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年金受給者が死亡した場合に遺族がもらえる未支給年金は「遺族年金」と何が違うのか?

生前に年金を受給していた人が死亡した場合に、生前貰えなかった年金を一定の遺族が請求によって受給する年金を「未支給年金」といいます。ところで、この未支給年金は、遺族年金と何が違うのでしょうか? 人気メルマガ『事例と仕組みから学ぶ公的年金講座』の著者で年金アドバイザーのhirokiさんが、その違いについて事例をあげながら詳しく解説しています。 

必ず発生する未支給年金の要件と、遺族年金受給者が必ずしも未支給年金を受給するとは限らない事例

1.年金受給者が死亡した際に必ず発生する未支給年金と、遺族年金との違い

人が亡くなった際に生じる年金は遺族年金ですが、それと同時に発生しやすい年金があります。それが未支給年金です。

未支給年金というのは生前に年金を受給していた人が死亡した場合に、生前貰えなかった年金を一定の遺族が請求により受給する年金を言います。

年金というのは本来は受給者本人名義でしかもらえない一身専属権がありますが(年金の受給権を他の誰かには渡せない)、死亡者が生前貰えなかった年金に対しては未支給年金というような例外を認めています。

まず、未支給年金というのはなぜ年金受給者死亡時に発生するのかというと、年金というのは年金の受給権発生月の翌月分から死亡した月分まで受給する事が出来ます。

例えば6月受給権発生した人は請求によりその翌月である7月分から年金が貰えますが、初回振り込みは大体3ヶ月くらいはかかるので早ければ9月15日振込(普通は8月15日に支払う7月分の1ヶ月分)か10月15日に7、8、9月の3ヶ月分が振り込まれます。

その後は特に何も無ければ原則通りの偶数月に前2ヶ月分ずつを支払っていきます。

そうすると後払いなので、例えば12月15日は10月分と11月分が支払われますので、12月分を貰っているわけではありません。12月分は翌年2月15日に1月分と一緒に支払われます。

もし12月中に死亡しても12月分の年金まで貰えます。

とはいえ12月中に死亡すると、それは2月に支払われるものなので死亡した本人はもう受給する事が出来ません。

よってそこは一定の遺族に請求して受給してもらう必要があります。年金は本人以外は貰えないものですが、一定の遺族に例外的に請求を認めています。

年金の支払いサイクルが後払いなので受給者死亡時に必ず発生するのが未支給年金なのです。

どういう遺族が受給できるのかというと死亡時点で生計を同じくしていた配偶者、子、父母、祖父母、兄弟姉妹、3親等以内の親族までのうち、一番上の順位者が請求により受給します。

なお、生計を同じくというのは同居とか、住民票が一緒とか別居でも何か合理的な理由(単身赴任、入院、就学など)があれば大体認められます。別居してて何にも関わらないようにしてるみたいなのは無理ですね。

あと、一定の遺族の年齢ですがそれは特に定めはありません。

年金で言うと例えば「子」というのは18歳年度末未満(障害等級2級以上の状態にある子は20歳まで)の事を指す事が多いですが、この未支給年金はそのような年齢の制限はありません。

父母や祖父母が遺族年金を貰う時は本人死亡時点で55歳以上で支給は60歳からという制限はありますが、そのような制限もありません。

よって、遺族年金の一定の遺族関係と未支給の遺族関係は少し異なる事に注意しないといけません。

余談ですが「子」は死亡者本人の実子か養子でなければ貰う権利はありません。

※ 補足

遺族年金は本人死亡時に生計を同じくしていた一定の遺族(配偶者、子、父母、孫、祖父母)がいて、死亡時の請求者の前年収入が850万円未満(もしくは所得が655.5万円未満)でないといけません。

生計同一とその収入を合わせて、生計維持関係といいます。遺族年金は本人死亡時に生計維持されていた場合に、請求により受給する事が出来ます。

なお、夫や父母祖父母が受給するには本人死亡当時55歳以上でなければいけません(原則として60歳から支給)。子や孫の場合は18歳年度末未満(障害等級2級以上の場合は20歳到達日まで)でないといけません。

未支給年金とはこのように明確な違いがあります。

もう一つ、3親等以内の親族というのがありますが、これは平成26年4月改正からここまでの遺族が対象となりました。

それまでは兄弟姉妹まででしたが、高齢化によりお嫁さんが亡夫の親を介護してたのち看取るとか、甥姪と一緒に暮らすというようなケースもあるのでそれを考慮されたのでしょう。

範囲は広くなったものの、大半は上位順位者の人が請求する事がほとんどです。
上位の請求者が居ると、下の順位者の請求権はありません。

このように亡くなった方が受け取れなかった年金を、遺族が受け取るのが未支給年金です。

年金受給者死亡の際は遺族年金の請求の時に一緒に未支給年金もという事は多いため、大体はセットで考えていたほうがいいですね。

という事で、1つ事例を考えてみましょう。

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2 .遺族年金と未支給年金発生

〇昭和26年5月12日生まれのA夫さん(令和5年は72歳。令和5年8月14日に死亡とします)

● 1度マスターしてしまうと便利!(令和5年版)何年生まれ→何歳かを瞬時に判断する方法
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● 絶対マスターしておきたい年金加入月数の数え方(令和5年版)
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家族は近所に住んでる子(50歳)と、施設で暮らしていた94歳の母(A夫さんは時々訪問)。なお、母の施設入居のためにA夫さんは経済的援助をしていました。

15歳年度末の翌月である昭和42年4月から昭和58年9月までの198ヶ月間は厚生年金に加入しました。この間の平均給与は45万円とします。

なお、20歳になる昭和46年5月からは国民年金同時加入とみなし、昭和58年9月までの149ヶ月間が基礎年金に反映。

昭和58年10月から昭和62年2月までの41ヶ月間は国民年金保険料全額免除(老齢基礎年金の3分の1に反映)。

昭和62年3月から平成6年3月までの85ヶ月間は海外に居住(カラ期間になる)。

帰国し、平成6年4月から平成15年3月までの108ヶ月間は未納。

平成15年4月から60歳前月の平成23年4月までの97ヶ月間は再度厚年に加入。
この間の平均給与は38万円とします。

A夫さんは60歳からの厚生年金受給ができますが、それは割愛して65歳から死亡時まで受給していた年金を計算します。

よって、死亡時までの年金総額は1,346,775円(月額112,231円。偶数月に224,462円)を貰っていたとします。

3.誰が遺族年金と未支給年金の請求者になるのか

さて、A夫さんは令和5年8月14日に死亡したのですが、年金受給者の死亡なので一定の遺族が遺族年金や未支給年金を請求する可能性があります。

まず2人のA夫さんとの生計同一関係を見てみましょう。本人死亡時に家族が同居であれば特に難しく考える必要は無いのですが、ちょっと2人とも別居でしたよね。

A夫さんを月数回は訪問していた子(50歳)とA夫さんの母94歳(施設で暮らしている)で、2人とも収入は850万円未満でした。

ア.まず子ですが、A夫さんと「別居」はしていたもののA夫さんへの訪問があり、身の回りの世話などを毎月していたとします。
よって生計同一関係ありとします。

イ.A夫さんの母(94歳)が「別居」の場合は「住民票は違うけど同居してた」とか、もしくはA夫さんからの「生活費や医療費などについて生活の基盤となる経済的援助があった場合」に生計同一とされます。

別居中なのが「配偶者や子」の場合は、A夫さんから生活の基盤となる経済的援助があった…までは求めません。

余談ですが、「配偶者と子以外」の生計同一において、遺族となるのが「別居中」の父母、孫、祖父母、兄弟姉妹の場合は住民票は違うけど実態は同居とか、もしくは死亡者から生活費や医療費などについて生計の基盤となる経済的援助が行われていた時に生計同一と認めます。

あと、経済的援助がどのくらいの金額なのかは規定は無いですが、もし死亡者からの援助が無いと生活に支障をきたす程度のイメージです。

A夫さんは母の施設生活のための経済的援助をしていたとして、母とは生計同一関係ありとします。母の収入は850万円未満を満たし(収入要件)ていたので、生計同一関係と収入要件の両方を満たし生計維持されていたとします。

4.遺族の順位と、年金受給者死亡による遺族厚生年金

次に、未支給年金と遺族年金の一定の遺族の順位はA夫さんの子から母の順なので子が上です。

ちなみに遺族年金は「子」は18歳年度末超えてるのでそもそもの請求する権利が無いため、母のみが受給権者になりえます。

未支給年金には「子」の年齢制限がないので、子の順位が上となります。上の順位である子が未支給年金請求者になるので、母は未支給年金を請求する権利がありません―― (メルマガ『事例と仕組みから学ぶ公的年金講座』2023年7月26日号より一部抜粋、続きはご登録の上、7月分のバックナンバーをお求め下さい。初月無料です)

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image by: Shutterstock.com

年金アドバイザーhirokiこの著者の記事一覧

佐賀県出身。1979年生まれ。佐賀大学経済学部卒業。民間企業に勤務しながら、2009年社会保険労務士試験合格。
その翌年に民間企業を退職してから年金相談の現場にて年金相談員を経て統括者を務め、相談員の指導教育に携わってきました。
年金は国民全員に直結するテーマにもかかわらず、とても難解でわかりにくい制度のためその内容や仕組みを一般の方々が学ぶ機会や知る機会がなかなかありません。
私のメルマガの場合、よく事例や数字を多用します。
なぜなら年金の用語は非常に難しく、用語や条文を並べ立ててもイメージが掴みづらいからです。
このメルマガを読んでいれば年金制度の全体の流れが掴めると同時に、事例による年金計算や考え方、年金の歴史や背景なども盛り込みますので気軽に楽しみながら読んでいただけたらと思います。

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【著者】 年金アドバイザーhiroki 【月額】 ¥770/月(税込) 初月有料 【発行周期】 毎週 水曜日 発行予定

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