13日、米トランプ次期大統領は、実業家のイーロン・マスク氏を政府の支出を見直すために新設される「政府効率化省」のトップに任命すると発表しました。ある程度予測されていたこととはいえ、このニュースは世界中を驚かせています。今回のメルマガ『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』では多くの中国関連書籍を執筆している拓殖大学教授の富坂さんが、トランプ氏が早期に着手している「人事」に注目。中でもイーロン・マスク氏の要職就任に対して、日本の隣国である中国はどう動くか、そして米国の「何を否定」しているのかについて詳しく分析しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:トランプ再登板という不可測性に揺れる世界に中国が問う新秩序
トランプ再登板という不可測性に揺れる世界に中国が問う新秩序
大きな話題を呼んだ米大統領選挙から1週間が過ぎ、目下、米メディアの話題は次のトランプ政権の人事に移ったようだ。
新政権の発足は来年の1月だが、前回の反省を踏まえ、より完全な形でのスタートを切るため、いまからしっかり人事を固めておこうという意図が働いているようだ。
現状、さまざまな人物の名前が挙がっていて、内定も報じられているが、その人事の特徴を一言でいうとトランプへの「忠誠心」だという。
トランプの前政権スタート時には、多くの共和党内の既存勢力にポストを割り振ったが、今回はそういう忖度人事はせず。ひたすらトランプが自分のやりたいことを実現するための組閣を行うのだという。
戦々恐々としているのは、国内では司法部門と軍、そして保健・衛生部門だ。司法部門には情報部門も含まれる。
選挙戦の最中から、自分に敵対する勢力や司法部門に対する報復を言及していたトランプだが、まさにそれを実行に移そうとしているというわけだ。
なかでも大きな論争の的となっているのはマット・ゲーツ元下院議員の司法長官への起用である。17歳の女性との性的関係を疑われたことで知られた人物だ。
この人事については身内の共和党内からも反発の声が上がり、議会の承認には壁があるとされ、ひょっとすると議会の承認を経ないままの起用となる可能性も指摘されているのだ。
では、対外的にはどういう性格を帯びてゆくのだろうか。
まず、中国の視点から見たとき、最悪の人事と目されたマイク・ポンペオ元国務長官の起用はどうやら見送られたようだ。
しかし、ホッとするのも束の間、米議会において対中強硬派としてならしたマルコ・ルビオ上院議員が国務長官に内定したとの報道には少なからず警戒感を刺激されたのではないだろうか。
他方、トランプの不可測性は、やはり一筋縄ではいかない。
そのことを体現しているのが実業家イーロン・マスク氏の起用だ。
早速、マスク氏はイランとの交渉に乗り出している。
トランプの周辺に群がる面々を眺めれば、対中、対イランの強硬派が占めていることは明らかなのだが、それがそのままトランプ外交の特徴になるわけではない。
いうまでもなく強硬一辺倒では実際の外交は機能しないからだ。
その点をどう調整するのかにおいて、マスク氏の果たす役割に注目が集まっているというのだ。
選挙戦のなかでも積極的にトランプを応援してきたマスク氏だが、彼は少なくとも単純な対中強硬派ではない。
現時点でトランプは、「公約はすべて実現する」と公言しているものの、本当に中国からの輸入品に関税を上乗せして、マスク氏に政府予算の見直しをさせるのだろうか。
少なからず混乱は避けられないような気がしてならない。
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