都知事選が炙り出した「既存政党」終わりの始まり。古い自民党政治を倒す第三勢力「デジタルイノベーショングループ」の台頭は日本を救うのか?

2024.07.10
 

サイレンマジョリティの支持獲得を重視し圧勝した小池氏

3回目の当選を果たした小池氏の話に移りたい。小池氏は、今年4月の衆院東京15区補選で乙武洋匡氏を担いで惨敗し、国政復帰、日本初の女性首相の悲願達成の道を事実上絶たれた。「学歴詐称疑惑」の問題を蒸し返され、刑事告訴されるなど、強い逆風に晒されていた。

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それでも、前回都知事選の約366万票から約70万票得票を減らしたものの、圧勝という結果となった。小池氏は、政治家としての圧倒的な力量を示したといえる。

小池氏は、選挙戦で現職の強みを生かして、徹底的に組織票を固めた。選挙前から、新宿区の吉住健一区長、調布市の長友貴樹市長、瑞穂町の杉浦裕之町長ら都内の52の区市町村の首長が小池氏に出馬要請した。続いて、公明党が支援を表明した。「政治とカネ」の問題に揺れる自民党は表立っては動かなかったが、小池支援で固まった。

小池氏は、街頭演説は週末を中心とした。公明党、自民党も党派性を出さない方針で、応援弁士に立つことはなかった。その代わり、都の施設や民間事例を見て回る「行政視察」を行った。奥多摩湖のダムや八王子市学校給食センター、民間の介護研修施設などなど、選挙期間中に20カ所近くを相次いで訪問し、1日に4カ所巡ることもあった。視察先は、防災や子育て施策など、2期8年の任期中に力を入れた政策に関連する場所が多かった。現職としての仕事ぶりをアピールする「舞台」だった。

そして、本来は立憲民主党支持のはずの連合が、小池氏への支持を表明した。蓮舫氏が、共産党の支援を受けていることが理由であったが、小池氏の都知事としての業績を高く評価していることも強調した。

一方、小池氏は無党派層の約30%を獲得した。石丸氏の台頭で無党派票を大きく減らしたとみられるが、それでも底力をみせたといえる。小池氏は、元々現実主義的、中道主義的な政治スタンスをとってきた。かつて、「希望の党」を結成し、安倍晋三政権を打倒し、政権交代を目指した頃には、ゴルフに例えて、「皆が左と右のラフを狙うので、私は空いている中央のフェアウェイを狙います」と発言したことがある。つまり、中道の無党派層の獲得を常に狙ってきた。それは、今日でも変わっていない。

筆者は、現在の政治で勝利するには、世論調査で5-6割を占めることがある「サイレントマジョリティ(声なき多数派)」である無党派層を狙うべきだと主張してきた。

再度、サイレントマジョリティについて、簡単に説明しておく。中道的な考え方を持つ現役世代、子育て世代、若者らに加え、都市部で暮らすサラリーマンを引退した高齢者などがこれに含まれる。

ただし、イデオロギーに強いこだわりがなく、表立って声を上げないとはいえ、サイレントマジョリティが投票行動を一切しないわけでもない。常日頃から支持している政党はないものの、時流や政局に応じて一票を投じ、選挙の結果を事実上左右する力を持ってきた。

例えば、かつて民主党への政権交代を支持したのはこの人たちだ。また、第2次安倍晋三政権は、経済政策「アベノミクス」や、弱者を救済する社会民主主義的な政策でサイレントマジョリティの支持を獲得し、憲政史上最長の政権を実現した。

このサイレンマジョリティの支持獲得を重視する中道的な姿勢が、逆風が吹き荒れる中でも小池氏が強さを発揮した理由の1つである。

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