
実際には数年前から、「コメの産地偽装」に組織的に手を染めていたわけだったので、よくまあバレなかったものなのでした。
いったいどれだけ多くの「濡れ手で粟」の儲けを手にしていたのでしょうか。
そもそも日本のコメにおいては、高率関税で輸入米を事実上締め出しているはずなのに、何ゆえに激安の中国産米が混入されていたのでしょう。
これはWTO(世界貿易機関)の前身だったガット(関税貿易一般協定)のウルグアイ・ラウンド(多国間通商交渉・1986年~1994年)において、日本のコメ消費量の一定量(現在は約7%で77万トン)をミニマム・アクセス(最低輸入量)として加工用・飼料用として輸入することになったためでした。
輸入されるのは米国、タイ、中国、豪州産などです。
このうち最大10万トン以内を「主食用」としてSBS取引(政府が介在する輸入業者と国内卸業者の直接取引)が認めているため、かなり安い金額で取引される状況も生まれているのでした。
中国産の食品がキケン──といわれるのは、「毒餃子事件」や「マクドナルドの期限切れ鶏肉事件」もさることながら、中国の食品事業者や生産者のモラルが低すぎるところに帰結します。
もともと水不足で手を洗う習慣にも乏しく、昔から衛生意識は根本的に欠如しているからです。検査証明書などの偽造もお手のものでしょう。
また、こうした事情は、韓国産でも同様です。
韓国産の食材からは、ノロウィルスや大腸菌がしょっちゅう見つかっているからです。
産地偽装に手を染めるのは、「儲けたい」からに他なりません。
安いコメを仕入れて、高い銘柄価格のコメと称して売れば、差益が大きな儲けにつながります。
どうせ、消費者なんかにはバレないだろう──といった慢心が、こうした行為に走らせるのです。
ホンモノの魚沼産コシヒカリを求めるならば、信頼できる現地の米穀商と直接取引するよりないわけです。
いずれにしろ、大手のスーパーだから安心──とはならないのが現実なのです。
高額で購入した魚沼産コシヒカリなのに、妙に不味い──といった経験をされた方は、少なくないことでしょう。
用心するに越したことはないのです。
この記事の著者・神樹兵輔さんのメルマガ
image by: wonderpo99 / Shutterstock.com