白人中心の原理主義から滲み出るカルト性
そうやって白人たちは、虐殺するだけ虐殺して、ようやく有色人種は動物ではないらしいということに気づいた。
そして戦後アメリカの公民権運動を皮切りに、60年代には人権の拡大運動が世界中で盛んになったが、70年代に入ったところで、白人の中にこんなことを考える者が出てきたのだ。
「動物と変わらなかったはずの有色人種にすら権利を認めることになり、女性や同性愛者にまで権利が拡大されるようになってきた。だったら本物の動物にも権利を認めなければ、おかしいじゃないか!」
日本人の感覚からしたら冗談としか思えないのだが、大真面目である。キリスト教原理主義的な感覚からすれば、こう考えなければ理屈が合わないということになるわけである。
ピーター・シンガーは、巨大農場や動物実験の例を挙げて「動物の痛みと苦しみ」を論じ、黒人や女性や同性愛者と同様に、動物も抑圧されていると主張した。
そして2年後の1975年、シンガーは『動物の解放』と題する著書を出版、さらにその論を発展させた。
人種差別や性差別と同様に、人間が動物を差別する「種差別(speciesism)」というものが存在するとして、動物には「人間と同じく苦痛や快楽を感じる能力」があり、それゆえに解放されなければならないと、同書でシンガーは主張した。
そして、この解放運動は従来の人権差別や性差別の解放運動とは違い、被害者である動物たちは自ら声を挙げることも、抗議活動をすることもできないものであるから、「人類にこれまでの解放運動よりもさらに大きな利他心を求めるものだ」と唱えたのである。
それまでも動物を人道的に扱おうという運動や、ビーガン主義の運動は別々に存在していたが、シンガーの著書はこれらをひとつの運動に束ね、論理を与える役割を果たした。そしてこれ以降、動物権運動は一気に加速し、一部の活動家は過激派と化していったのだった。
さらに厄介なのは、「動物権運動」は「環境保護運動」とも「動物保護運動」とも異なるということだ。
例えば――(メルマガ『小林よしのりライジング』2024年2月27日号より一部抜粋・敬称略。小林氏がグローバル・スタンダードの欺瞞を喝破する本記事の続きは、メルマガ登録の上お楽しみ下さい。特別寄稿・大須賀淳「元祖アニソン作家!?三木鶏郎と日本のサブカル」や泉美木蘭のトンデモ見聞録・第319回「『アマテラスはご存命』錯乱の竹田恒泰」、読者Q&Aコーナーなどもすぐ読めます)
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