「ニュースにBGMを乗せる」という日本独特の演出
映画内に登場するABCニュースを含む海外の主要ニュース番組では、事実として原則としてニュース本編中にBGMを流さない。番組のオープニングやジングルとしてテーマ音楽が使われることはあるが、キャスターの読み上げや現場リポート中に音楽が被ることはほぼない。
これは、事実報道の客観性を保ち、視聴者の感情を不必要に誘導しないための配慮である。この方針は、CNNやBBCなどの海外の報道番組にも共通しており、背景に音楽を流さず、映像と言葉だけで状況を伝えるのが一般的である。
1972年ミュンヘン事件を伝えたABCの中継でも、冷静に事実を伝える姿勢が印象的で、現場音のみが伝えられた。
一方、日本のテレビニュース番組ではBGMの多用が目立つ。NHKなどの硬派なニュースでは速報やストレートニュース部分に音楽は付かないものの、民放の報道番組やワイドショー的なコーナーでは、しばしば映像に合わせてBGMが流される。
特に「特集VTR」やドキュメンタリー調のコーナーでは、悲しいニュースには哀調を帯びた曲、明るい話題には爽やかな曲を組み合わせるなど、場面の感情に沿った音楽が用いられることが多い。
BGMの有無は、視聴者のニュースに対する印象を大きく左右する。日本の番組で流されるBGMには、視聴者の感情を先回りして「悲しんでください」「感動してください」と誘導するかのようなものが多い。
重用される「エンタメ系コメンテーター」たち
また日本のニュース番組における専門家コメントの扱いは、近年、その実態と影響力について議論の的となっている。映画『セプテンバー5』内のテレビに登場した人物は人質だったコーチであるが、しかしコメントの真偽を含め、“編集”なしでそのまま生放送してあった。
海外のニュース番組、特にBBCのような信頼性の高い報道機関では、専門家のコメントを編集せずに生放送で伝えることが重視されている。専門家のコメントを編集なしで放送することで、視聴者に対して情報の透明性を保証する。
これにより、報道機関への信頼性が高まる(*2)。とくに生放送では、最新の情報や専門家の見解をリアルタイムで視聴者に届けることができる。これは特に緊急性の高いニュースや急展開する状況においてとくに重要だ(*3)。
一方、日本のニュース番組では、ほぼすべてのテレビ局において専門家のコメントが編集される。しかし、この過程で重要な文脈や詳細が省略され、本来の意図とは異なる印象を視聴者に与える危険性がある。
またある調査によると、ニュース番組でのコメントは「エンターテイメント系」コメンテーターの発話が75%を占め、「ジャーナリスト系」が17.5%、「その他の専門家」が7.4%となっていた(*4)。この数字から、専門性よりも視聴者の興味を引くことに重点が置かれている傾向が見て取れる。
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