ニュース番組の進化とともに失われる報道の「公正・中立」
日本のテレビニュースは、1953年のテレビ放送開始以来、社会の変化と技術の進歩に伴い大きく変遷してきた。初期のストレートニュースからニュースショー、ワイドショー、情報番組へと発展。
テレビ放送開始当初のニュースは、新聞社が制作する「ニュース映画」に近い形式で、大手新聞3社が日替わりで提供する「3社ニュース」が主流だった(*5)。この時期のニュースは、事実を簡潔に伝えることに重点が置かれ、客観的な情報提供を目的としていた。
1962年、TBSで日本初のキャスターニュース番組『ニュースコープ』が放送開始(*6)。アメリカの『CBSニュース』をモデルにし、田英夫や戸川猪佐武といった日本の第一世代のアンカーを輩出した。
1984年には、フジテレビの『FNNスーパータイム』が登場。ニュースにエンターテインメント的な要素を融合させ、視聴者の関心を引きつける演出が強調された(*7)。このスタイルは後の情報番組にも影響を与えた。
しかし、ニュース番組の進化とともに、いくつかの問題も浮上した。ニュースのエンターテインメント化が進むことで、報道の質や深さが失われる懸念が指摘されている。また、視聴率競争の激化により、センセーショナルな報道が増加。これにより、ニュース本来の役割である公正・中立な報道が損なわれるリスクが高まっている。
▽日本のニュース番組の1953年から現在までの変遷
- 1953年:テレビ放送開始。初期のニュースはラジオの影響を受け、アナウンサーが原稿を読む単調な形式
- 1960年:NHK『きょうのニュース』開始。総合編集型ニュースの始まり
- 1962年:TBS『ニュースコープ』開始。キャスターニュースの基礎を築く
- 1970年代:キャスターニュースの興隆。NHK『ニュースセンター9時』開始(1974年)
- 1980年代:報道の時間枠拡大、国際化進展
- 1990年代:朝の情報番組、週末午前の報道番組拡充
- 2000年代:ニュース番組の娯楽化傾向、ワイドショーとの境界曖昧化
- 2010年代:SNSの普及によるニュース伝達の多様化
- 現在:速報性重視、映像・音声・色彩の活用、視聴者の興味に即応した演出
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■引用・参考文献
(*1)鄭玟秀・戸田里和・国枝智樹「ニュース番組における解説機能の役割」上智大学
(*2)「あなたは、ニュースを信頼できますか?」BBC WORLD NEWS
(*3)「あなたは、ニュースを信頼できますか?」BBC WORLD NEWS
(*4)鄭玟秀・戸田里和・国枝智樹「ニュース番組における解説機能の役割」上智大学
(*5)倉澤治雄「テレビジャーナリズムの70年(前編)【テレビ70年企画】」民放online 2023年11月27日
(*6)倉澤治雄「テレビジャーナリズムの70年(前編)【テレビ70年企画】」民放online 2023年11月27日
(*7)倉澤治雄「テレビジャーナリズムの70年(前編)【テレビ70年企画】」民放online 2023年11月27日
(『ジャーナリスト伊東 森の新しい社会をデザインするニュースレター(有料版)』2025年3月2日号より一部抜粋・文中一部敬称略)
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