減反を完全にやめるまで“令和の米騒動”は収束しない
1970年前後、日本人の食生活は「パン、肉、乳製品」などへの転換が進み、コメの消費量が減少。農業は重大な転機を迎えていた。
にもかかわらずコメは作られ続け、余剰在庫が増加。政府がコメを高値で買い取る「食管制度」によって、生産過剰すなわち財政負担の増大という問題が発生した。
そこで農林省(当時)と自民党農政族が主導して「生産調整」を始めた。「米が余れば価格が下がり、農家が困る」。「作りすぎないようにしよう」。この減反政策は長らく農家の所得安定に寄与したが、一方で耕作放棄地が全国で拡大、高齢化と担い手不足を招き、今なおその呪縛が続く。
2018年度から減反の「義務化」が廃止されたものの、補助金制度の形で「実質的な減反」は継続している。
今回の米価高騰は、需要の高まりというより、供給側の意図的な生産縮小という“構造的欠陥”に根差したものだ。コメ不足を防ぐには「減反」を完全に廃止するほかない。自民党内で数少ない減反廃止論者である石破首相は今こそ、その政策を実行するチャンスである。
だからといって、なんら対策を講じずに「減反」をやめれば、コメの価格が下がり、農家は立ち行かなくなる。そこで必要になるのは農家への所得補償だ。減反政策を完全に廃止し、米価の自由市場化によって生じる農家の減収分を政府が戸別に直接補償する制度への転換は、政策的には十分に可能なはずである。
「戸別所得補償」というと、民主党政権を思い出す。しかし、それは減反政策で米価を維持したうえ所得補償を上乗せするものだった。あくまで「減反」を完全にやめることが肝要だ。
だが、そういう動きを見せると、たちまち騒ぎ始めるのが農協組織と農水族議員だ。「減反」にともなう「作付け管理」や、「補助金の申請・実務」を牛耳ることによる“影響力”を農協が失えば、急速な弱体化につながる。
それは、農協の集票力や資金力をあてにしている農水族議員と、天下り先を確保したい農水省にとって不都合なことだろう。(次ページに続く)