難しいイメージのある「投資」。それに勝つためのメソッドを、行動科学の視点から見出した一冊を紹介するのは、無料メルマガ『毎日3分読書革命!土井英司のビジネスブックマラソン』の著者、土井さんです。一体どんなことが書いてあるのでしょうか。
行動科学に基づく投資のルール⇒『富の法則』
ダニエル・クロスビー・著 モーガン・ハウセル・序文 児島修・訳 徳間書店
こんにちは、土井英司です。
本日ご紹介する一冊は、株式投資で勝つための、行動科学のメソッドを紹介した一冊。
著者は、行動ファイナンスの専門家であり、「注目すべき12人の思想家」(Monster.com)、「読むべき金融ブロガー」(AARPに)に選出された、ダニエル・クロスビーです。
序文を世界的ベストセラー『サイコロジー・オブ・マネー』のモーガン・ハウセルが書いています。
結局、行動科学の本なのかと思っていたら、予想以上に株式投資の実践的知識に触れていて、投資の良いヒントをいただきました。
ファイナンシャル・アドバイザーを付けることでリターンが高まることや、従来型の投資ポートフォリオよりもゴールベースの投資戦略を採用した方が長期投資に向く可能性、理論上、投資口座をチェックする頻度を12年に一度にすると、損失をまったく目にしなくなるなど、興味深い情報がいくつも紹介されています。
自身も資産運用をしている実践家のため、話が実践的で、あらゆるポイントについて、注意点やチェックリストがついています。
例えば、「資産バブル」かどうかを検証する場合については、こんな感じです。
1.バリュエーションが非常に高い
2.レバレッジが過剰である
3.貸出基準が緩い
4.ほぼ全世界で上げ相場である
5.ボラティリティが低い
6.リスク資産への参加率が高い
自分が今、しようとしている投資が正しいかどうか、見極めるためのあらゆる視点・チェックポイントが示されており、これは使える一冊だと思います。
また、著者の関心がよほど高いのでしょう、これまでに議論されてきたさまざまな投資法・理論の紹介と検証が行われており、これ一冊あれば、メジャーな投資本、投資理論のおさらいがほぼできてしまいます。
さっそく本文のなかから、気になった部分を赤ペンチェックしてみましょう。
投資の世界では、今日何が起こるかはわからないし、来週何が起こるかもほとんどわからない。1年後のリターンを予測するのも難しい。だが、25年後についてはもっと正確に予測できる
1900年から2013年にかけて、米国の株式市場では123回の調整局面があった。これは年に約一度のペースになる。それよりも大きな下落である弱気相場は、平均すると3.5年に一度発生している
SEIのメリッサ・レイヤーは、「ゴールベースの投資家はパニックに陥ったり、誤った情報に基づいてポートフォリオを変更したりする可能性が低い」と結論付けている
ダートマス大学のケント・L・ウォマック教授によれば、1990年初頭のアナリストは、「売り」銘柄を1件推奨するごとに、約6件「買い」銘柄を推奨していた。だが21世紀に入ると、売り1件に対して買いが50件近くに膨れ上がった
グレッグ・デイヴィスによれば、毎日証券口座をチェックしていると、41%強の確率で損失を目にすることになる
(中略)確率上、証券口座を確認するのを5年に一度にすると損失を目にする確率は12%程度になり、12年に一度にするとまったく損失を目にしないことになる
個人投資家にとって賢明なアプローチであると考えられているインデックス投資は、その根底に行動上のがんを抱えている。S&P500のような時価総額加重平均型インデックスを買うと、2000年にはそのうち50%近くをハイテク株で、2008年には40%近くを金融株で保有することになる
取引が容易かつ安価になり、金融ニュースが豊富になるにつれて、保有期間は大幅に短くなった。大した問題ではないと思うかもしれないが、保有期間とリターンに直接的な関係があり、忍耐強く保有し続ける人ほど大きなリターンが得られることは歴史が証明している
過剰なものは永久には続かない
企業の質をよく考慮せずに株価だけを見ていると、それが割高なのか割安なのかは決してわからない
原注、参考文献も入れると350ページを超えるボリュームですが、面白くてあっという間に読んでしまいました。
株式投資に関するこれまでの議論・研究が一気に読める、興味深い一冊です。
ぜひ読んでみてください。
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