共産党との共闘に軸足を置いた蓮舫氏の無惨な敗北
それに対して、サイレントマジョリティを軽視し、共産党との「共闘」に軸足を置いたために、無残な敗北を喫したのが蓮舫氏だ。
共産党は、選挙戦が始まる前から党の広報に蓮舫支持を大々的に打ち出した。そして、蓮舫氏、立憲民主党となにも合意がないのに、「蓮舫氏が都知事になれば、このような政策が実現する」として、共産党の主張をずらりと並べた。それに対して、蓮舫氏も立憲民主党も、共産党に抗議することなく、静観した。
私は、東京15区補選で共産党の支援で立憲民主党の候補が当選した際、次のように指摘した。
今後共産が立民に対してさらなる共闘と政策の合意を求めるだろう。だが、泉代表は安全保障や原発などエネルギー政策、消費税減税の凍結など「現実主義的」な政策志向を持つ。共産のプレッシャーを受けて、立民党内で政権獲得戦略を巡る迷走が始まる。
【関連】若手から出なかった「自民党をぶっ潰す」の声。政権与党が衆院補選2選挙区で候補者すら立てられなかった裏事情
その通りになったということだ。共産党主導の「共闘」姿勢に、連合は抗議して小池氏支援に回った。なにより重要なのは、共産党支持者は盛り上がったが、50%以上の多数派を占めるサイレントマジョリティの支持を完全に失った。
もちろん、蓮舫氏の街頭演説は、常に多くの人が集まり盛況だった。陣営は手ごたえと充実感があっただろう。だが、それは「コアな支持者」の反応に過ぎなかった。「大きな声」ではあったが、全有権者の中では少数派に過ぎなかった。それでは勝てないのだ。蓮舫氏は、石丸氏にまで敗れる、無残な姿を晒すことになってしまった。
立憲民主党は、たとえ蓮舫氏が2位となっても、200万票を獲得できれば、共産党との共闘の効果を証明できるとしていた。その政治的感覚の古さ、鈍さ、現実の読みの甘さは笑うしかないレベルだ。
そして、共産党はさらに無残だ。党の実情は厳しいものがある。国会での議席数は長年減少し続けている。党員数は、最盛期だった90年の50万人から25万人程度に半減している。党財政の基盤を担う『赤旗』の購読者数も80年の355万人から85万人まで落ち込んでいる。特に深刻なのは、党員の高齢化だ。平均年齢は70歳を超えているのではないかといわれている。
実際、共産党の運動員はさまざまな駅前でビラ配りなどの活動をしている。だが、どの駅でも、70歳以上と思われる高齢者ばかりだ。若者の姿をみることはほとんどない。新規党員の獲得はまったく進んでいないのだ。
そして、このような現状にある共産党が「候補者を降ろすこと」を党の戦略としている。共産党は、政権交代実現に向け、選挙で野党候補をできる限り一本化する「野党共闘」を党の戦略としてきた。
候補者を降ろし、国民に対して政策を訴えず、選択肢を与えない。その裏で、候補者を出さないことを条件に他の党と駆け引きをし、権力獲得に暗躍する。これは、政党が国民に対して果たすべきことの真逆ではないか。候補者を降ろすのは、立候補しても勝てないと自覚しているからでもある。共産党は、自由民主主義国の政党の体をなしていない。解党すべきであると強く主張したい。