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西武池袋本店で31日に終日ストライキ決行。なぜ日本より米国はストが10倍も多いのか?

百貨店関連で最近話題になっている「ストライキ」。ついにそごう・西武の労働組合(労組)は31日、西武池袋本店にて終日ストライキを決行すると発表しました。実は、アメリカのほうが日本よりも「10倍以上」もストライキが多いのだとか。その理由と違いは一体どこにあるのでしょうか。メルマガ『次世代ニューノーマルに売れるサステナブルビジネス~第3の持続可能なビジネス 全貌解説!!』が詳しく紹介しています。 

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米国ではストライキは当たり前?! ストライキ権行使は会社に持続可能な経営を促すのか?

皆様、大変ご無沙汰しています。猛暑が続きますが、いかがお過ごしでしょうか?

全国平均の最低賃金が初めて1,000円を超えたこの機会にということで、クライアントの社労士の方から要望があり、「最低賃金1,000円台で会社は利益を生み出せるのか?」という限定公開セミナーを開催しました。

セミナーの冒頭で私が参加者にお伝えしたのは。これまでビジネスモデルコンサルタントとして、日本企業に紹介し、解説した米国優秀企業の経営者が、異口同音、最低賃金は時給15ドル、近い将来20ドルになるべきだと語ったことです。

なぜ米国の優秀企業の経営者は、ここまでの最低賃金をコミットできるのでしょうか?その理由は、ずばり日米では雇用契約が異なるからです。

米国では時給で働く労働者が多く、人件費が変動費になります。その結果、従業員に時給ベースで役割を明確にし、働いてもらえれば、会社は時給ベースで働いてもらう仕組み=ビジネスモデルを構築さえすれば、利益を生み出せるのです。

米国企業のビジネスモデル=儲かる仕組み、とは、業種業態によりますが、時給ベースの雇用契約で、季節による売り上げの変動などを見ながら、人件費を調整(雇用調整も含む)することで、収益化することなのです。

今号では、日米の賃金格差は会社のビジネスモデルの違いであることを背景に、直近話題になっているストライキにフォーカスし、時給契約の是非に照らし合わせ、ストライキが日本企業に持続可能な経営を促す?のか?について、日本の労働組合の役割も含め解き明かしたいと思っています。

題して、「米国ではストライキは当たり前?!!ストライキ権行使?が会社に持続可能な経営を促すのか?!」です。次世代に向けて支持される日本の会社は雇用契約のジョブ型を見据え持続可能がビジネスモデルとなるのか?について解説しています。是非、ご一読ください。

なぜストライキするのか?その目的とは?日米を比較する

ストライキとは、労働者が労働条件の改善・維持などの要求を貫徹するため、集団的に労務の提供を拒否することを指します。

日本では1974年オイル・ショック後の不況から企業による人員整理が頻発したことを受け、ストライキの件数は半日以上のストライキで5,197件とピークとなり、その後減少、2010年代には半日以上のストライキは38件と2けたになりました。

一方米国では、2022年でストライキは417件と日本の10倍(日本の2010年代との比較ですが)です。直近の米国の労働人口1億6,669万人に対して日本の労働人口6,860万人ですから米国は日本の倍の労働人口規模で、ストライキの件数だけで見ると日米で10倍も違うことになります。

なぜ米国は日本と比べてストライキが多いのでしょう?それは、会社は資本家のもので、従業員は資本家に労働を提供しているという構図だからです。

日本でも29年の大恐慌時には労使対立が起こり、企業別組合(特定の企業や事業所ごとに、その企業の従業員のみを組合員とする労働組合)が主流となります。

近年は、企業別組合と会社の間で労働者が、他国のように工場から工場へ横に移動せず、一度就職したら、その会社の従業員として、年功賃金と退職手当を目的に、企業内の福利施設を誇りとして終身雇用されている、家族のような縦の労使関係が形成されたため、結果、組合と会社は対峙しませんでした。

一方米国でも29年の大恐慌のあとに労働組合を結成する機運が高まりますが、企業別組合は結成されませんでした。なぜなら、鉄鋼王カーネギーや石油王ロックフェラーも、生産拠点を一極に集中させ、日本では比較にならない一工場で10万人以上の雇用を生み出す巨大工場を人質にとることで、労働組合が企業別では到底対抗できない体制をつくりあげました。

このように米国では資本家VS労働者の図式が明確になり、ストライキは労働者の権利でもあるという認識も世の中に広がり、ストライキは人権を死守するために不可欠だと大衆も認める環境ができていきます。

ストライキの効果を検証する 米国の事例から

米国では、資本家に対抗できるべく、規模を最大化した産業別組合(職種・熟練度に関係なく、同じ産業に従事する労働者によって、企業の枠を超えて組織される労働組合)を結成し、経営陣にモノ申す存在となっていきます。

では、資本家と対峙する産業別組合のストライキが米国でどのような結末を迎えたか?見てみましょう!

2011年米国の大衆デパートメイシーズは旗艦店(そごう西武の池袋のような売上高を稼ぎ出すお店ともいえる)を含む、ニューヨークの4店舗で4,000人の産業別組合に属する組合員が、直近の同社の売り上げ増の収益を労働環境改善に使うべきだと1972年のデパートで初めてのストライキ実施をにおわせ、2006年合意の雇用契約が一向に更新されていない件について、経営陣に提言しました。

交渉の中身は、賃金(時給)、週労働時間(福利厚生、健康保険が適応されるための週労働時間の短縮)です。

メイシーズの経営陣の回答は、デパートの優良企業である自社のプライドをかけ、5年間新たな労働条件で更新することに合意します。

2011年はリーマンショック後の景気後退の最中であったことを考慮すると、米国ではストライキが伝家の宝刀になっているのがわかります。

もし日本の企業別組合がストライキを実施したとしたら?ストライキ行使権の行使=ストライキの実施は米国のように世の中が後押しした世の中をよくするための伝家の宝刀だったと言われるでしょうか?

ストライキが持続可能な経営を促す?としたら!?会社は誰のものになるのか?

今の日本の労働組合が、ジョブ型に移行するための制度(時給で支払う公平で平等な制度)を確立しない会社を相手に、会社は従業員のものであると現場従業員の想いをストライキ行使権という切り札の行使をにおわせ労働者の権利を主張したら、会社の存続を第一に考える経営陣には、現場従業員の想いは届かず、
その結果、日本の労働組合には米国のようにストライキ実施の大義名分がないことが露見しストライキ行使権は伝家の宝刀にならない可能性は大です。

上述のように日本企業のストライキ行使権が、伝家の宝刀にならないと言い切れるのは日本の労働組合が、会社は従業員のものという前提に立ち、経営陣にストライキ実施をにおわせ交渉を行っているとしたら、の話です。

資本主義国家の日本ですから、会社はもちろん株主のものです。

しかし、日本の組合が、会社は世の中のものでもありそうなれば顧客は会社を支持する=持続可能な経営が可能になる!と経営陣に提言できたとしたら米国流ストライキとは異なる日本流ストライキの実施をにおわせることに組合が存在する大義が発生するでしょう。

持続可能を標榜する会社には、その将来性を見込んだ投資マネーも勿論流れ込みます。

労働組合には経営陣に経営戦略を提言することはできません。が、今回のストライキ行使権というカードをどう切るか?カードを切らなくても、カードを切るとにおわせた先に世の中が、納得する大義が存在していることを日本では30年ぶりのストライキの実施が示唆しているのです。

image by: Shutterstock.com

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日本の上場企業トップと同行し米国優秀企業を紹介した米国ビジネスモデルコンサルタントが、そのトップだけが持つ独自の視点で利益を生み続ける現場演出から分析。日本の優秀企業が、米国企業から導入し、顧客を喜ばせた「オンリーワンになる法則」を事例で解説。<少量生産・高付加価値を可能にする3rdビジネス>を発信する

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【著者】 清水ひろゆき 【発行周期】 不定期

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