なぜ米国発のキャンセルカルチャーは「日本人の癪にさわる」のか?有色人種差別から動物の権利まで 滲むカルト性

 

彼らの価値観では、有色人種も「動物」にすぎなかった

アメリカ合衆国の歴史は、人権拡大の歴史ともいえる。

1863年、南北戦争のさなかに奴隷が法的に自由の身とされたが、その後も長く黒人の人権は様々な面で制約され続けた。

一方、アメリカ本土で土地を持たない白人が投票権を獲得したのは1865年、女性が投票権を得たのは1920年だった。

そして、アメリカ国内で人権拡大の動きが急速に早まったのは、第二次世界大戦後のことである。

大戦中、黒人兵は軍内の平等を求めて戦い、戦後も国内で平等を求めて戦い続けた。

1950年代から60年代にはキング牧師らが率いた公民権運動が興隆し、これによって人種差別撤廃を求める数々の法が制定された。

また、60年代には同性愛者の解放運動(Gay Liberation)や女性解放運動(Women’s Liberation)が勃興。 70年代に入るとアメリカ先住民の解放運動(Native American Liberation)が始まった。

公民権運動はアフリカ諸国の独立運動にも大きな影響を与え、60年代には続々とアフリカに独立国が誕生した。

女性解放運動も世界中に広がり、日本でも「ウーマンリブ」などの運動が起きている。

60年代から70年代にかけ、人権の拡大はアメリカに留まらず、世界的な運動となった。そして1973年、先述したピーター・シンガーの評論が発表され、これが新たな世界的ムーブメントを巻き起こすことになる。

シンガーはその評論の冒頭で「我々は黒人解放運動、同性愛者解放運動、その他様々な解放運動を目の当たりにしてきた。そして女性解放運動がその最終形だと思った者もいるだろう」とした上で、しかし解放運動は未だ「最終形」には至っていないと唱えた。

そしてシンガーは、まだ解放運動は終わっていない。まだ解放されていない者がいる、それは、動物だ!…と主張したのだ。

そして、これが欧米における「動物権」運動の発端だったのである!!

先に挙げた『戦争論3』の中で、わしはこう描いた。

「ヨーロッパには人間と動物は絶対的に違うんだという感覚があり、もともと人間以外の動物への残虐性が普通に存在する。
注意すべきは、彼らの「動物」の概念は、白人以外の「有色人種」まで含まれる可能性があったことである!」

白人は有色人種を「動物」としか思っていなかったから、16世紀のいわゆる「大航海時代」以降、世界中で侵略と虐殺と略奪の歴史を繰り広げていったのだ。

そして、その感覚は第二次世界大戦まで続いていた。だから米兵は南太平洋の戦場で日本兵を「動物狩り」のように殺戮し、その頭蓋骨や金歯、耳などを「戦利品」として収集するという悪習が流行ったし、日本の本土に対しては平気で民間人を標的とした無差別空襲を行い、原爆を2個も落としたのである。

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