先月29日、中国・安徽省でシャオミのBEV「SU7」が高速道路を走行中に中央分離帯へ衝突し爆発、炎上する死傷事故が発生しました。この事故はなぜ起きてしまったのでしょうか? 日刊で中国の自動車業界情報を配信するメルマガ『CHINA CASE』では、ADAS(先進運転支援システム)を「ほぼ自動運転でしょ」と過信したことによる事故だった可能性について言及。中国でこの事故が注目されている理由について解説しています。
シャオミ車が高速道路で事故、自動運転と過信?システムは正常
2025年3月29日深夜、安徽省の高速道路で、シャオミのセダンBEV「SU7」が中央分離帯に衝突し、爆発・炎上するという痛ましい事故が発生した。
報道によると、乗車していた若い女性3人のうち2人が命を落とし、1人が重傷を負ったとされている。
実態はADAS(先進運転支援システム)であって、運転手責任であるのに、「ほぼ自動運転でしょ」という過信が招いた事故の可能性がある。
話題になり続けるシャオミ車であることも相まって、中国でも注目されている。
ハンズフリー走行?
今回の事故については、シャオミ公式が積極的な情報公開を行っている。
シャオミトップの雷軍CEO自身も追悼コメントを発表している。
それによれば、事故車両はSU7のスタンダードモデルで、事故発生直前にはNOAモード(自動支援走行)で116km/hで走行中だった。
システムは「ハンドルをしっかり握るように」警告を発してもいた(つまりハンズフリー状態だった可能性がある)。
走行ルートは工事のため、本来の走行車線が封鎖され、反対車線へ誘導される特殊な状況だった。
システムは正常稼働
中国の複雑な工事標識がセンサー及びAIの判断を難しくさせた可能性もある。ただ実際にはシステムはこれを障害物として検知し、警告と減速を開始した。
直後にドライバーが手動制御に切り替え、ステアリングとブレーキ操作を行ったものの、間に合わず中央分離帯のコンクリートブロックに衝突した。
その直後、車両はEcallを起動、起動10秒後には、警察と救急に自律的に通報した。
日本や欧米でもEcallの普及は進んでいるが、Ecall起動後、人が通報ボタンを押すタイプが主流。
今回のシャオミに限らず、中国の新興メーカーでは、一連の流れを車両が自律的に行うのが主流になっている。このあたりも一歩進んでいて中国らしい。
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あくまでも運転支援
この一連の対応と事実から見えてくるのは、「システムは想定通りに作動していた可能性が高い」ということ。
NOAは警告を出し、減速し、最終的に人間へ制御を引き渡した。
つまり、自動運転レベル2(L2)の運転支援機能として、責任の主体がドライバーにあるという前提は崩れておらず、誤作動の兆候も確認されていない。
運転者は非オーナー
さらに重要な点として、シャオミがこの車両オーナーと連絡を取った際、「運転していたのはオーナー本人ではなかった」ことを確認している。
この点は見逃せない。運転支援機能はその特性や注意点、制限事項を十分理解した上で使うべきもの。
借用運転や初心者による「試し乗り」の中で、過信や誤用が起きやすくなるというリスクが現実化した可能性がある。
爆発炎上とドア開閉不能
深夜、工事中の高速道路で、100km/hを超える状態でNOAを使う──
しかもその操作に不慣れな人物がハンドルを手放していたとすれば、そこに潜んでいたのは技術の限界ではなく、「人間の理解と使い方の問題」だったのかもしれない。
また、この事故では、衝突後車両が直後に爆発炎上、ドア開閉(脱出、救助)不能になった、という指摘もある。
このことから、スマートドライブ事故、というよりは、バッテリーパックやドア構造の問題も指摘され始めている。
メーカーPR手法に問題も
どちらにしろこの事故は、スマートドライブという今ホットな技術が、いかに「過渡期」においては人間側の教育・意識・行動によって左右されるかを突きつけたとも言える。
特に中国では「クルマの方が賢い」と信じる人々が増える中で、メーカーは技術を「魅せる」だけでなく、「正しく使わせる」設計と伝達を進める責務が生じるきっかけにもなりそうな事故だ。
出典: https://auto.gasgoo.com/news/202504/1I70421999C109.shtml
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