都知事選が炙り出した「既存政党」終わりの始まり。古い自民党政治を倒す第三勢力「デジタルイノベーショングループ」の台頭は日本を救うのか?

2024.07.10
 

石丸氏という「デジタルイノベーショングループ」の政治家

そんな人が、大企業を退社し、2020年7月、安芸高田市長に転身した。当時の市長が、衆院議員だった河井克行から現金60万円を受け取った責任で辞職し、市長選が行われた。副市長が立候補を表明し、無投票当選が予想される故郷の状況に危機感を感じ、石丸氏は立候補を決断して、当選した。

石丸氏は安芸高田市長を1期務めたが、徹底して議会と対立姿勢を貫いた。市議会で居眠りをした議員を「恥を知れ!恥を!」と批判した。それがSNSを通じて全国的に広がり、大きな話題となった。

石丸氏は、「議会を敵に回すとマズイ」「議会に従わないと、政策に対して一方的な反対を受けるだろう」「市長が議会に大人しく従っていれば、議会は政策を通してくれる」という考え方は極めて不健全と主張した。

地方自治体は、首長と議会議員をともに住民が選挙で選ぶ「二元代表制」という制度だ。市民の代表である市長と議会議員が、議論を重ねて自治体運営にあたることができる仕組みで、市長と議会が対立することは、本来のあるべき姿とも訴えた。安芸高田市長時代、馴れ合いの既存の政治を一貫して否定してきたということだ。

都知事選でも、完全な無党派を貫いてきた。例えば、地方主権を主張してきた日本維新の会は、石丸氏と政治的主張が似た部分があると思われたが、石丸氏はその支援をきっぱりと断ったという。

しかし、石丸氏は徹底的にSNSを駆使する戦略で、急激に支持を拡大した。その支持はSNS上にとどまらず、街頭演説でもすさまじい聴衆を集める盛り上がりを見せた。蓮舫氏を上回る得票を得て、2位に入ったのだ。

このように、石丸氏は「勝ち組」の中から、既存の政治を徹底的に否定する存在として登場した。だが、石丸氏は都知事選に勝利することはできなかった。その意味で、少なくとも現時点では「野党」的な存在でもある。

本来は自らのキャリアアップに関心がある人ではあるのだろう。しかし、キャリアアップの邪魔になりかねない古い既存の政治に危機感を感じ、それを変えるために勝ち組から政界に参入したといえる。その意味では、まさに「デジタルイノベーショングループ」の政治家が現れたといえるのではないか。

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