西武池袋本店で予告通りストライキ決行。上がらぬシャッターに貼り紙、スマホで撮影する人も…ヨドバシ開店に賛否【現地ルポ】

2023.08.31
by gyouza(まぐまぐ編集部)
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セブン&アイ・ホールディングス(HD)傘下の百貨店大手「そごう・西武」の労働組合(労組)は31日、午前0時から西武池袋本店で終日ストライキに突入した。同店は全館で終日休館となる。百貨店としては1962年の阪神百貨店以来、実に61年ぶりのストライキ決行となった。今回のストライキは、セブン&アイHDによる「そごう・西武」の売却計画を巡って、同社と労組が対立したことによるもの。平日の朝、開店時間にシャッターが開かないままの西武池袋本店の現地を取材した。

貼り紙を見つめる通行人、スマホで撮影する若者…

31日午前、池袋駅構内の西武百貨店池袋本店の入り口は、すべてシャッターが降りていた。開店時間の午前10時を過ぎても一向に上がる気配はない。そごう・西武の労組によるストが決行されたためだ。

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開店時間になってもシャッターが降りたままの西武池袋本店

報道によると、労組は28日に同社へ「スト実施」を予告、セブン&アイが売却を最終決定しなければストを回避すると伝えていたが、30日になっても同社の方針に変化が見られないため、ストに踏み切った。

貼り紙を不安げに読んでいた男性は、首をかしげながらその場を立ち去った。その後ろから普段着の若者が、スマホを片手にシャッターと貼り紙を撮影したあと、近くで待っていた友人と合流して談笑しながら雑踏に消える。そんな光景が、わずか10分の間に何度も繰り返されていた。

池袋駅構内にある西武池袋本店の告知を表示する液晶モニターには、ストライキによる臨時休館を伝える貼り紙と同様の文字が並んでいた。道ゆく人は、このモニターにも足を止め、スマホで撮影して立ち去ってゆく。

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西武池袋本店の前には、貼り紙と同じ文字がすべての液晶モニターに掲示されていた

今回のストライキは、セブン&アイHDが米投資ファンドに「そごう・西武」を売却することに決めたことで決行された。今後、米投資ファンドは「そごう・西武」が持っている池袋、渋谷、千葉の不動産を、提携先のヨドバシカメラに売却する計画だと報道されている。

「セゾン文化」発祥の地、終焉へ

幼少の頃から池袋の街で過ごし、西武百貨店を利用してきたという50代男性会社員は、この「西武ヨドバシ化」について、こう語った。

「昔の西武池袋には、セゾン美術館やギャラリーが、リブロブックセンターには“アールヴィヴァン”や“ぽえむぱろうる”等のアートや現代詩の店があり、詩人でもあった堤清二社長(当時)によって培われた、いわゆる“セゾン文化”の発信地で、池袋はあらゆるカルチャーの最先端をゆく場所でした。それが、美術館やリブロの閉店によって、少しづつ文化の影が薄れてきて、今は見る影もありません。そんな西武百貨店がヨドバシカメラに変わると聞いて、愕然としましたね。まあ、西武がドン・キホーテになるよりはマシと思うしかないのかもしれませんが。これも時代の流れですね」

一方で、ヨドバシを歓迎する声もある。30代の女性会社員は、駅に直結した家電量販店の開店に期待しているという。

「雨に濡れずに家電量販店へ行けるのは、池袋に限って言えばメリットしかないですね。今はヤマダ電機もビックカメラも、そしてドンキも、一度は駅から出ないと行けませんから。たとえ雨が降っていなくても、今後はきっとビックやヤマダには行かなくなると思います」

記者が池袋から帰ろうとした時、西武池袋本店の外で労組によるデモが始まった。

労組「ご迷惑をおかけします」「クロージングは時期尚早」

労組の配布していたチラシによると、雇用および事業継続について協議を進めてきたが、団体交渉中にも関わらず「雇用維持」と「事業継続」に確証が持てないまま同社が株式売却を決定したという。8月に入って4回の団体交渉をおこなっただけで株式譲渡完了(クロージング)は時期尚早であり、継続協議を求めてストライキ予告を行ったが、クロージングの手続きを行うとの判断に至ったため、労組として手続きを踏まえたうえでストライキの実行に至った、としている。

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明日9月1日(金)、同店は平常通り営業するという。

【関連】西武池袋本店で31日に終日ストライキ決行。なぜ日本より米国はストが10倍も多いのか?

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