アメリカ主導への修正は、換言すればアメリカとの対立ではなく、距離をとるという考え方であり、また中国が否定しているのはアメリカでもトランプ政権でもなく、アメリカが向かっている保護主義という方向なのだ。
本来、米中対立には興味のない世界の国々も、発展阻害要因としての保護主義には警戒感が強い。その点で中国の主張は時宜を得た効果を生んでいる。同時に、平和が発展に不可欠であり、発展は平和を促進するという好循環も打ち出されている。
今回のAPECの主催国であるペルーは、中国との協力に前向きだ。その象徴がアジアと中南米を結ぶ門戸として期待されるチャンカイ港の開発だ。開港式にはペルーのボルアルテ大統領が習近平と並んでオンライン参加するという熱の入れようだった。
ディナ・ボルアルテ大統領は「ペルーと中国による『一帯一路』共同建設という壮大なプロジェクトは、ペルーが国際的な航運・貿易センターの構築という目標に向けて重要な一歩を踏み出したことを示しており、ペルーが中南米とアジアを結ぶ重要な門戸となる一助となり、中南米の一体化と繁栄・発展も力強く促進することになるだろう」と語った。
中国が打ち出す「対立よりも発展」という価値観は、アメリカの裏庭まで巻き込む神通力を持ち始めている。
(『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』2024年11月17日号より。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をご登録ください)
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