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なぜ、スティーブ・ジョブズはソニーの盛田昭夫を訪ねたのか?

経営者の皆さんはマネジメント書を多く読んでいますでしょうか。今回の無料メルマガ『戦略経営の「よもやま話」』では著者の浅井良一さんは、後悔せずに経営を行う方法として、ドラッカーや多くの成功した経営者たちの例を挙げながら解説しています。

リスク(機会)にチャレンジ。利益をあげながらニーズを満たす

本好きの経営者はマネジメント書から多くを学び、中でも実行力ある者だけが果敢に実践して、失敗を繰り返しながらも修正し成果を得ます。後悔しないで経営を行うには、書を読むか助言を活かすかまたはその両方をを行うかで、なぜなら一人の知恵や知識には限度があるというのは分かり切ったことであり、自力を超える法を知ることは当たり前の見識です。

松下幸之助さんは書は読まなかったのですが、あらゆる人から知識と知恵を集めて自身の経営判断の材料にしました。これを称して「衆知経営」だとします。リクルートの創始者の江副さんや、星野リゾートの星野さん、ソフトバンクの孫さん、さらにユニクロの柳井さんなどは経営書を漁り読み、自身の革新的な事業を行なうに際しての拠り所とし、大きな成果に結びつけました。当たり前と言えば当たり前で、他を多く活用するのが賢さなのでしょう。

マネジメントと言えばドラッカーなのですが、賢くなるための必読書です。ところがほとんどの社会人は、その語るところを学びません。理由は、教える内容が原理的な考え方についてであり、かつ難解でもあるので、即物的なハウツーを学ぼうとする人は魅力を感じないからでしょう。けれども、ドラッカーが教えるところは現実社会での成果(人間の幸福、利益の確定)を目的にしており、その処方箋であり実践的でもあります。

マネジメントは、組織が行わなければならない実行を方向づけたものです。例えば「リスクを負わないことは、最大のリスクである。」と教えます。「企業活動とは、現在の資源を未来に、すなわち不確実な期待に賭けることである。経営活動の本質とは、リスクを冒すことである。」だからこの意味と意義が分からないでは、成果はなく衰微は当然なのです。リスクは避けるものではなく、活用しなければならないものだからです。

面白い理論があります。損失回避性(プロスペクト理論)というもので「人は“損をする”ことに対して過剰に恐怖を感じる性質を持っており、同じ金額であれば、利益を得る喜びよりも損をする苦痛の方が2,25倍以上大きい。」なのです。だから、経営者は一般感情に判断を委ねていては、戦略を損ないます。

当然ですが、経営者は果敢かつ整合性ある経営判断をしなけれななりません。誰もが「損失に恐怖する」のですが、致命的でないかぎり実践し多くの失敗から生な情報と見通しと自信を得て先行することができます。一番の地位を得るには、差別的な資源(情報と自信)は必須です。元より失敗を失敗で終わらせるようでは無意味ですが、ニデック(日本電産)の永守さんのいう「やり始める。やり続ける。やり通す。」が基本的な企業を育てて活かせる基本的な覚悟であり姿勢です。 

ところで、ドラッカーは、企業についてこのように定義します「企業は社会の機関であり、その『目的は社会にある』」と、さらに、こんなこと続けます「企業の目的の定義は一つしかない。それは、『顧客を創造すること』である。」さてこれをどう解釈されますか。加えて、そのために二つだけ「“マーケティング”と“イノベーション”という成果をもたらす基本機能を持つ」と教えています。

“顧客を創造する”なんてことを言って事業を行っている経営者などを見かけられたことがあるでしょうか、聞かない話です。しかし、すべての大きな成果を実現させた事業家は、これを行いました。そして、この“顧客を創造する”を行い得た企業は、差別的に成長して、それができなくなり陳腐化すると優位さはなくなり衰微されて行きます。 

好業績を適えるためには、リスクを賭けてチャレンジし続けて“顧客を創造する”を続けるということで、高収益企業の基本戦略であり原則です。今日の世界では“変化”が常態で、停滞した効用(商品・サービス)では、改善する革新する「格安でかつより魅力的なもの」に抗しようはない。対価を支払うのは顧客だけなので、ここに焦点を絞ってよりよい効用(商品・サービス)でニーズを満たすことが企業の本来の方策であり道です。

ドラッカーは「マーケティング」の機能の本質を、こう教えます。「“マーケティング”が目指すものは、顧客を理解し、製品とサービスを顧客に合わせ、自ずから売れるようにすることである。」

マーケティングの父と称されたコトラーは、このように定義します。「ニーズに応えて利益をあげることだろう。」「『どのような価値を提供すればターゲット市場のニーズを満たせるか』を探り、その価値を生み出し、顧客に届け、そこから利益をあげることである。」

ある人物から聞いたとしてこんなことも併せ紹介しています。「事業を成功させる唯一の方法は、利益をあげながらニーズを満たすことです。利益をあげずにニーズを満たすというのは慈善事業です。ニーズを満たさずに利益をあげるのは詐欺です。」利益優先、自己優先の考え方は、普段に詐欺師の性根へと落ち込みそうです。

ドラッカーは「変化はコントールできない。できることはその先頭にたつことだけである。」とし、そうしたらどのようにしたらよいのか「急激な構造変化の時代にあっては、生き残れるのは、自ら変革の担い手“チェンジ・リーダー”となる者だけである。」と基本的な姿勢の在り方を教えます。チェンジ・リーダーこそが「顧客創造」の担い手なのです。

チェンジ・リーダーの典型は「スティーブ・ジョブズ」でしょう。ジョブズは「まだ存在しないものへの消費者ニーズを消費者に聞いても分からない。企業が具体案を提示する必要がある。」としながら「手のひらに乗る小さなコンピューター“スマートフォン”」を世に出しました。マーケティングし、イノベーションし、大いなる“顧客の創造”をします。

少し余談を入れます。チェンジ・リーダー「スティーブ・ジョブズ」は独創の人だったのか。実は彼は「顧客を創造する」スタイルと方策を、先行したチェンジ・リーダー「ソニーの盛田昭夫さん」から直々に学ぼうとし接近しました。盛田さんは、何が気に入ったのか、ジョブズに懇切丁寧に教えています。

先人の盛田さんのソニーは、トランジスタラジオをまたウォークマンを世に出し「顧客を創造する」を行ったのです。 ジョブズは「私やアップルの多くの人たちに最も大きなインスピレーションを与えたのは、ソニーの盛田昭夫でした。」「今日やろうとしていることのいくつかが、彼を笑顔にしてくれることを願っています」と言っています。 

チェンジ・リーダーは、イノベーションのため、リスクを活用・駆使します。イノベーションは、既存を破壊するが故に原則的に多くは失敗します。この失敗は、成果に導く多くの新たな実践的な情報を提供する源泉です。
たから、成果へ至るためにリスクを冒すのであって致命的であってはならず、「学習のための計画でなければならない。」のでありです。

今日の企業は、イノベーションを継続して行うのが基本なので計画します。ドラッカーはこのように言います「そもそも、最初から完成の域に近いイノベーションは稀である。必ず変更が必要になる。そのとき、小規模にスタートしていれば、調整のための人や金もあまりかからないですむ。」さら、そのステップも示しています「1.機会に注目して徹底検討する、2.簡単なものにする、3.小規模に始める、4.トップに立つことを狙う」。

とにかく『トップ』になれる“顧客を創造する”に向い、実践するのです。リクルートの江副さんは「就職情報誌」により、星野リゾートの星野さんは「リゾート運営」により、ソフトバンクの孫さんは「ヤフーの検索サイト」により、さらにユニクロの柳井さんは「リーズナブルなカジュアルウェア」により「顧客を創造」することで、飛躍的に地位を得たのです。

『顧客を創造すること』は、企業の“本源的な目的”で、ここから考えて活動(マネジメント)するのが、その本源的な目的を果たして、その結果として「先行的かつ差別的強み」を持つための基本です。

image by: Shutterstock.com

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戦略経営のためには、各業務部門のシステム化が必要です。またその各部門のシステムを、ミッションの実現のために有機的に結合させていかなければなりません。それと同時に正しい戦略経営の知識と知恵を身につけなければなりません。ここでは、よもやま話として基本的なマネジメントの話も併せて紹介します。

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【著者】 浅井良一 【発行周期】 ほぼ週刊

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