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埼玉では病院周辺にクルド人100人の異常事態。難民受け入れで「ナイフ犯罪」激増のドイツは近未来の日本か?

EU加盟国内で最も多くの難民を受け入れているドイツ。そんな人道国家の治安が今、急激に悪化している事実をご存知でしょうか。作家でドイツ在住の川口マーン惠美さんは今回、昨年だけでナイフを用いた犯罪が2万件も発生したというドイツ国内の深刻な治安事情を紹介するとともに、その原因を解説。さらに難民の受け入れ推進を叫ぶ一部の日本人を、「周回遅れ」とバッサリ切っています。

プロフィール:川口 マーン 惠美
作家。日本大学芸術学部音楽学科卒業。ドイツのシュトゥットガルト国立音楽大学大学院ピアノ科修了。ドイツ在住。1990年、『フセイン独裁下のイラクで暮らして』(草思社)を上梓、その鋭い批判精神が高く評価される。ベストセラーになった『住んでみたドイツ 8勝2敗で日本の勝ち』、『住んでみたヨーロッパ9勝1敗で日本の勝ち』(ともに講談社+α新書)をはじめ主な著書に『ドイツの脱原発がよくわかる本』(草思社)、『復興の日本人論』(グッドブックス)、『そして、ドイツは理想を見失った』(角川新書)、『メルケル 仮面の裏側』(PHP新書)など著書多数。新著に『無邪気な日本人よ、白昼夢から目覚めよ』 (ワック)がある。

ナイフ犯罪の急増と移民犯罪グループ

ドイツでは昨年、ナイフを使った犯罪が約2万件だった。毎日、ほぼ60件が起こっている計算だ。ドイツ鉄道の発表では、昨年、列車内、および駅構内で起こった傷害事件は255件。一方、東京では一昨年、小田急線内で刺傷事件が起こり、10人が負傷したとして大騒ぎになった。日本人は、日本がいかに平和な国であるかに、あまり気づいていない。

アラブやアフリカなど、世界の多くの男たちは、日本の男がポケットにハンカチを持っているように、皆、ナイフを持っている。危険に遭遇する可能性が比較的高く、しかも警察や政府を信用していないから、当然、「自分の身は自分で守る」となる。興味深いことに、それは米国も同じで、こちらはナイフではなくピストル。しかも、女も例外ではない。ただ、接近戦の武器としては、ナイフはピストルよりも効果的だ。

しかし問題は、ドイツでは刃渡り8cm以上のナイフの携行が違法であること。ドイツと日本の共通点は、警察に対する信頼が大きく、皆が武装しないで歩くが、巷の危険はだんだん増えている。すでにドイツの都会の一角には、ドイツの法律になど一切興味を示さない移民たちの世界が形成されており、治安を極端に悪化させている。だからこの頃は、ドイツの若者の間でも、ナイフの傾向がトレンドとなりつつあるという。

ノートライン=ヴェストファレン州は、かつては広大な炭鉱地域を擁し、ドイツ産業の心臓部だった。それが今では、主に中東出身の、血縁で結集したマフィアのような犯罪グループの巣窟となっている。たとえばエッセン市には、70年代にレバノンの内乱を逃れてきたレバノン系クルドの移民が7,300人も住んでおり、今ではその一部が、プロフェッショナルな犯罪グループのメンバーとして暗躍する。彼らが根城にしている地域は、警察も足を踏み入れたがらない完全な無法地帯となっている。

6月15日、そのノートライン=ヴェストファレン州のエッセン市から20kmほど離れたカストロプ=ラウクセルという町で、レバノン系クルド移民とシリア系移民、合計50人ほどが衝突し、2人が重傷を負うという事件があった。衝突の原因となったのは、11歳のレバノン系の子供が、喧嘩で軽い怪我を負ったことだったそうだが、それが一気にナイフを持った男たちの戦いに発展するというのが、私たちの想像を超えるところだ。

しかも翌日、その報復として、200人ものレバノン系クルドがエッセン市のシリア・レストランを襲撃し、700人の警官が出動する騒ぎとなった。その時、レストランにはシリア人ばかりではなく、ドイツ人、トルコ人、それどころかレバノン人もいたというから、いい迷惑だ。警察は前日の捜索で、ピストルなど武器を押収していたこともあり、これらの事件を殺人未遂も視野にいれて捜査を進めているという。

エッセン市に住むシリア人は、2010年の時点では500人に過ぎなかったが、2015年、メルケル前首相が国境を解放して中東難民を無制限に入れた後、その数が膨れ上がり、昨年末には1万7,600人を超えた。レバノン系の2倍以上で、しかも、まだどんどん増えている。

シリア人の急増により、エッセン市では、レバノン系と、新参のシリア系難民の熾烈な勢力争いが始まった。レバノン系の方が血縁で団結しているのに比べ、シリア系は数が圧倒的に多い上、血縁ではなく国籍でまとまり、そこに他のアラブ人も加わっているため、勢力としても強大だ。つまり、レバノン系クルドとシリア系の抗争は終わりが見えない。

また、昨年の話だが、やはり同州のデュースブルク市で、クルド=アラブ系の犯罪組織と、ヘルズ・エンジェルズ(地獄の天使・元は米国の非合法組織)という凶暴で有名な暴走族グループ100名がぶつかり、少なくとも19発の弾丸が発射され、4人が負傷、15人が拘束されるという事件もあった。それも深夜の話ではなく、夜8時半という、市民が出歩いている時間の出来事だったから、物騒この上ない。

ところ変わってヘッセン州のギーセン市。7月8日、ここでエリトリア・フェスティバルが開催され、エリトリアの政府系と反政府系のグループが衝突し、1,000人の警官と放水車が出動する騒ぎとなった。その結果、拘束者が100人で、警官26人が負傷。

エリトリアは独裁国家なので、ドイツ政府は政治的に迫害されたとする人をすでに7万人も受け入れているが、このフェスティバルの開催者はなぜか政府寄りのグループだった。エリトリア政府が外貨稼ぎに、政府系の若者を難民としてドイツに送り込んでいる実態が垣間見える。いずれにせよ、そのため、フェスティバルを訪れた反政府組と争いが起こったわけだが、ドイツは援助したうえ、危険な内戦まで持ち込まれるのだから、踏んだり蹴ったりだ。

他にも書けばキリがないが、夏のドイツではここ数年、公営プールに移民系の若い男性が繰り出している。中東では、女性のビキニ姿など拝めないから、その見物も兼ねているのだろうが、それだけではない。プールを舞台に乱闘事件が相次ぎ、今年は、一時閉鎖されたプールまで出た。今後、問題地区のプールでは、入場時の身分証確認を導入したり、警備員を増やしたりするそうだが、広々としたドイツのプールは子供連れの憩いの場なので、これも腹立たしい状況だ。

一方、日本でも、埼玉県の川口市でクルド難民のトラブルが増えているという話を聞いた。現在、同市に登録されているクルド人は約3,000名。お隣の蕨市にもクルド人は多く、すでに“ワラビスタン”と呼ばれているほどだ。登録されていない人も加えると、かなりの人数になるのではないか。

ドイツでは、難民は夜、駅の周りなどに屯し、故郷では飲めないビールなどを手にしているのでちょっと怖いが、川口市では一部のクルド難民がコンビニの周りに屯していて女性に声をかけるというから、やはり怖い。7月4日には川口市で喧嘩があり、怪我人が出た。ただ、その人が運ばれた病院の周りに、あっという間に100人ものクルド人が集まったというから、これもドイツの様子と似ている。

難民申請中の人たちは、川口市では1ヶ月4.5万円の保護費がもらえるので、夫婦なら9万円で、プラス住宅補助が4.5万円。子供がいれば援助はさらに増える。しかも、難民審査に落ちれば、何度でも申請できるのだそうだ。審査中は働いてはいけない規則だが、結構、解体業などに従事している人も多いという。市民の税金負担はかなりのものだ。

クルドの一番のお祭りは春分の頃で、在日クルドの人たちも、毎年、戸外で、綺麗な民族衣装を着て祝う。数年前、その様子がある新聞のウェブサイトに紹介されていたのだが、掲載されていた写真を見てびっくり。ずらりと並んだ旗の中に、アブドゥラー・オジャランの顔のついた旗があったからだ。トルコ出身のオジャランは、クルドの民族自決を求めるPKK(クルディスタン労働者党)の創立者だが、PKKはテロ組織として、トルコはもちろん、EUや米国でも禁止されており、オジャランは現在、トルコで終身刑に服している。

以前、在日トルコ人が、「埼玉のクルド人たちは、祖国で人を殺して、逃げてきた人が多いですよ」と聞いたことがあった私は、PKKの旗を見て、それもまんざら嘘でもないかもしれないと思った。クルド支援の日本人らは、クルド人の難民申請が通らないと文句を言うが、PKKのクルド人を難民として受け入れれば、トルコ政府から抗議が来るだろう。スウェーデンがそれをしているため、トルコのエルドアン大統領にNATO加盟を拒まれたのは、つい最近の話だ(この問題は解決したらしく、スウェーデンはNATO加盟が決まった)。

しかし、同紙はそれを知ってか、知らずか、このお祭りを、祖国を思うクルド人のほのぼのとした記事にして、さらに、“保険証がなくて医者にも行けない”可哀想なクルド人に同情していたが、保険証がないということは、難民申請者ではなく、不法滞在者ではないか。日本政府は、こんな状態を自治体に丸投げしていてはいけない。

ドイツ人は、人道的でありたいという願望が強く、これまで全力を尽くして難民をサポートしてきたが、ここにきて、そのモチベーションは低下している。難民と、難民の進化形としての移民がもたらす経済的負担、そして、何より治安の悪化に、国民はすでに根を上げ始めている。ところが、社民党のショルツ政権は、来るものは拒まずの姿勢のままだし、連立与党の緑の党に至っては、凶悪犯の難民さえ、「祖国に戻せば死刑になる可能性がある」と、ドイツの刑務所で保護し続ける。

ちなみに、これまで移民受け入れの模範国だったスウェーデンやデンマークでは、180度の転換が図られており、理由はやはり、急激な治安の悪化だ。スウェーデンはこれまで、入国者のほぼ全員に永住権を与えていたが、来年からは受け入れ人数に制限をかけ、永住権も原則、与えなくする。その他のEUの国々も、今や難民をどうにかして減らそうと必死だ。

彼らが求めているのは、技能を持ち、言葉が通じ、労働力となる移民であって、不法難民が帰らずに居着いてしまった移民ではない。だから、ヨーロッパはいつものごとく、自分たちの国益に合うよう、ルールを変え始めたようだ。

日本には、難民受け入れをもっと進めようと主張する人がいるが、周回遅れである。そもそも、飛行機でやってくる人が難民であるはずはなく、本当の難民は故郷を離れられずに困窮している。それも知らずに人道を叫び、今さらEUの拒否した難民の受け皿にされてはEUの二の舞だ。外国人が多くなりすぎると、治安は不安定になり、文化や伝統が崩れ、国家は最終的に原型をとどめなくなる。それはEUが十分に証明してくれている。

当に難民を助けたいなら、イエメンやソマリアで子供を抱え、餓死しそうになっている人たちを、国連の組織を通して直接受け入れた方が良いと思う。難民や移民の受け入れに慎重であることは、外国人迫害や差別とは関係がない。日本人が、自分の国を大切に思っているかどうかの問題である。

プロフィール:川口 マーン 惠美
作家。日本大学芸術学部音楽学科卒業。ドイツのシュトゥットガルト国立音楽大学大学院ピアノ科修了。ドイツ在住。1990年、『フセイン独裁下のイラクで暮らして』(草思社)を上梓、その鋭い批判精神が高く評価される。ベストセラーになった『住んでみたドイツ 8勝2敗で日本の勝ち』、『住んでみたヨーロッパ9勝1敗で日本の勝ち』(ともに講談社+α新書)をはじめ主な著書に『ドイツの脱原発がよくわかる本』(草思社)、『復興の日本人論』(グッドブックス)、『そして、ドイツは理想を見失った』(角川新書)、『メルケル 仮面の裏側』(PHP新書)など著書多数。新著に『無邪気な日本人よ、白昼夢から目覚めよ』 (ワック)がある。

image by : Pradeep Thomas Thundiyil / Shutterstock.com

川口 マーン 惠美

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