都知事選が炙り出した「既存政党」終わりの始まり。古い自民党政治を倒す第三勢力「デジタルイノベーショングループ」の台頭は日本を救うのか?

2024.07.10
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現職である小池百合子氏の圧勝で終わった2024年東京都知事選挙。参院議員を辞職し出馬した蓮舫氏が惨敗を喫した一方で、前安芸高田市長の石丸伸二氏が意外にも2位という驚きの結果を出しましたが、識者はこの選挙をどう見たのでしょうか。政治学者で立命館大学政策科学部教授の上久保誠人さんは今回、都知事選を「話題に事欠かない選挙戦になった」とした上で、石丸氏やエンジニアの安野貴博氏らの躍進が何を示唆しているのかについて詳しく解説しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:新しい選挙スタイルの台頭。立命館大学教授が混迷をきわめた東京都知事選を総括する

プロフィール:上久保誠人(かみくぼ・まさと)
立命館大学政策科学部教授。1968年愛媛県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、伊藤忠商事勤務を経て、英国ウォーリック大学大学院政治・国際学研究科博士課程修了。Ph.D(政治学・国際学、ウォーリック大学)。主な業績は、『逆説の地政学』(晃洋書房)。

新しい選挙スタイルの台頭。立命館大学教授が混迷をきわめた東京都知事選を総括する

東京都知事選挙は、7月7日に投開票された。小池百合子・都知事が国政復帰するのか否かから始まり、過去最多の56人が立候補して選挙ポスター掲示板の数が足りなくなったこと、その掲示板にわいせつと疑われる写真や、候補者と直接関係のないポスターが多数貼られた問題、「学歴詐称VS二重国籍」と揶揄された小池百合子・東京都知事と蓮舫・元参院議員の「女の闘い」など、話題に事欠かない選挙戦となった。

結果は、小池氏が全体の4割にあたる291万8,015票を獲得し、3回目の当選を果たした。石丸伸二・前安芸高田市長は165万8,363票を取って2位に躍進した。蓮舫・元参院議員は、128万3,262票の3位にとどまった。

特に、選挙戦を盛り上げたのは、石丸伸二・前安芸高田市長や人工知能(AI)エンジニア・安野貴博氏、作家・YouTuber・ひまそらあかね氏らの立候補だ。SNSを駆使した、新しい選挙運動スタイルや、既存の政治の常識を覆す選挙公約の打ち出し方で、当初の予想を超えて大健闘したといえるだろう。

この現象は「変わった個性を持つ人」が立候補したという一過性のものだとは思わない。筆者は、今後の政治の対立軸が「ネオ55年体制」という保革対立が復古するものであるとは思わない。次第に「社会安定党VSデジタルイノベーショングループ」という、新しい対立軸が浮上してくると主張してきた。

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言い換えれば、共産党から自民党までを含む「既存の政治」の外側に、新たな対立軸が現れてくるということだ。石丸氏、安野氏、ひまそら氏らは、新しい政治勢力「デジタルイノベーショングループ」なのだろうか?私の過去稿と、彼らの言動を比べて検証してみたい。私は、「デジタルイノベーショングループ」を以下の通り説明してきた。

「市場での競争に勝ち抜いて富を得ようとする人たちの集団」である。具体的には、SNSで活動する個人、起業家、スタートアップ企業・IT企業のメンバーなどだ。彼らは政治への関心が薄い。「勝ち組」を目指す人たちにとって、社会民主主義的な「格差是正」「富の再分配」は逆効果になるからだ。彼らの関心事は、日本のデジタル化やスーパーグローバリゼーションを進めることである。そして彼らは、政治を動かす必要があると判断すれば、現政権を批判する政党を時と場合に応じて支持する。その支持政党が「野党」となる。

いかがだろうか。石丸氏を例に考えてみたい。京都大学経済学部卒、三菱UFJ銀行入行。為替アナリストとして、子会社・MUFGユニオンバンク初代ニューヨーク駐在として赴任。文句なしに「市場での競争に勝ち抜いて富を得ようとする勝ち組」である。

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