スマホじゃダメなんだ。現代人が今も「紙の手帳」をわざわざ使っている納得の理由

 

逸脱

また少し違った視点から。

たとえば手帳の月間カレンダーページを開けてみましょう。見慣れた表組みがそこには並んでいるはずです。

では、デジタルカレンダーはどうでしょうか。スマートフォンで開くと、手帳のような閲覧性は得られません。現状のスマートフォンでは「開いて、見開きとして使う」は実装されていないからです(将来的にはどうなっているかわかりませんが)。

それでもタブレットやパソコンで開けば、手帳と似たような閲覧性は得られます。では、その二つは等しいのでしょうか。

「日付の中に予定を書いているだけ」

という条件であればその二つは等しいと言えます。しかし、その条件が変わってくると、二つのツールの等価性は崩れます。

たとえば、紙の手帳にはマス目にイラストを書くことができます。あるいは、色付きのシールを貼って、何かのログを示すこともできます。試験日までの日を、一日過ぎるたびにバツ印をつけて、残りの日数を意識することもできます。

そのような表現に比べれば、デジタルカレンダーができることは極めて限られています。もっと言えば「貧弱」としか言い様がありません(この点を意識しているのが、Hey Calendarです)。

さらに、です。

紙の手帳では、表組みの欄外に記入することができます。たとえばどこかの日付マスまで矢印を伸ばし「ここら辺から寒くなるから注意」という自らへのコメントを書き込むことができます。そのコメントはあきらかに「予定」ではないので、欄外に置くのが適切な「表現」ですが、デジタルカレンダーではどうあっても「予定」として欄内に入力するしかありません。

最近のGoogleカレンダーは、タスク機能の統合によって「予定」+「タスク」の二軸の情報が扱えるようになっていますが、情報の表現という観点から見れば、まったくもって紙の手帳には叶うレベルにはなっていません。というよりも、規定の入力以外のことができない、つまり「遊び」がないのです。

もちろん、予定の繰り返しや他の人との共有、クラウドでのバックアップなどさまざまな「情報的機能」はデジタルカレンダーの方が強力です。たしかにそうした機能は「予定管理」という目的ではたいへん役立つでしょう。

だからこそ、現代の人々は紙の手帳を「予定管理ではない用途」で使っているのだと思います。予定管理はデジタルカレンダーで完璧、だからそれで終わりとするのではなく、それらでは取りこぼしてしまう情報を拾い上げるために紙の手帳を使うというわけです。

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