先が読めない米トランプ政権を警戒する中国。イーロン・マスクの起用は吉か凶か?

 

アメリカ主導への修正は、換言すればアメリカとの対立ではなく、距離をとるという考え方であり、また中国が否定しているのはアメリカでもトランプ政権でもなく、アメリカが向かっている保護主義という方向なのだ。

本来、米中対立には興味のない世界の国々も、発展阻害要因としての保護主義には警戒感が強い。その点で中国の主張は時宜を得た効果を生んでいる。同時に、平和が発展に不可欠であり、発展は平和を促進するという好循環も打ち出されている。

今回のAPECの主催国であるペルーは、中国との協力に前向きだ。その象徴がアジアと中南米を結ぶ門戸として期待されるチャンカイ港の開発だ。開港式にはペルーのボルアルテ大統領が習近平と並んでオンライン参加するという熱の入れようだった。

ディナ・ボルアルテ大統領は「ペルーと中国による『一帯一路』共同建設という壮大なプロジェクトは、ペルーが国際的な航運・貿易センターの構築という目標に向けて重要な一歩を踏み出したことを示しており、ペルーが中南米とアジアを結ぶ重要な門戸となる一助となり、中南米の一体化と繁栄・発展も力強く促進することになるだろう」と語った。

中国が打ち出す「対立よりも発展」という価値観は、アメリカの裏庭まで巻き込む神通力を持ち始めている。

(『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』2024年11月17日号より。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をご登録ください)

この記事の著者・富坂聰さんのメルマガ

初月無料で読む

image by:  Muhammad Aamir Sumsum, lev radin / Shutterstock.com

富坂聰この著者の記事一覧

1964年、愛知県生まれ。拓殖大学海外事情研究所教授。ジャーナリスト。北京大学中文系中退。『週刊ポスト』、『週刊文春』記者を経て独立。1994年、第一回21世紀国際ノンフィクション大賞(現在の小学館ノンフィクション大賞)優秀作を「龍の『伝人』たち」で受賞。著書には「中国の地下経済」「中国人民解放軍の内幕」(ともに文春新書)、「中国マネーの正体」(PHPビジネス新書)、「習近平と中国の終焉」(角川SSC新書)、「間違いだらけの対中国戦略」(新人物往来社)、「中国という大難」(新潮文庫)、「中国の論点」(角川Oneテーマ21)、「トランプVS習近平」(角川書店)、「中国がいつまでたっても崩壊しない7つの理由」や「反中亡国論」(ビジネス社)がある。

有料メルマガ好評配信中

  初月無料お試し登録はこちらから  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 富坂聰の「目からうろこの中国解説」 』

【著者】 富坂聰 【月額】 ¥990/月(税込) 初月無料 【発行周期】 毎週 日曜日

print
いま読まれてます

  • 先が読めない米トランプ政権を警戒する中国。イーロン・マスクの起用は吉か凶か?
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け