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「らしくない無理した笑顔」が敗因か。森本毅郎が見抜いた都知事選で蓮舫氏が若者から支持されなかった理由

演説会場の圧倒的な盛り上がりもあり、巷では都知事選「小池百合子氏3選」を阻む可能性すら囁かれた蓮舫氏。しかし結果は石丸伸二氏にすら及ばぬ3位落選という結果に沈んだのが現実でした。なぜ蓮舫氏はここまでの惨敗を喫してしまったのでしょうか。今回の『きっこのメルマガ』では人気ブロガーのきっこさんが、その敗因を分析。さらにカンニング竹山氏がラジオ番組で指摘した、小池氏に対する3つの刑事告発の内容を紹介しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:灼熱の東京都知事選!

灼熱の「七夕決戦」東京都知事選!蓮舫氏が3位になった理由

7月7日(日)が投開票のため「七夕決戦」などと言われた東京都知事選挙は、現職の小池百合子氏(71)が午後8時の投票締切とともに、いわゆる「ゼロ打ち」で3選を決めました。開票率100%での上位3候補の得票数と得票率は以下の通りです。

小池百合子(71) 291万8,015票(42.8%)
石丸伸二(41)  165万8,363票(24.3%)
蓮舫(56)    128万3,262票(18.8%)

あたしは蓮舫氏を推していたのですが、正直、この結果は意外でした。今回、蓮舫氏はどこの演説でももの凄い集客力で、声援も凄かったからです。一方、討論会から逃げ続け、演説も事前に告知しないゲリラ演説に徹した小池百合子氏は、多くの都民から「辞めろコール」を受け、演説を途中で中断したりしていました。そんな選挙戦を見て来たので、この結果は本当に意外でした。

また、自民党の調査による3氏の支持率も、小池百合子氏が43.6%、蓮舫氏が32.1%、石丸伸二氏が8.3%だったので、あたしは蓮舫氏の3位になるなどとは夢にも思っていませんでした。あたしは「最低でも2位」と思っていたので、その上で何とか小池氏に勝てるようにと、無党派層への呼びかけなどを行なって来たのです。しかし、フタを開けてみると、石丸氏が善戦したぶん蓮舫氏の得票が伸びず、3位に甘んじる結果となってしまったのです。

同じ敗戦でも、200万票の大台に乗せた2位での敗戦と、政党の支援のない石丸氏にも水をあけられた3位での敗戦は、意味が大きく違います。今回の蓮舫氏の敗戦は、4月の衆院補選の東京15区で乙武洋匡氏が、小池百合子都知事の全面支援や国民民主党の支援を受けながら5位に惨敗した時と似たような印象がありました。

東京15区の補選での乙武氏と、今回の都知事選での蓮舫氏の共通点は、どちらも「無所属」を謳いながら、背後の政党色が強く出ていた点です。乙武氏は自身がファーストの会の共同代表をつとめながら「無所属」を謳ったことで、政党政治を嫌う無党派層から見放されてしまいました。

今回の蓮舫氏も、立憲民主党を離党して「無所属」を謳いつつも、立憲民主党や日本共産党やの支援が明確だったため、政党政治を嫌う無党派層の支持が集まらなかったのだと思います。何しろ、有権者は蓮舫氏の話が聞きたくて街頭演説に駆け付けているのに、福山哲郎氏だの長妻昭氏だのと立憲民主党の幹部が次々と登場して演説し、30分くらいしないと蓮舫氏は出て来ないのです。暑い中、待ってる人たちはたまらないし、これで「無所属」と言われても「はぁ?」って感じです。

特にあたしが大失敗だと思ったのは、無党派層だけでなく立民の支持者にも愛想をつかされている野田佳彦氏に応援演説をさせたことです。せっかく手に入れた政権を、自分の手に負えないからと自民党にノシをつけて献上し、悪夢のような第2次安倍政権の基礎を築いたA級戦犯、そんな人物に応援演説させるなんて、あれほどのマイナスキャンペーンは他にないでしょう。また、選挙戦の初盤では自民党の裏金問題への批判を前面に出し、「与党対野党」の構図に持ち込もうとしたこと、これも無党派層を遠ざけた一因だと思います。

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蓮舫氏と「真逆の戦略」が結果につながった石丸氏

一方、善戦した石丸伸二氏は、萩生田光一氏が主宰する「TOKYO自民党政経塾」の小田全宏塾長代行が選対本部長を務めていることなど、水面下での自民党との深い関係が報じられましたが、一貫した「合理的な演説」が大成功しました。石丸氏はパッと登場して主張の要点だけをパパッと述べたら「続きはWEBで」と言ってアッと言う間に帰ってしまう。しかし、1日に10カ所くらい回ったのです。

街頭で石丸氏の主張の要点だけを聞き、さらに詳しく知りたい人はYOU TUBEなどで続きを観れば良い。この「合理的な演説」は、コスパだけでなくタイパ(タイムパフォーマンス)を重要視し、映画やドラマを倍速で観るようなZ世代の無党派層を惹きつけました。政党の重鎮を並べて長々と演説させるという蓮舫氏の従来の方式と比較すると、ある意味、真逆の戦略でしたが、それが結果につながったのです。

若い世代や無党派層へ届かなかった蓮舫氏のアピール

ここで、東京新聞が都内120カ所の投票所で行なった出口調査による3氏の得票の内わけを見てみましょう。

小池百合子氏
公明党の支持層の80.8%
自民党の支持層の67.0%
日本維新の会の支持層の31.9%
国民民主党の支持層の28.6%
立憲民主党の支持層の13.8%
共産党の支持層の12.2%
無党派層の30.6%

石丸伸二氏
日本維新の会の支持層の41.0%
国民民主党の支持層の38.5%
れいわ新選組の支持層の28.4%
自民党の支持層の18.6%
立憲民主党の支持層の10.7%
公明党の支持層の9.6%
無党派層の38.0%

蓮舫氏
立憲民主党の支持層の72.1%
日本共産党の支持層の69.4%
れいわ新選組の支持層の37.8%
日本維新の会の支持層の13.9%
国民民主党の支持層の11.0%
自民党の支持層の4.8%
無党派層の16.6%

続いて「年代別の投票先」を見てみると、10~30代は石丸氏が30~40%で最多を占め、40代以上は各年代で小池氏が平均40%で最多となりました。蓮舫氏は10~50代で1割台、60代以上でもそれぞれ2割台に留まりました。

こうして3氏を比較してみると、小池百合子氏の当選は政権与党を中心に組織票を固めたことだったと分かりますし、石丸伸二氏の善戦は若い世代を中心とした無党派層の取り込みに成功した結果だと分かります。また、蓮舫氏の敗因は、石丸氏とは真逆で、若い世代や無党派層へのアピールが届かなかったことだと分かります。

しかし今回、蓮舫氏は「徹底した若者支援こそがシニアの安心につながり、都の活力につながる」と訴え「若者の手取り増」を最重要公約に掲げていました。あたしの見た限り、3氏の街頭演説では、最も「若者支援」を前面に打ち出していたのが蓮舫氏でした。でも、先ほどの「年代別の投票先」を見てみると、若い世代の多くは石丸氏に投票しているのです。

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人気パーソナリティが選挙翌日に語った蓮舫氏の敗因

この点に関しては、投開票日の翌日、7月8日(月)のTBSラジオ『スタンバイ!』のオープニングで森本毅郎さんが触れているので、その部分を紹介します。

森本毅郎さん 「蓮舫さんはショックだったと思います。まさか3着になるとは…。蓮舫さんは作戦がうまく行きませんでしたね。若者!若者!と、蓮舫さんは口をひらけば若者!と言ってましたけど、若者の支持は広がりませんでした。神宮外苑の再開発についても、是非を問う住民投票をやりたいとおっしゃってました。神宮外苑の再開発を巡っては、樹木の伐採に反対という声が69.6%もあったんです。これ東京新聞の調査です。で、賛成は27.3%。賛成した人の投票先は小池さんが51%で最も多かった。そして、反対した人の投票先はどうだったか?

これが割れたんです。最多は33.5%で小池さんなんです。これが不思議でしょ?そして石丸さんが27.%、再開発の是非を問うと言った蓮舫さんは25.3%に留まって、反対派の大きな受け皿にはならなかった」

森本毅郎さん 「つまり蓮舫さんはね、若者支援は打ち出したけど若者の支持は得られなかった、神宮外苑の再開発問題でも支持を得られなかった。何故だ?ってことですね。蓮舫さんご自身もショックだったと思いますけど、ご本人は力不足っておっしゃってましたが、やっぱり蓮舫さんて戦う人なんですよ。それがね、今度の選挙ではにこやかに、無理して笑い過ぎていると思いました。あの無理な笑顔は、本音じゃないなって、蓮舫さんそのものじゃないなって、みんなが見抜いちゃった。あの愛想の良さが良くなかったと思います。

もっとサラッといつもの自分を出すべきだったと思います。残念だね。蓮舫さんらしくなかったんですよ。そういう意味では、今回は作戦が裏目に出ちゃいました」

あたしは、政党色が強く出過ぎたことが無党派層を取り込めなかった最大の原因だと見ましたが、森本毅郎さんは「蓮舫さんらしくない無理した笑顔」が敗因だと見たようです。ま、蓮舫さんは次の衆院選までに選挙戦略を練り直すと思いますが、今回の都知事選では、小池百合子氏の当確が出た直後に、自民党の「ドリル優子」こと小渕優子選挙対策委員長が、まるで自民党の手柄であるかのように「次の選挙への弾みにしたい」などとコメントしたので呆れ返りました。

小池氏3選を自分たちの手柄にする自民党の厚顔無恥

岸田文雄首相も「連敗を止めることができた」などと抜かしましたが、自民党という看板を完全に隠したステルス支援だったのに、何を浮かれてるんだか、開いた口からエクトプラズムが流れ出して幽体離脱しちゃいそうです。

6月の沖縄県議会選挙でも、玉城デニー知事を支える県政与党の敗北を受けて、自民党の今井絵理子議員が調子に乗ったツイートをして炎上していましたが、そもそもの話、国民の政治不信、政党政治へのアレルギーを拡大させた張本人は、あなたたち自民党の国会議員だと言うことを、もうお忘れなのでしょうか?

今回の都知事選では、江東、品川、中野、北、板橋、足立各区と八王子市、府中市、南多摩(多摩市、稲城市)の9選挙区で補欠選挙が行なわれましたが、このうち8選挙区に候補者を擁立した自民党は、2勝6敗という大惨敗でした。それも、自民党都連の会長をつとめる萩生田光一氏の地元の八王子市では、自民党の候補が大差をつけられて惨敗しました。この結果を見れば、国民の多くが自民党の裏金問題を忘れていないこと、解決したと思っていないことが一目瞭然でしょう。

政権与党でありながら都知事選に独自候補も擁立できず、現職をステルス支援するのが精いっぱい。それなのに、その3選を自分たちの手柄にし、こともあろうに「連敗を止めることができた」だの「次の選挙への弾みにしたい」だの抜かしている厚顔無恥な自民党が、次の衆院選でどれだけ議席を失うか、今度はそこに刮目したいと思います。

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受理された小池氏に対する3件の刑事告発

それから、投開票日の翌日の7月8日(月)、文化放送「くにまる食堂」で「都知事選の結果、あなたは納得してますか?」というツイッターのアンケートを行なったのですが、その結果は「納得してる!」が22.2%、「納得してない!」が77.8%でした。

https://x.com/kunimaru_joqr/status/1810104273637912766

また「くにまる食堂」の月曜レギュラーのカンニング竹山さんが、今回の都知事選で気になることを挙げていたので、そのクダリを紹介して終わりにします。

カンニング竹山さん 「現職の小池さんが再選しましたけど、ちょっといつもと違うなと思ってるのは、小池さんて刑事告発を3つ、されてるんですよ。それも公職選挙法違反なんですよ。この3つが受理されてるんで、都知事選が終わってからどういうふうに動いて行くんだろう。最悪の場合は当選が取り消しになるんですよ、公職選挙法違反だから。この捜査とか、国はどうやって動いて行くのか。

初めの小島さんが経歴詐称で告発した問題、次に市民グループが答弁拒否とかで告発した問題、もう1つは弁護士の郷原さんが告発した、選挙活動中の公務を使った宣伝の問題です。小池さんは公務として会見をする中で都知事選についての宣伝をしてましたよね?あれってどうなのかと。橋下徹さんが小池さんとバトッてましたけど、日本維新の会では大阪府知事選の時、現職は公務をすべてやめて選挙に徹すると。そうしないと公務を利用した選挙活動と思われてしまうから。でも小池さんはそれをやって来たんです」

さて、この3件の刑事告発、どうなるのでしょうか?

(『きっこのメルマガ』2024年7月10日号より一部抜粋・文中敬称略)

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