核兵器をめぐる議論が、日本でもあらためて現実味を帯びています。被爆者が訴え続けてきた「核兵器のない世界」と、核抑止力を重視する安全保障政策。その間で、日本はどのような道を選ぼうとしているのでしょうか。広島や長崎で語られてきた被爆者の言葉は、過去の悲劇を振り返るためだけのものではありません。核兵器が存在する限り、それは今を生きるすべての人に関わる「未来」の問題でもあります。『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』では、著者で健康社会学者の河合薫さんが、日本の核政策をめぐる発言と国内外の報道を通して、「私」たちの未来について考えます。
「私」たちの未来の話
核兵器では絶対に命や財産を守ることができない。防衛とは、領土を保つことではない。人々の命を大事にし豊かにすることだーー。
これは2024年11月、ノルウェーで日本被団協のノーベル平和賞受賞式が行われた時の、田中煕巳さんの世界に向けたスピーチの一部です。
その同じ日、日本では衆議院の予算委員会が行われ、石破首相(当時)は、25年3月に行われる、「核兵器禁止条約の締約国会議」へのオブザーバー参加について問われ、こう答えました。
「正式に参加することは極めて困難だと思っている。北朝鮮や中国、ロシアと核を持った国々に取り囲まれた状況で、拡大抑止を否定するという考え方は持っていない」。
この答弁から2年超が過ぎ、日本はいったいどこに向かっているのか。
高市早苗首相は、広島の平和記念式典のあいさつで「我が国は非核三原則を堅持している」と語ったのに続き、三原則見直しの可能性を問う被爆者の質問にも同じ内容を繰り返しました。
一方、広島県の横田美香知事は「核抑止力を求めること自体が新たな戦争を引き起こしている」と指摘。
県原爆被害者団体協議会の原田浩理事長は、高市首相に「自分の頭の上で(原爆が)落ちたらどうなるか、五感で感じて受け止めた上で対話してほしい」と求めました。
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