多くの国民の期待も虚しく、小物議員と会計責任者らの立件にとどまった自民党のパー券裏金疑惑。巷間囁かれているような、検察と自民党との間に「取引」はあったのでしょうか。今回のメルマガ『有田芳生の「酔醒漫録」』ではジャーナリストの有田芳生さんが、安倍派「5人組」らが立件されなかったことをどう理解すべきかについて解説。さらに自派閥の解散に踏み切った岸田首相の「真の狙い」を考察しています。
「宏池会(岸田派)」解散で生き残りを図る岸田総理
裏金問題で安倍派「5人組」に東京地検特捜部の捜査の手は伸びるのか。本人たちも世間も強い関心を持ってきた。ところがNHK、毎日新聞、読売新聞などが断続的に否定報道を行った。
事務総長経験者たちではなく、事務局長を政治資金規正法違反(不記載)で立件するだけで、議員にまで及ばないというのだ。1月19日に立件されたのは実務関係者と2人の国会議員だけだった。
たしかにこの法律は実務者を対象とするもので、議員との共謀を示す明確な物証がなければ立件は困難とされてきた。1月18日の朝日新聞が江東区長選挙で柿沢未途議員が買収をしたことで逮捕、立件されたことで、否認から一転した背景を報じている。
柿沢議員はあるスタッフに現金提供などしていないと供述した。ところが柿沢議員がその人物と会食する直前にATMで現金を引き出す防犯カメラ映像があり、さらに出金記録まで示され、さらには「最後まで木村さん(有田注、木村弥生候補)の当選に向けて頑張りましょう」と書いたLINEも残っていた。
東京地検特捜部はここまで捜査する。安倍派「5人組」については明白な物証がなかったと理解するしかない。ただし政治資金規制法で立件できなくとも脱税は明確なので、そこまで踏み込むのかどうかは、まだ注目される。
岸田派の元会計責任者を立件、二階俊博元幹事長の秘書を立件、元会計責任者を在宅起訴する方針だが、ここでも議員にまでは及ばない。安倍派についても26日の通常国会までに結論を出すべく詰めの捜査が続いている。最終的な結果は不明だが、いずれ安倍派「5人組」たちには検察審査会への申し立てが行われる。
11人の委員(国民から任意で選ばれる)のうち8人が「起訴相当」とすれば、検察は再捜査義務が生じる。それでも不起訴にすれば、二度目の「起訴相当」を議決することもできる。そうなれば強制起訴され、裁判になる。時間はかかるがまだまだ裏金問題は続いていくのだ。
裏金問題に関わって東京地検特捜部は逮捕した池田佳孝議員と統一教会の関係についても捜査をしていた。教団の会合にしばしば出席し韓鶴子総裁を持ち上げていたからだ。
資金の流れはないかが関心だった。さらに池田議員が「兄貴」と慕っていた萩生田光一議員と統一教会マネーの関係だ。
結論からいえば巨額な資金援助があった証拠は出てこなかったが、パーティ券は購入していたという。
池田議員は公判があるので、裁判で統一教会問題が指摘されることもありうる。
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