なぜ米国発のキャンセルカルチャーは「日本人の癪にさわる」のか?有色人種差別から動物の権利まで 滲むカルト性

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欧米発のムーブメントがなぜか「グローバル・スタンダード」として持て囃され、その御旗のもとに日本固有の文化や価値感が破壊されていく現状に、人気漫画家の小林よしのり氏は危機感を募らせる。今回のキーワードは「キャンセルカルチャー」と「動物の権利」。この2つには価値観の押売りという共通点があるが、小林氏によれば“日本人のシャクにさわる”理由はさらに深いところにあるようだ。(メルマガ『小林よしのりライジング』より)
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/メルマガ原題「ゴーマニズム宣言・第525回『動物権というカルト』」

キャンセルカルチャーと「グローバル・スタンダード」という虚構

『ゴーマニズム宣言SPECIAL 日本人論』が3月21日発売される。この本では、昨年ジャニーズ事務所に対して吹き荒れた「キャンセル・カルチャー」を題材として、日本には欧米とは異なる、日本独自の文化や価値観があるということを論じている。

そもそも、日本人に対して「日本には欧米とは異なる、日本独自の文化や価値観がある」などとわざわざ主張しなければならないこと自体がおかしな話なのだが、実際に今の日本人はこんな簡単なことすら見失っていて、いともたやすく欧米の価値観に洗脳されてしまう。その端的な例がジャニーズに対するキャンセル・カルチャーだったわけで、だからこそこの本を書かなければならなくなったのである。

これからはことあるごとに、「日本には日本の価値観がある」「グローバル・スタンダードの価値観などない」ということを唱えていかなければならないのだろう。

「人権」にせよ、「民主主義」にせよ、グローバル・スタンダードは存在しない。

それぞれの国ごとに、その国の文化や歴史に基づいた人権感覚があり、民主主義が形成されるものだし、国によっては決して民主主義が成立しないということだってあるものなのだ。

日本人の動物に対する認識は「素朴かつ程々」

さて少々前の話になるが、昨年の秋ごろ、熊が頻繁に人里に出没するようになり、これを駆除したら抗議が殺到したというニュースがあった。

それについてわしは昨年11月17日のブログで、(https://yoshinori-kobayashi.com/27487/)「最近、『熊権』を主張する人々が現れたことは実に日本人らしい」「欧米人なら『熊権』なんて絶対認めない」「日本人は欧米人とは違う。人間にも熊にも生きる権利があると考えるのだ」と書いたのだが、そうしたら「欧米にも『動物権』の思想がある」という指摘があった。

確かにそれは事実であり、欧米人の中には日本人の人権よりも「鯨権」や「イルカ権」の方が上と思っているような者がいる。だが、これって一体何なのだろうか?

今回は、この問題について整理しておきたい。

わしの子供時代、『しゃあけえ大ちゃん』(1964.7-1965.1 TBS系で放送)という子供向けの人気ドラマがあった。

主人公は岡山の山奥から東京に出てきた大ちゃんという子供で、バカボンみたいな絣の着物に学帽を被った風体で、「しゃあけえ、しゃあけえ」(岡山弁で「でも」「そうはいっても」といった意味らしい)が口癖というキャラだ。

そのエピソードのひとつに、大ちゃんが普段の食事で食べている肉が、動物を殺して得たものであるということに気づき、動物が可哀想になってしまって「しゃあけえ、食べられんじゃないの~」と言い出すという話があった。

当時10歳のわしは、子供心にこのドラマにものすごい問題提起をされてしまい、「本当だ、これじゃあ肉が食べられんじゃないか、どうするんやろ?」と思いながら見た。

そしてこのドラマの結末は、和尚さんみたいな老人が「豚とか鶏とかいうものは、そもそも人間に食べられるために生まれてきたんじゃ」というようなことを言って、それで大ちゃんを納得させるというものだった。

おそらくこの老人の説明は、仏教の輪廻転生観あたりから来ているものだろう。前世の因縁によって、豚は豚に、鶏は鶏に生まれてくるものであり、人間に食べられることが運命づけられているのだというわけだ。

ということは、自分が食べた豚や鶏も、今度は人間に生まれ変わるかもしれないし、自分も行いが悪ければ、来世は豚や鶏に生まれ変わって、人間に食べられるかもしれないということになるわけだが、まあ、そんなところまでいちいち考える人はいないだろう。

わしはその説明で大ちゃんが納得したのに影響されて、「そうなのか~、動物は人間に食べられるために生まれてくるのか~」と、原体験にその感覚が刷り込まれていた。

それで、ともかく日本人の庶民感覚としては漠然と「豚や鶏や牛は人間に食べられるために生まれてきた」程度の回答でもいいんじゃないかと、今でも思っている。

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