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甘いどころか加害者天国。いじめた生徒が処罰されない日本の学校という異常空間

2013年に「いじめ防止対策推進法」が施行されたものの、一向に改善が見られないいじめ問題。被害者に対する嫌がらせや学校サイドの隠蔽行為は、むしろより悪質化していると言っても過言ではありません。そんな現状を取り上げているのは、現役探偵で「いじめSOS 特定非営利活動法人ユース・ガーディアン」の代表も務める阿部泰尚(あべ・ひろたか)さん。阿部さんはメルマガ『伝説の探偵』で今回、自身の活動を通じて強く感じた「いじめに対して激甘」な教育現場や役所の呆れた現状を紹介するとともに、かような「いじめ放置国家」を改善するため、私たちが取るべき行動を提示しています。

※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです

日本は加害者天国社会

いじめ相談の量は少なくなることはない。とにかく多い。そして、増減を時期で予想できる時期はあるが、できるのはそこまでだ。

ここ数か月、私は深夜に吐くほどの腹痛に襲われたり、寝ているのか倒れたのかわからないようなスイッチオフ状態を繰り返しながら、ほとんど休むまずに相談対応をしている。

激増というより微増だが、その深刻さという質は厳しいものが多い。

さて、今回は相談から見る傾向は、被害者が適応障害やそれに近い状態となり、教室に入れない、不登校になっているもしくは、五月雨登校や保健室登校になっている。

※五月雨登校とは、行ける日もあれば行けない日もある不安定な状態のこと。

一方で、学校側はいじめ自体を認知し対応をしている模様であるが、その態様は、まるで川からあふれ出る洪水をコップでバケツに移しているようなものだ。

やっていると言えばやっているが、それで何の効果があるのだと問われれば、答えようもないだろう。結果、理路整然と対策を求められれば、責められたと感じた学校は逆ギレするのだ。私だって一生懸命やっているんです!とキレる教師が多いこと多い事…世間ではプロセスは後回し、結果が求められるのだ。

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日本のいじめ対策は加害者が激甘

日本にはいじめ防止対策推進法がある、成立してもう10年を超えたが、未だに、施行から10年を迎えてどう変わった?みたいなことをテーマに話し合いが続いていたりするが、もうしばらくすれば11年経つ。

良かった点もあれば悪かった点もあるが、悪かった点を改善しようとした超党派の議連は座長試案という座長の暴走でとん挫した。

つまり、そのとん挫が今の混乱を助長したと言える。

※詳しくは「いじめ探偵が告発する『いじめ防止法』座長試案の許せぬ改悪部分

さて、いじめの加害者の処分処罰については、各校設置の「いじめ防止基本方針」や「校則」を参考にしてもらいたい。その理由は、学校には一定の自治があり、その処分などは学校に認められているからである。とはいえ、大まかなルールはある。

そのルールで言えば、「明確な処罰や不利益処分というものは存在しない」ということだ。

特に小学校中学校における処罰などはない。つまり、処罰を含めた対処がある諸外国のように、いじめの加害者には、こと日本においては、学校によって処罰を下されることはないのだ。

諸外国では退学はもちろん、刑に処せられる国もあるし、加害者に問題があるという理念から心理療法などを受けなければならないというルールもあるが、日本にはそういうルールがないわけだ。

これについては、ぜひとも立法機関によって研究でも進めて、決めてもらいたいところだが、そう動きは今のところ皆無と言っても過言ではないだろう。

つまり、日本では、加害者に激アマなのだ。

都内でいじめ自死が問題となったある市では、被害者がいじめを苦に自死した聞いた加害者が、ガッツポーズをしたと聞く。そして、計画より被害者が早めにこの世を去ったしまったと他の加害者にLINEした。その後何のお咎めもなく、その親は「うちの子は何もしてない!」と弁護士をなぜか雇ってガードさせて、保護者会ではありもしない被害家庭での虐待が疑われていると市教委と一緒に噂を立てた。

今ではきっと高校生くらいになっているだろう加害者は、当時の事をすっかり忘れ、アナウンサーになるんだと大学を物色しているという。

一方、当時いじめを隠ぺいした校長以下、担任、学年主任、教頭は出世し、校長は教育長に上り詰め、教頭は地域で最も良いとされている学校の校長になっている。少しだけ抵抗した養護教諭は、どこかに飛ばされた模様で、連絡すらつかないのだ。

後にいじめが認定されても、そのときには関係者がもうそこにはいないというほどの時間が過ぎているのだ。

つまり、日本は加害者に甘いというより加害者天国であり、隠ぺいすると出世するという極めて歪な環境にあると言っても過言ではない。正直者が馬鹿を見て嘘つきが出世し、世の中を動かしていると穿った見方もできるだろう。

現状を正確に把握することは何よりも重要なことだという意味で、2024年現在における事実は、いずれにしても「加害者はまず処分されない」(今のところ)と理解しなければならない。

相談者にはこれを言うといきなり怒り出す人もいるのだが、私も同様に、激アマ天国だと思ってその現状を何とかしようと声を上げている方なので、ちょっと困るわけだ。道案内を頼まれて、道を教えたら、遠いって怒られたみたいなものだ。

では、どうするか?が対策を立てる上での肝なのだ。

それには学校自体、クラス自体、部活自体の環境の情報がまず必要になってくる。例えば、厳しい部活であれば、いじめは一発退部の可能性もある。学校であっても、正しい校長がいれば、処罰はないにしろ教育範疇での更生を加害者は求められることもある。そうなれば、ある程度の証拠を整えて、いじめの事実を申告すればいい。

まあ、こういう判断ができる相談は稀な方だ。不登校になっていますという場合は、まずこの環境が緩いのだ。

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激アマなのはその世界だけ、世間は甘くない

それでも、証拠をそろえるのは最低限の対策だ。

一方で証拠を揃えても、それを判断する学校や教委がダメなら意味がないではないかという意見もある。確かにそうだ、彼らに判断させるかどうかも検討する必要があるが、物事を主張するのに、その論拠も根拠もないのでは、聞く価値もないとされる恐れすらある。

何をするにもその一歩は、証拠なのだ。

一方で、上に書いたように、判断する機関がダメならば、その労力すら無駄になるのではないかという考えはコスパ・タイパ重視の今の世の中であれば、よくわかるが、よく考えて欲しい。彼らに判断させない方法もあるし、それは私がすでに実証しているものもある。

それが報道と世間の判断だ。

例えば、ある部活で行われたいじめがあった。その部活は全国大会常連校で、他県からも生徒を集めてくる。こうしたケースでは、部活内でもいじめや非行は、全国大会の欠場などを意味するから、厳しく管理されていそうなものだが、その実逆の場合が多い。

つまり隠ぺいと圧力、場合によっては被害や告発側を退学にするという強権を発動させて問題を抑え込んできていたりする。

さらに地元のマスコミは、この部活や監督に取材をするなどして懇意だ。地元企業も議員も応援に回っており、OBにも有力者がいるとなれば、忖度が強い放送局や新聞社は事態を把握しても報道しない可能性がある。

この学校のケースもそうであったから、いじめの動画そのものを被害側生徒とその協力者が、SNS上に流し、インフルエンサーに直接頼むようにしたらどうかとアドバイスした。

彼らは必死であった。いじめが続けば精神が持たないから自主的に辞めることになる。真っ直ぐに告発してクビになった先輩もみてきた。いずれにしても、首になるか自主的に辞めるのかの二択しかこれまではなかったのだ。

対策は上手くいった。あるインフルエンサーがSNS上で取り上げると、次々にシェアが増えていった。特定班が動き、画面上に映っている加害者やコーチなどが特定されていった。それからしばらく遅れ、ネット上を巡回している報道のディレクターやワイドショーのディレクターがこの事態を取りあげて学校に問い合わせを始める。

映像という隠しようのない証拠があったからできた技なのだ。

これが、被害者の告白文面であったらどうだろう。ちょっと想像してみてほしいのだ。

危機管理が全体的に未達の日本である。

こうした田舎の力学のみで、御代官と越後屋レベルの対策しかもっていない学校では、記者らの質問に適切な回答ができないものだ。しどろもどろな疑いが残る言い訳を、当たり前のようにして、疑惑が確信へと至り、取材攻勢を受ける羽目になる。

地元企業の経営者も議員もバランス能力に長けているから、学校に守勢協力を求められても様子を見るものだ。

ちなみに私は危機管理会社のコンサルタント経験が有るし、今では専門の会社も持っているから、だいたいの手の内はお見通しでもある。

結果、SNSから火がついたいじめの証拠は、報道が取り上げ、世間を巻き込みながら、これまでの告発なども噴き出し、正されることになるのだ。

つまり、学校や教委が隠ぺいするなら、報道機関やSNSなどで世間に判断してもらえばいいのだ。

これを言うと、専門家界隈からも「阿部は破壊者だ」とか「加害者だって学生じゃないか、あいつは加害者の人権を無視する」などと言われる。好きに言ってくれ、と私は思うのだ。

実際、ZOOMの会議で、前室のようなところで待たされていた時、主催者側が、私の事を言い合っているのが聞こえてきたというエピソードもある。私を取り上げると、学校や教育委員会からの依頼が減るリスクがあるのだそうだ。「知るかバーカ」である。そういうのは、簡単に隠ぺいに協力する似非専門家の第一歩なのだ。

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現状を変える力

「加害者をきちんと処罰の対象とできればいいのに」というのは、願望だろう。現在の環境でこれが実現されているところは、皆無と言っていい。

そうなると、「被害者が転校して、加害者のうのうと同じクラス同じ学校に通うのは異常だ」という意見は、その通りなのだが、現在のところ、異常がまかり通っているということになる。

積極的に変えていくのならば、声を上げてより多くの仲間を集めて、現状を変えていく運動をする以外に他に方法はない。「おかしいよね?」と声を上げることは重要だし、声を上げると共感の証も多く得るだろうが、現状に甘んじ提示しようとしている圧倒的に多いその世界の住人らは、これを一種のトレンドとしか見ていない。

声をあげるのが単発なら、放置していけば次の話題が来てしまうのだ。そういう積み重ねで、物事は風化し、また同じようなことが起きて声が上がっても、また別の話題が来て次に移ってしまう。日本は失われた30年とか言われているが、同じような仕組みで風化と声上げの繰り返しでもあろう。

つまり現状を変えるには、声を上げるのみならず、上げ続けることが大事であり、声を上げながらも同志を募り、その輪を拡げていく必要があるのだ。

そして、それは現状を変える原動力になるが、基本中の基本であって、さらに対策が必要なのである。

ちなみに、私は渦中の元座長から、エビデンスを持ってきなさい、政治が動くほどのエビデンスがいじめを取り巻く環境を変えるには必要だと5年前に直接言われている。だから、少しづつであるが、そのエビデンスをため込んでいる。

いつか現状が変わる日を目指して(ぜひとも被害者の皆さん、関係者の方々にはご協力頂ければと思う)。

編集後記

今いじめ問題で話題になっている自治体の担当課に取材を申し込んだところ、全ての質問に「検討中」との回答をもらいました。以後連絡についての担当者についても「検討中」とあったので、きっとコピペ回答ですね。

そこで、関係する議員に協力してもらったのですが、(担当課長)「ああ、これ、たぶん裁判になるんで、何も答える気がないんです。だって、それも証拠になっちゃうでしょ」とのことでした。おいおい…(汗)です。

裁判になるだろうと思ったら、その対策で開示請求などにもまともに応じないとは、公的機関としての役割も法も守らないという宣言に近いのではないかと驚いた次第ですが、ああ、日本って放置国家…いや法治国家なんじゃなかったっけと思わざるを得ないことが多くなってきましたね。

残念です。

以前から私は、今のいじめは異常だよね?というマスコミさんからの取材に、こどもは大人世界の写し鏡のようなもの、異常さを取りあげる前に、大人社会の異常さを取り上げてタブーにメスを入れしっかりと報道としての職責を果たす方が先。大人社会が襟を正すべきだと言っています。

自治体がこんなこと平気で言えるのも、それ詭弁ですよねというのを政治家が平気で言うのも、それを擁護しちゃう御用達専門家が幅を利かせるのも、その異常がすべてこども社会のいじめに反映されているはずです。

だって、大人が間違ったことをやっていて、自分を棚に上げて、こどもだけを叱るって腑に落ちないではないですか。説得力ゼロだし。

私からすると、例えに使えるので、まあまあ利用させてもらっているわけですが、明るいのは株価だけかな。とか思ってしまいます。

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image by: Shutterstock.com

阿部泰尚この著者の記事一覧

社会問題を探偵調査を活用して実態解明し、解決する活動を毎月報告。社会問題についての基本的知識やあまり公開されていないデータも公開する。2015まぐまぐ大賞受賞「ギリギリ探偵白書」を発行するT.I.U.総合探偵社代表の阿部泰尚が、いじめ、虐待、非行、違法ビジネス、詐欺、パワハラなどの隠蔽を暴き、実態をレポートする。また、実際に行った解決法やここだけの話をコッソリ公開。
まぐまぐよりメルマガ(有料)を発行するにあたり、その1部を本誌でレポートする社会貢献活動に利用する社会貢献型メルマガ。

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