ネット上の皇室バッシングが先鋭化している。ある署名サイトでは「秋篠宮さまは上皇ご夫妻の子ではない」というデマを前提に「秋篠宮文仁殿下のDNA鑑定を要望する」という署名運動まで出現。本稿では、小林よしのり氏主宰「ゴー宣道場」の寄稿者で作家の泉美木蘭氏が、常軌を逸した陰謀論に溺れながら日本の皇室を愚弄しつづける者の正体に迫る。(メルマガ『小林よしのりライジング』より)
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:秋篠宮バッシングは極左の扇動
過激化する秋篠宮バッシング
竹田恒泰が、SNS上での自分に関する投稿に対して、手当たり次第に削除を要請し、「名誉棄損で提訴します」と訴訟予告を送信しまくっている。
竹田恒泰Xの投稿より
ネット上には、愛子天皇待望論の主張とセットで、秋篠宮バッシングをくり返している集団がいるが、これがどんどん過激化して、現在、「秋篠宮さまは上皇ご夫妻の子ではなく、上皇后陛下の妹夫妻の子だ」というわけのわからないデマをもとに、「秋篠宮文仁殿下のDNA鑑定を要望する」と常軌を逸しているとしか思えない署名運動が展開されている。
秋篠宮バッシングのための署名ページ
この秋篠宮バッシングサイトには、12,000字超におよぶ主張が書き連ねてあり、大部分は「川嶋家による皇統の簒奪」という誇大妄想にもとづいた荒唐無稽なデマだ。
同時に、君塚直隆氏、宍戸常寿氏ら女性・女系天皇を容認する有識者の発言が引用され、国民が声を上げよという内容になっているのだが、この署名活動の発端となったデマが、竹田恒泰の発言だというウワサがあり、SNS上で、竹田の名前と一緒に拡散されているのだ。
「竹田がテレビで言うのを見た」「動画で見た」などの投稿もあるが、実際の映像は見当たらない。 竹田本人は否定しており、あちこちで拡散されている投稿について、「削除しないならすべて名誉棄損で提訴する」ということらしい。
事実でないなら否定しておけばそれでよいのではと思うし、そもそもこんなわけのわからないデマ、ほとんどの人は信じない。名誉棄損されているのは、秋篠宮家であって、竹田は、そもそも自分自身の動画やテレビでの振る舞いから、「発狂・キレ芸の人」とか「あの人ならそういうこと言いそう」とか思われているだけなのではと思うのだが……。
「竹田が言った」と吹聴したのは、篠原常一郎(別名:古是三春)という人物らしい。統一協会で講演を行っていたジャーナリストだが、その後、参政党の結党メンバーになったかと思うと、現在は、YouTubeで30万人のチャンネル登録者を持ち、連日、悠仁さまや三笠宮家のバッシングを行っていた。
悠仁さまバッシングをくり返している篠原常一郎のYouTubeチャンネル
行動が支離滅裂でわけがわからないが、YouTubeの画面を見るだけで、「陰謀論が好きで、皇室が嫌い」であることが伝わってくる。
先に紹介した秋篠宮バッシングの署名サイトにしても、一見、女性・女系天皇の誕生を熱烈に望むがゆえの主張のようでいて、よく見ると変なのだ。 「この人、皇室が嫌いなのでは?」と思えるのである。
この記事の著者・小林よしのりさんのメルマガ
違和感ありすぎる秋篠宮バッシングサイト
女系容認論者たちの発言をかなり緻密に調べて、発言のグラデーションや小さな差異をとらえながら整理して紹介しているのに、同時に、里中満智子の
「1700年間男系男子優先を守り続けて来た重み」
「男系女子には皇位継承を認めるのはいいが、天皇の夫、子供となる人の立場を考える必要がある」
という男尊女卑スタンスから抜けられない発言を「妥当な意見と言える」などと評している。これだけの活動をしているなら、里中の「悠仁さまがいるのに女性・女系天皇論議は失礼」という発言も知らないわけがないし、なんだかおかしい。
しかも、有識者会議のヒアリング対象だった学者や法律家のほか、八木秀次、百地章、櫻井よしこなど男系カルトのメンバーも併せて、20人以上の論者が登場するのに、『愛子天皇論』シリーズの作者で、あちこちのメディアで発言している小林よしのりに一切触れていないところも、ものすごく違和感がある。
さらに、終盤になると、「まずは秋篠宮文仁殿下のDNA鑑定」「皇統の血を引く者でないならば、男系男子も女系女子もへったくれもない。問答無用に廃宮である」など、凄まじい煽り文言が並ぶ。
眺めていて、思った。
この秋篠宮バッシング活動は、「愛子天皇を望むあまりの過激思考から、こうなっちゃった」というような感覚ではじまったものではなく、やはり「皇室への信頼感、敬愛心を地に叩き落したい」「皇室を潰したい」という明確な目的を隠し持った極左活動家の計算の上で扇動されているものなのでは?
このようなバッシングサイトに、「愛子天皇論」や「ゴー宣DOJO」「愛子天皇への道」の名前を使われたら迷惑でしかないが、むしろ「正統な尊王派の愛子天皇論は避けておきたい」という思惑があるのではと、私は疑っている。
この記事の著者・小林よしのりさんのメルマガ
名誉棄損されているのはあんたじゃない
この一連の「デマ事件」について、竹田恒泰が語る動画があった。有本香が毎朝2時間生放送しているYouTube番組の9月26日放送回だ。
有本香と百田尚樹によって土日以外毎朝2時間以上行われている生放送番組
まず、びっくりしたのだが、竹田研究会の作った中学歴史教科書が、文科省の教科書検定で合格していたらしい。 平成30年ごろから、作っては不合格になるのをくり返していたが、令和7年から、岡山県の一部私立中学校で教科書として、三重県の私立中学校では参考書として使われるのだそうだ。
有本香の見立てでは、この教科書が合格してから、「竹田への攻撃」が強くなり、秋篠宮家についてのデマまで出回るようになったのだとか。
えっ。 竹田恒泰1人を攻撃するために、秋篠宮家デマが発生?
竹田と秋篠宮家の影響力、どちらが絶大かわざわざ書くまでもないと思うが、逆さまに捉えてしまう有本の感覚って……さすが日本保守党だ。
竹田は、有本の説明を受けて、こう語る。
「私が傷つく分には関係ないんですけども、それをネタに皇族を傷つけるという話は、これは看過できませんので片っ端から訴えます」
文字をうんこの色にして、心情を示したい気持ちでいっぱいだが、黒色しか使えないのが残念だ。
どういう視座から訴えるというのか。 先にも書いたが、デマによって傷つけられ、名誉を棄損されているのは、秋篠宮家、上皇ご夫妻、皇室そのものであって、竹田ではない。
そもそも竹田は、皇統を「味噌汁」、女性天皇を「うんこ」に例えて、「味噌汁にうんこが1滴でも入ったら、それはもはや全部うんこであって、もはや味噌汁ではないんです!」などとおどけた様子で話し、皇族をどこまでも侮辱し、傷つけている張本人じゃないか! 現在も「うんこ発言」はしっかり動画として残っている。
「私が傷つく分には関係ないがこれは看過できない」なんて、よく言えたものだ。
この記事の著者・小林よしのりさんのメルマガ
自分をかっこよく見せたいために皇族を利用する浅ましさがすごい。さらに竹田は続ける。
「(秋篠宮家に対する誹謗中傷は)愛子様に天皇になっていただく、女性天皇、女系天皇を作りたいという左派の思惑によって起きた運動なわけです」
「『愛子様ステキでしょ』みたいなことを言われると、皇室を大切に思っている人が『ほんとだわ』みたいになっちゃって、そうなると『秋篠宮はダメだ』みたいになる」
「義憤に駆られて、こうしたほうが皇室は良くなるという気持ちで言っているんでしょうけど、でも、その路線は、左翼が引いた路線だと気づいていないわけですよ。 皇室を大切に思っている人が、騙されてそういう論調に乗っかっちゃっている」
愛子天皇待望は、「左派の思惑」ではなく、尊皇派の願いであり大多数の国民の願いなのだが、「愛子様ステキでしょ」のくだりから、なんとなく、「ゴー宣DOJO」の活動が意識のなかにあるのではないかと感じた。 そして、秋篠宮バッシングをしている集団と、ごちゃ混ぜにしてレッテルを貼ってやろうという意図も臭う。
手柄主義と権威主義は誰なのか
その後、「旧宮家の男系男子養子縁組案」「結婚後の女性皇族身分保持案」の話になると、竹田は「ヒゲの殿下」こと三笠宮寛仁親王との思い出を語りはじめた。三笠宮寛仁親王は、生前――(メルマガ『小林よしのりライジング』2024年10月1日号より一部抜粋・敬称略。続きはメルマガ登録の上お楽しみください)
2024年10月1日号の小林よしのりさんコラムは「石破新総裁は天皇の臣下ではない」。ご興味をお持ちの方はこの機会にご登録ください。
この記事の著者・小林よしのりさんのメルマガ
泉美木蘭さんの最近の記事
- ディズニー死亡訴訟など日常茶飯事。どの事例も「ハァ?」としか言いようのないトンデモ訴訟大国アメリカの病巣
- 「いや~ん、まいっちんぐ!」はコンプラ警察に勝てるか?「仔猫の虐待」を理解せぬ米国発の検閲が日本文化を破壊する
- 初詣のたびに思い出せ。神社本庁の不正土地取引と「原発建設計画」 用地買収で中傷ビラ、金まみれエセ神道カルトの正体
- 日本を蝕む神社本庁の「カネと思想」土地転がし、男尊女卑、LGBT差別…八百万の神から反社会的 原理主義的カルトへ
- 安倍すごい 米国すごい 俺すごい。成蹊大出・Z世代ネトウヨ青年の悲願と「保守の再定義」にのけぞった話
小林よしのりさんの最近の記事
10月配信済みバックナンバー
※メルマガの定期購読手続きを完了すると、その月のすべての号(配信済み号を含む)がすぐに届きます。
- 小林よしのりライジング 515号「石破新総裁は天皇の臣下ではない」(2/2)(10/1)
- 小林よしのりライジング 515号「石破新総裁は天皇の臣下ではない」(1/2)(10/1)
<こちらも必読! 月単位で購入できるバックナンバー>
※定期購読のほか、1ヶ月単位でバックナンバーをご購入いただけます(1ヶ月分:税込550円)。
- 小林よしのりライジング 514号「〈男系が伝統〉は刷り込みの強化」(2/2)(9/24)
- 小林よしのりライジング 514号「〈男系が伝統〉は刷り込みの強化」(1/2)(9/24)
- 小林よしのりライジング 513号「本が時代を変えることはある!」(2/2)(9/10)
- 小林よしのりライジング 513号「本が時代を変えることはある!」(1/2)(9/10)
- 小林よしのりライジング 512号「桂春団治は歌よりメチャクチャだった」(2/2)(9/3)
- 小林よしのりライジング 512号「桂春団治は歌よりメチャクチャだった」(1/2)(9/3)
- 小林よしのりライジング 510号「〈自民党総裁選〉小泉進次郎なら愛子天皇は可能か?」(2/2)(8/27)
- 小林よしのりライジング 510号「〈自民党総裁選〉小泉進次郎なら愛子天皇は可能か?」(1/2)(8/27)
- 小林よしのりライジング 510号「早田ひなは“特攻隊を賛美”したのか?」(2/2)(8/20)
- 小林よしのりライジング 510号「早田ひなは“特攻隊を賛美”したのか?」(1/2)(8/20)
- 小林よしのりライジング 509号「弥助問題-反日アトキンソン歴史ねつ造」(2/2)(8/6)
- 小林よしのりライジング 509号「弥助問題-反日アトキンソン歴史ねつ造」(1/2)(8/6)
- 小林よしのりライジング 508号「パリ五輪斬首の何を批判すべきか?」(2/2)(7/31)
- 小林よしのりライジング 508号「パリ五輪斬首の何を批判すべきか?」(1/2)(7/31)
- 小林よしのりライジング 507号「トランプ銃撃と老いと民主主義」(2/2)(7/24)
- 小林よしのりライジング 507号「トランプ銃撃と老いと民主主義」(1/2)(7/23)
- 小林よしのりライジング 506号「都知事選は民主主義の〈劣化〉の極みだった!」(2/2)(7/16)
- 小林よしのりライジング 506号「都知事選は民主主義の〈劣化〉の極みだった!」(1/2)(7/16)
- 小林よしのりライジング 505号「新1万円札の肖像・渋沢栄一のミスに学ぶ」(2/2)(7/9)
- 小林よしのりライジング 505号「新1万円札の肖像・渋沢栄一のミスに学ぶ」(1/2)(7/9)
image by: 宮内庁