2024年にスーパーから米が消え、5キロ3000円を超えるという価格高騰が起こりました。突発的な要因の裏で長年見過ごされてきた日本のコメ流通と農政の構造的な歪みが一気に噴き出したような様相です。メルマガ『j-fashion journal』の著者でファッションビジネスコンサルタントの坂口昌章さんは、米価安定を支えてきた仕組みとその終焉、そして農協(JA)や農水省が米市場をどうコントロールしているのかをデータと証言をもとに検証しています。
日本の米価高騰の全貌/農協・農水省・流通の裏側を徹底解剖
1.米不足が日本を揺るがす
2024年、日本の食卓を揺るがす危機が訪れた。スーパーから米が消え、5キロの米が3,000円を超える高値になった。普段当たり前に食べていたお米が、突然手の届かない存在になったのだ。この異常事態の裏には、気候変動、需要の急増、そして農協や農水省の政策が複雑に絡み合っている。
2.2024年までの米価安定の仕組み
まず、2024年まで、なぜ米の価格は安定していたのか。日本のお米は、長年、比較的安価で手に入った。5キロで1,500~2,000円が一般的な水準だ。この安定を支えたのは、以下の3つの要因である。
(1)減反政策の歴史
1つ目は、減反政策。1970年代、米の過剰生産で価格が暴落したことを受け、政府は米の生産量を抑える政策を始めた。農家に補助金を払い、米以外の作物を作るよう促したのだ。
2018年、この政策は公式に廃止されたが、農協や農林水産省は、依然として生産量を調整している。
2023年時点で、米の作付面積は約136万ヘクタールと、ピーク時の半分以下になっていた。これにより、供給過剰を防ぎ、価格は安定していた。
(2)需要の減少トレンド
2つ目は、需要の減少。日本の人口は減少し、食生活も変化した。米の消費量は、1960年代の1人当たり年間118キロから、2023年には約50キロにまで落ち込んでいる。年間約10万トンの需要減が、供給調整と相まって、価格を安定させていた。
(3)農協の流通支配
3つ目は、農協、JAの役割だ。JAは、日本の米流通の約80%を握っている。農家から米を買い取り、卸売業者や小売業者に供給するJAは、在庫量や販売タイミングをコントロールすることが可能だ。これにより、価格の急激な変動を抑えてきた。
2023年6月、60キロの玄米価格は15,865円で、11年ぶりの高値だったが、急騰ではなく、緩やかな上昇にとどまり、消費者への影響は限定的だった。
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