「不足だらけ」の中で深刻な問題を抱えている学校現場
一方で、こうした現実を問題視すると、必ずSNS上の匿名教員アカウントから、学校は何でも屋ではないと小炎上をさせられる。匿名であることを良いことにやりたい放題な卑怯な方々であるから、私は好きではないが、その言い分を冷静に考えてみると、現状の人員で全てを行えるかと言えば、予算、人員から考察すれば無理筋だということも理解はできる。
例えば、文部科学省が進める「性犯罪・性暴力対策の強化の方針」を踏まえ、関係省庁や民間団体の協力の下、「生命(いのち)の安全教育」のための教材及び指導の手引き等を活用したモデル事業では、「学校などにおける生命(いのち)の安全教育推進事業」があるが、予算は3,300万円(令和5年4年)である。モデル事業であるから国が行うものとしては低予算なのだろうが、もう少しなんとかならないものだろうかと思うのは私だけだろうか。
そもそも、公立学校における教職員の給与などは、「ブラックサブスク」状態であり、この改善のために出された予算案でも文科省案と財務省案が真っ向から対立しているし、こうした対立は常に起きているのだ。
予算不足、人出不足、専門家不足という不足だらけの中で、深刻な問題を抱えているというのが学校現場という見方もできるというわけだ。
全てのこどもと親に知ってもらうべき「性暴力」と「その予防」
私はいじめ予防教育の講師としてPTA主催の講演会の講師をしたり、地域の懇談会(各所の担当者などが集まる会議)で研修講師として招かれることがある。こどもを対象としたものも多くあり、そうしたところで、大勢を前にしてスライドを使いながら話をするのだが、毎回、「いじめの定義」などをその冒頭に入れている。
理由は極めてシンプルで、「いじめとは何か?」がどこに行っても漠然としているからだ。
事前の知識なくしては話しにならないのである。
だからこそ、性暴力とは何かという教育をまずは全てのこどもとその親には少なからず知ってもらう必要があろう。一方で学校をもちろん含めた関連機関は知識は当然のこと、連携を深め、深刻な事態が起きないように予防の活動と起きてしまった場合の仕組みを明確に定める必要があろうし、地方議会はこれの拠り所となる活動をすべきであろう。
いじめも同じだが、性暴力被害は一生ものであり、怪我のように元に戻るということはない深刻な問題だ。
そして、こうした問題の際、SOSの出し方という古い考えを振りかざしやすいように感じるが、多くの被害相談を受けていると、SOSを出したくとも出せない被害者の心境はよくわかるのだ。もはや、SOSの出し方教育より、SOSを積極的に受けていく「アウトリーチ」が必要だろう。
この記事の著者・阿部泰尚さんのメルマガ