いよいよ日曜日に迫った東京都知事選挙(7月7日投開票)。現職の小池氏が一歩リードし、蓮舫氏がそれに続く情勢とされている。だが選挙戦がこのまま「女性候補同士の一騎打ち」で終わるとはかぎらない。激しい追い上げをみせる石丸氏の街頭演説は日増しに熱気を帯び、最終盤での逆転も絵空事ではなくなってきたからだ。元全国紙社会部記者の新 恭氏が解説する。(メルマガ『国家権力&メディア一刀両断』より)
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:小池氏を激しく追い上げる石丸氏。ネット選挙は壁をぶち破れるか
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「石丸だけは応援したくない」維新の本音
世田谷区議会議員、稗島進氏は6月28日、日本維新の会東京都総支部である「東京維新の会」へ離党届を提出した。稗島氏がブログで、その経緯を公表している。以下はその概略だ。
東京維新の会は6月17日に、緊急全体会議をオンラインで開いた。その場で柳ヶ瀬裕文代表(日本維新の会総務会長)は東京都知事選の対応について「静観する」と党の方針を通達した。
「維新の会として候補者を擁立しておらず、どの候補にも推薦や支持などを行っていない以上、所属議員はいかなる陣営にも関わってはならない」という趣旨だった。
稗島氏は悩んだ。所属議員が自分の信条に基づいて、思い思いの候補を支援できるようにしてほしい。決定の再考を求める要望書を出したが、音喜多駿幹事長名の回答文書で却下された。
維新が所属議員に対し、どの陣営に関わることも禁じた真の理由は、もっと具体的なことだったと思われる。おそらく、都知事選に出馬する前安芸高田市長、石丸伸二氏に近づいてほしくなかったのだ。
「AERA dot.」によると、日本維新の会の馬場伸幸代表と藤田文武幹事長、柳ヶ瀬裕文総務会長、音喜多駿政調会長がうちそろって石丸氏に会い、「推薦」を申し入れたが、石丸氏は即座に断ったとされる。意地でも石丸だけは応援したくないというのが維新幹部たちの本音なのではないだろうか。
果たせるかな、稗島氏が支援したいと望んだのは、石丸候補だった。「各候補者の政策を吟味し、何名かの候補については、実際に街頭演説にも足を運び、人となりを拝見した」。そのすえに、決めたのだという。
東京都の街頭を制しつつある石丸氏
「人となり」。すなわち人間の品性は、ウソつき政治家の跋扈する現状において、候補者を判断する重要な要素である。
安芸高田市長だった石丸氏はウソを嫌うから議会と対立した。市政の可視化をはかるため、石丸氏は対立する姿をそのままYouTube動画やX(Twitter)を駆使して世間にさらしてきた。だからこそ、人々は安芸高田市政に興味を持ち、議会で何が行われているかを知ることができた。
わずか2万6000人ていどに過ぎない小さな都市の市長が全国的に注目され、都知事選への挑戦を決めるや、募集に応じて5000人ものボランティアがはせ参じ、5月下旬からの1カ月あまりで1万1555件、合計2億769万円もの献金が寄せられたのも、それゆえだ。
石丸候補は一日に10か所前後まわって街頭演説を繰り広げている。1か所に充てる時間は短いが、行く先々、聴衆で埋まり、熱気に包まれている。おそらく、今回の候補者のうちで一番の盛り上がりを見せているといえるだろう。