歴史的大失態。ハマスの「イスラエル攻撃」に回った米バイデンの9000億円

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世界中の人々に衝撃を与えた、パレスチナのガザ地区を実効支配する「ハマス」によるイスラエルへの大規模な攻撃。民間人を人質に取るというハマスの卑劣な手口には各国から大きな批判が湧き上がっていますが、なぜこのタイミングで彼らはイスラエル攻撃に踏み切ったのでしょうか。今回のメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』では米国在住作家の冷泉さんが、考えうる原因を3つ上げ、それぞれについて詳しく解説。さらに今後の展開について、最悪のシナリオを含めた自身の見立てを記した上で、「単に中東の事件に終わりそうではない」との見解を示しています。

※本記事は有料メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』2023年10月10日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

国際社会に動揺を与える。誰がハマスにイスラエル攻撃をけしかけたのか

2023年10月7日、ガザ地区を実効支配している武装行政集団「ハマス(ハッマース)」により、イスラエルに対する大規模な奇襲攻撃が実施されました。具体的には、5,000発とも言われるロケットによる大規模な飽和攻撃、そしてこれと同時に多数のゲリラを越境させてイスラエル領内に侵入させて、陸上からの攻撃と多数の誘拐を行っています。

現時点でアメリカで報道されている数字としては、

  • イスラエル側:死者800名以上、負傷2,506名、誘拐被害150名以上
  • パレスチナ側:死者573名、負傷2,992名以上、家を追われた難民12万3,000名以上

となっています。具体的には、ガザとイスラエルの境界から5キロという場所、具体的にはレイムというキブツ(入植地)に近い砂漠の中で行われていた音楽祭(トランス・ミュージックが主体の週末通しで行われる大規模イベント)への攻撃が行われました。明らかにこのイベントを狙ってミサイルが撃ち込まれ、同時に簡易なパラグライダーなどで越境した兵士が陸上から侵入しました。

イベント自体は3,500名程度が参加していた模様ですが、少なくとも250の遺体が確認されていると同時に、女性や子どもを含む多くの参加者が誘拐されているようです。

ハマスの攻撃は明らかにイスラエルと国際社会を震撼させるのが目的であり、徹底的な情報管理がされていました。また、この音楽祭への攻撃が示すように、過去20年間続いてきたガザ地区をめぐる、ハマスとイスラエルの紛争とは、全く次元の異なるものでした。具体的には、3点が指摘できます。

1つは、陸上からの越境です。ハマスは、ガザとイスラエルとの間に秘密のトンネルを沢山建設しています。これは生活物資の輸送ルートなど民生用のものもありますが、中には工作員をイスラエル領内に侵入させて破壊工作を行うためのものもあります。ですから、厳密に言えばミサイルの撃ち合いだけでなく、陸上からの攻撃をしたことはあります。

ですが、今回はガザ地区とほぼ同じ面積のエリアを、一旦はハマスの地上兵力で占領した形を取りました。これは21世紀になってからは初めてだと思います。手段としては、国境の鉄条網を切って突破、また軽飛行機(パラグライダーなど)による越境、事前に侵入させていた工作員との連動などです。

これは、ハマスとしても初の行動であり、もっと言えばイスラエル領に敵兵の地上からの侵入を許したのは、50年前の第四次中東戦争でエジプト軍の侵入を許して以来のことになります。ハマスとしては、それだけイスラエルを怒らせ、国際社会に動揺を与えたいという戦争目的があったということになります。

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