教職員からの「性暴力」事件が多発の異常事態。“校長が撮影”や“中学教師が再再再再逮捕”…現役探偵が「学校界隈は地獄」と嘆く理由

 

性暴力という「心の殺人」に見当たらない拠り所となる法

例えば、前々回取り上げた札幌市で起きた当時小学3年生が中学1年生から受けた性暴力事件は、いじめ防止対策推進法の重大事態いじめとして認定され、第三者委員会が設置され、その報告のときに記者会見などがあって報道ニュースとして世間に出た。

当然に警察、児童相談所も家庭裁判所も動いているが、なぜ、この問題がいじめなのだろうかと疑問をもつ方も多くいた。

いじめ防止対策推進法の第2条にあるいじめの定義では、一定の関係性があり、何らかの行為などがあって、それによって被害側が心身の苦痛を感じたら「いじめ」であるとしている。つまり、何らかの行為が「性暴力」であるという解釈は成り立つが、この説明でも多くの方が違和感を持つことだろう。

被害側がなぜ「いじめ防止対策推進法」を使うのかには大きく2つの理由がある。1つ目は、各都道府県や学校などで性暴力事件が発生した際のタイムラインやマニュアルの整備に大きな差があり、一般解釈においては隠ぺいが起きたり、機能不全が生じている現実問題があるということだ。

こうした際、「なんでも警察」と叫ぶ部外者もいるが、被害者の中には門前払いに近い扱いを受けたと感じて絶望している人も多くいる。世の中の仕組みはシステム的に機能していなければならないが、人が介するわけだから、方程式通りにはいかないし、未成年問題の他、行政機能と被害加害に対して必要な対策を考えれば、学校、児童相談所、家庭裁判所、ワンストップ支援センター、医療機関など様々な支援が必要になろう。

つまり、地域として充実した仕組みを持っていたり、条例でさらに明確しているところもあれば、全くに近いほどないのではないかと思われるようなところもあるということだ。

そうした余波から、学校で性暴力の被害者と加害者が同じ空間にいたり、導線上で何度も会うということが発生するのに、何らの対策も行われないという事態などが頻発するため、その根拠となる法が見当たらないこともあって、学校に有効策を採ってもらうために「いじめ防止対策推進法」を使わざるを得ないということなのだ。

2つ目は、上の後段に被るが、「いじめ防止対策推進法」以外に児童生徒間で起きた性暴力事件だと「学校で対策」を進める根拠となる法の選択が困難であるというのが、現在の現実問題になっているということだ。

本来であれば、「心の殺人」とも言える性暴力という深刻な問題に、拠り所となる法があっても良いのではないかと思うところだが、これが見当たらない。被害者が被害内容を伝えてくる相談のためのレポートや各報道の記事を見ても、児童生徒間で起きた性暴力事件では、同じクラス(教室)や同じ部活などで被害者と加害者が長時間過ごすことなどが確認できるし、加害者を別教室に移動させたり、鉢合わせない環境形成を被害側が学校に要望しても加害者の人権への配慮や学ぶ権利の主張が通ってしまい、結果として被害側が精神衛生上の安定のために不登校となるケースもある。

事実として、札幌市で起きた当時小学3年生が中学1年生のから受けた性暴力事件で被害保護者が小学校や加害生徒の通う中学校に交渉に出向いたのは、住んでいる場所が近く、登下校で鉢合わせするから、この有効な対策をお願いしていたのであり、交渉レポートや特に加害生徒が通っていた中学校校長とのやり取りの録音を聞く限り、根拠となる法律として「いじめ防止対策推進法」を使って、札幌市教育委員会を交えたり、児童相談所や警察を交えなければ、校長側は門前払いをしていただろう対応をしていた。

つまり、「いじめ防止対策推進法」を被害側が使うのは、苦肉の策であって、なにも「いじめ」であるとは思っていないのであり、明確に性暴力、性犯罪の被害を受けた犯罪被害者であるのだ。

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