日々の気づきや気になったこと、心に留めておきたいことをノートやメモ帳に書く。いつか読み返すことで何かの役に立つとわかっていても、読み返すには決意や踏ん切りが必要なようです。メルマガ『Weekly R-style Magazine ~読む・書く・考えるの探求~』著者で、「知的生産」に役立つ考え方やノウハウについて探究を続ける文筆家の倉下忠憲さんは、ノートがいっぱいになって、新しいノートに移行するときが「読み返し」の適切なタイミングと考えます。そして、どんな心構えで読み返すのが面白く、かつ効率がいいかを伝えています。
書いたノートを読み返す
カバンに常駐してあった無印のA5ノートが、いよいよいっぱいになりました。すでに新しいノート(セブンイレブンのノート)は準備できているので、移行のタイミングです。
おそらくこのときが、「書いたノートを読み返す」うえでもっとも適切なタイミングでしょう。これを逃すと、その動機は迷宮の中を彷徨いはじめ、永遠に見つけることができなくなります。
とは言えです。書いたノートをしっかり読み返すのって、なかなか難しいのです。ちょっとした空き時間にぱらぱらノートを読み返すくらいなら手軽であり、いっそ楽しみでもあるのですが、丸々一冊書き終えたノートを「よし、読み返すぞ!」と意識的になると途端に二の足を踏みはじめます。たぶん、GTDにおけるレビューも似たようなものでしょう。やった方がいいのはわかっているのに、あと一歩が踏み込めません。おそらく、気負いすぎているのでしょう。
そこで、もっと気楽にやることにしました。ざっと見返すだけでいいと決めたのです。加えて、「見返すこと」を目標にするのではなく、「ノートを書くこと」を目標にしてみました。何かを作り出すことをターゲットにしたのです。
● 2023年8月1日のノートの読み返し – 倉下忠憲の発想工房
最初に上記のページを作り、ノートを読み返しながら気になった部分をピックアップしていきました。あくまで「ざっと見返す」行為なので、細かく取り上げたりはしません。今この時点において、もう一度考えたい対象があればそれを拾い上げる、くらいの心持ちです。
実際読み返してみると、面白い記述はいくつも見つかります。ただそれは「ログとして」面白いものです。「ああ、こういうことを考えたな」的面白さであって、現時点での知的好奇心的面白さではありません。そうしたものは、上記のページには取り上げませんでした。それをやりはじめたらキリがないからです。
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読み返しているこのノートそのものは、即座に捨てるわけではありません。必要に応じてスキャンすることもあるでしょう。よって、再度読み返したくなったら、ノートそのものを読み返せばいいわけです。この時点ですべてを事細かく取り上げる必要はありません。それよりも「現時点」の私の関心に触れるものだけを取り上げて、Scrapboxに書き留めておく方が有用でしょう。
で、実際やってみたらそこまでの時間はかかりませんでした。せいぜい15分くらいでしょうか。
だいたいにおいて、「本格的なレビュー」というのはいかにも時間と労力がかかりそうであり、そのコスト予測が行為の着手をためらわせてしまうわけですが、今回のような「ノートを読み返して、ノートを書く」くらいであれば、小さいブックレットの読書メモを作っているような感覚で取り組めることがわかりました。これは大きな発見です。
どうも昔から情報貧乏性とでも呼べる性質があり、「大切そうなものはすべてピックアップすべき」という心理を持っていたのですが、結局その心理によってノートの見返しがうまく促進されていなかった状態があります。今回の発見は、そうした心理を少しは動かしてくれそうな予感があります。
(メルマガ『Weekly R-style Magazine ~読む・書く・考えるの探求~』2023/08/07号より一部抜粋)
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