林りま、フクイケンタ、松本健太。先の衆院選の選挙期間中、実在の人物であることが確認できない「謎の候補者」「架空のAI候補」としてネット上で憶測を呼んだ3人だ。本稿では、小林よしのり氏主宰「ゴー宣道場」の寄稿者で作家の泉美木蘭氏が彼らの正体を徹底調査。福岡で目撃した衝撃的な光景、そして候補者の背後にちらつく“金主”の危険な狙いとは?(メルマガ『小林よしのりライジング』より)
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:実在しない架空のAI候補? 東京5区の不気味な選挙ポスターに迫ってみた
「不気味な謎の立候補者」の正体は?ネット憶測
今回の衆院選、私が福岡でいちばん当選してほしいと思っていた堤かなめ氏(立民・福岡5区)は、比例復活で国会へ戻ることになった。今後の活動に注目したい。
ところで、今回の選挙期間中、ネット上で「不気味な謎の立候補者」が話題になっていた。東京5区に立候補した無所属の3人だ。
東京5区(世田谷区東部)の選挙ポスター掲示場はこうなっていた。
右上から番号順に、若宮けんじ(自民党)、いなば太郎(維新)、ぬるき洋平(参政党)、手塚よしお(立憲民主党)。ここまではよいのだが、続く3人が異様なのだ。
不気味な立候補者〈1〉 林まり(林りま)
ピンクの背景に黄色の文字が特徴のデザインだが、上段に書かれているのは「へいわと減税」。漢字で「平和」と書けばよいところを、わざわざひらがなで「へいわ」と表記している。
このポスターを見て、すぐに連想したのは、「れいわ」新選組だ。
「へいわ」を「れいわ」と空目させようというニュアンスを感じさせる「林まり」は、まったく無名の新人であるにも関わらず、ポスターには、プロフィールも肩書も一切書かれていない。選挙公報はこうだ。
この人物の名前は「林まり」ではなく、「林りま」らしい。
選挙ポスターでは、わざと名前を縦読みにしてひっくり返し、書き損じさせようとしているのかと思うほどだ。謎すぎる。
「野党代表も増税論者」という文言から、立憲民主党の手塚よしお氏に当てた批判と思われる。
「ポスターの無断貼り禁止」という文言は、以前から世田谷区一帯で問題視されているもの。駐車場や自動販売機などに勝手に選挙ポスターを貼る行為が蔓延していて、ネットでは、特に、立憲民主党の不道徳として指摘されてきた。実際には、立憲民主党だけがやっていることではないのだが、こちらも手塚よしお氏に当てつけたものだと思われる。
不気味な立候補者〈2〉 松本健太
こちらは、行方不明になった人の「探しています」チラシを思い起こさせるような写真で、「松本健太」なる無所属新人候補。
目が怖い。歯が模型みたいであやしい。顔がスベスベすぎて不自然。画像ソフトで加工しすぎたのが丸わかりで、もはや写真ではなく、絵画に近い仕上がりになっている。
「せたがやをキレイに」というどうでもいいキャッチフレーズを掲げ、「林りま」と同じく、「自動販売機やコインパーキングへの無断ポスターをなくそう!」と、手塚氏に当てつけている。
プロフィールもなく、選挙戦に勝つという意欲もない。松本健太の選挙公報は、こうだ。
「ぼくは世田谷が好きです」って、松本健太44歳、おまえは一体誰なんだ!? 並んでいる手塚氏と差がありすぎだ。
不気味な立候補者〈3〉 フクイケンタ
今度はカタカナ。一体どこの「フクイケンタ」なんだかわからない。書かれている内容と、メガネにスーツという恰好から、「松本健太」よりは真面目そうで、赤色の配色から「共産党ぽいライン」を狙ったように感じる。
ネットでの情報によると、3人のうち2人は、公示直前にアマゾンで政策を書いた電子書籍を販売していたらしい。
選挙ポスターを表紙にした明らかな宣伝で、現在は2冊ともアマゾンから削除されているが、中身はへぼへぼの文章だったそうだ。
しかも、『へいわと減税』林まり……って、おい~、あなたは「りま」なのでは? 『生活者のための政治を』黒田よしたか……って??
ポスターの人物と、名前がちがってますけども!もともと「誰?」なのだが、ドン、さらに「誰!!」このあやしさ満点の2冊の電子書籍には、同じ人物がレビューを書いているなど、つながりがあるようだった。
ほかに、選挙報道から、3人についてわかったことは次のとおり。
■林りま 会社員 東京都練馬区
本籍:熊本県 1974年10月28日生(50歳)
■松本健太 飲食店経営 福岡県福岡市東区
本籍:長崎県 1980年7月6日生(44歳)
■フクイケンタ ライター・元会社員 神奈川県川崎市多摩区
本籍:福岡県 1976年10月9日生(48歳)
東京都に住んでいるのは「林りま」だけで、選挙公報に「世田谷が好きです」と書いていた松本健太は、福岡在住だった。
不気味な立候補者たちの正体は?調査スタート
さらにあやしいのは、3人とも、新聞や通信社に対して、顔写真の掲載を拒否していることだ。「本人の意向により掲載しません」と表示されており、選挙ポスター以外の「顔」が一切見当たらない。
これは一体なんなのか?
新聞は、掲載にあたってかなり厳密な審査を行う媒体で、加工した顔写真は、不適切と判断されてハネられる。ネット上では、「3人とも生成AIで作った写真で、存在しない架空の候補者なのでは?」という疑惑が浮上していた。
実際、東京5区で3人の選挙活動を目撃した人はおらず、実在があやしいのだという。
だが、衆院選の立候補には、戸籍謄本とともに、公職選挙法に違反していないという宣誓書を提出する必要があり、「実在しない人間」を立候補させることはできない。
ポスターは、法令に反しない限り自由で、加工写真を使うこともできるし、先の東京都知事選ではN党が「他人に売る」行為で問題になったが……24人も候補者を立てて枠を売ったN党とは様子が違う。
SNSには、「フクイケンタ」と知人だという人もいて、彼が立候補した「経緯はわからない」としながらも、「少なくとも私の知人に名前と選挙ポスターの顔(AIぽいですが)は一致しています」と書いていた。やはり実在するのか?
というわけで、調べてみることにした。
選挙ポスターには、公職選挙法によって「掲示責任者」の住所・氏名を記載しなければならず、3人のポスターにも記載があった。まずはここを手掛かりにしてみよう。
(MAG2NEWS編集部よりご案内)メルマガでは以下、著者の泉美木蘭さんが「林りま」「フクイケンタ」「松本健太」各候補の“正体”を徹底的に調査・取材しています。今回の記事ではその中から、「松本健太」候補に関する調査の一部を抜粋してご紹介。豊富な写真を含む全文は、ぜひメルマガでご覧ください。
「林りま」調査
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「フクイケンタ」調査
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「松本健太」調査(一部抜粋)
「松本健太」のポスターには、掲示責任者として、松本健太本人の名前と、福岡県福岡市中央区の住所が記載されている。飲食店が複数入居している雑居ビルのようだった。 ところが、ポスターにはビルの番地までしか記載されておらず、何号室なのかがわからない。そこで、現地まで行ってみた。
目的の雑居ビルは、福岡市の中心部、天神駅から歩いて15分弱の場所で、繁華街からはすこし外れはじめて、マンションと飲食店とが交互に立ち並んでいる一角にあった。
左右の建物に比べるとずいぶん古い3階建てのマンションで、築54年。かつては一般住宅用だったものを、飲食店向けにリノベした物件のようで、25平米程度のこじんまりした部屋が並び、ワインバー、ビストロ、カレー専門店、居酒屋、喫茶店など、若くて個性的なセンスの光る店が入居している。
この中のどこに「松本健太」がいるのか……。
1軒ずつ看板を見ながら歩いたが、わからない。もう一度、奥から順に見たがわからず、1階のロビーに戻った。
うろうろしながら、傍らの集合ポストになんとなく目をやる。すると……
おお!? ポストに、松本健太の名刺が貼り付いているーー!!
こんなことが。選挙活動か? んなわけない。ここは福岡2区である。
だがしかし、携帯電話の番号が書いてあるじゃないか――<中略>
※泉美木蘭さんの前に現れた創作料理店、そして謎のライブバー。遂に見えてきた「松本健太」の危険な正体とは?徹底調査の続きは有料メルマガでご覧いただけます
東京5区出馬の無所属「松本健太」はたしかに実在した!!
第50回衆院選、東京5区出馬の無所属「松本健太」は、生成AIでも、架空の候補者でもなく、たしかに実在した。
ただし、政治活動は一切しておらず、Facebookの記録を見ても、オープンした店の宣伝をしたり、漁師の父親を店主として招いてイベントにしたりと、とにかく飲食店の経営を必死にやっている人という感じで、目立った動きと言えば、福岡市内で開催されていた「カレーフェス」に出店したぐらい。
まったく、政治家ではなかった。
当然、今回の衆院選についても一切ふれておらず、出馬の報告もない。ただし、本人の戸籍謄本がなければ立候補できなかったのだから――(メルマガ『小林よしのりライジング』2024年10月30日号より一部抜粋・敬称略。実質的に“カラ立候補”とみられる謎の候補者たち。300万円の供託金を負担してまで、誰が何を目的に立てた候補なのか?続きはメルマガ登録の上お楽しみください)
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