ここでもフジテレビが元凶に。『FNNスーパータイム』の登場で「質」や「深さ」が失われた日本のニュース番組

05.04.2015,,Moldova,,Tv,News,Studio,With,Light,Equipment,Ready,For
 

オリンピック史上最悪の出来事として歴史に刻まれるミュンヘン五輪「黒い九月事件」を題材とした映画『セプテンバー5』。未曾有のテロ犯罪を扱ったサスペンスドラマとして大きな話題を呼んでいますが、同作はまた日本のニュース番組の問題点をもあぶり出す作品ともなっているようです。今回のメルマガ『ジャーナリスト伊東 森の新しい社会をデザインするニュースレター(有料版)』では著者の伊東森さんが、我が国のニュース番組が抱える「致命的な欠陥」を3つの観点から考察・解説しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:日本と海外のニュースはここまで違う!映画『セプテンバー5』が映しだす日本の報道番組の致命的な欠点 なぜ日本のニュースはBGMを多用するのか?エンタメ化する日本のニュース番組…専門家コメントは必要か?

もはや「報道」にあらず。映画『セプテンバー5』が映しだす日本のニュース番組の致命的な欠点

現在公開中の映画『セプテンバー5』は、1972年のミュンヘンオリンピックで発生した人質事件を、米ABCニュースの生中継という視点から描いた作品だ。この中継を担当したのが通常のニュース番組ではなく、スポーツ番組のクルーだったとはいえ、この映画を通じて、日本のテレビニュース番組の問題点を考察することができる。

特に、BGM(背景音楽)の使用、専門家コメントの扱い、ニュース番組の形式変遷という3つの観点から分析を行うことで、日本のニュース番組が直面している本質的な問題に迫ることができる。

まず、ニュース番組におけるBGMの使用についてだ。『セプテンバー5』では、緊迫した状況下でのニュース報道において、BGMは一切使用されていない。これは、事実を淡々と伝えることに徹した当時の報道姿勢を反映している。

一方、現代の日本のニュース番組では、BGMの過剰な使用が問題視されることがある。感情を煽るような音楽や効果音は、視聴者の判断を誘導し、客観的な情報伝達を妨げる。

次に、専門家コメントの扱いについて検討する必要がある。『セプテンバー5』では、事件の進展に応じて、現場の記者や専門家が冷静に状況を分析し、視聴者に情報を提供。対して、現代の日本のニュース番組では、しばしば「エンターテイメント系」のコメンテーターが起用される(*1)。

映画『セプテンバー5』とは?

  • 2024年制作のドイツ・アメリカ合衆国の歴史ドラマスリラー映画
  • 2025年2月14日に日本で公開
  • 監督はティム・フェールバウム
  • 主演はピーター・サースガード、ジョン・マガロ
  • 1972年9月5日のミュンヘンオリンピックで発生した「黒い九月」事件を題材にしている
  • テロ事件を生中継することになったテレビクルーの視点から描かれる
  • 事件の発生から終結までの1日を90分間のサスペンスで描く
  • 報道の自由、人権、メディアの責任など現代社会に通じる問題を提起している
  • 第81回ヴェネツィア国際映画祭で先行上映され、高い評価を受けた
  • 第97回アカデミー賞の脚本賞にノミネート

記事のポイント

  • 日本のニュース番組はBGMを多用し、視聴者の感情を誘導する傾向があるが、海外では事実報道の客観性を重視し、BGMを使用しないケースが多い。
  • 日本のニュース番組では専門家コメントの編集が行われ、エンタメ系コメンテーターの発言が主流になっているが、海外では専門家が長時間詳しく解説することが一般的。
  • 1953年のテレビ放送開始以降、日本のニュース番組はストレートニュースからエンタメ化が進み、視聴率競争の影響で報道の質や公正性が損なわれる懸念が指摘されている。

この記事の著者・伊東森さんのメルマガ

初月無料で読む

print
いま読まれてます

  • ここでもフジテレビが元凶に。『FNNスーパータイム』の登場で「質」や「深さ」が失われた日本のニュース番組
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け